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91話 付与魔術師

「朱音ちゃんはどんな職業(ジョブ)なの?」




ビルのエントランスを三人で突っ切りながら唯火は問う。




「【付与魔術師(エンチャンター)】よ」


「エンチャンター?」


「こういうこと!『素早さ上昇(バーニア)』」




そう唱えると彼女の脚部は淡い光を纏い、以前俺と屋上で追いかけっこをした時の様に中々の速力で駆け出した。




「わ!速い!高速移動のスキル・・・?」


「いや、違うな」




そう言う唯火も『魔添(まてん)・駆動』を発動させ、俺と共に走る速度を上げる。

先を行く背中に追いつくと、初めて彼女と対峙した時『目利き』を無効化されたのを思い出しながら、一応試しに発動する。




名:暮 朱音

レベル:42

種族:人間

性別:女

職業:

上級

付与魔術師(エンチャンター)


武器:9㎜拳銃

防具:なし


MP:1550/1700

攻撃力:462

防御力:378

素早さ:504(+252)

知力:798

精神力:756

器用:290

運:52


状態:『素早さ上昇』

称号:なし

所有スキル:

攻撃力上昇(ストレンジ)LV.5》

防御力上昇(プロテクト)LV.5》

素早さ上昇(バーニア)LV.5》

盲目(ブラインド)LV.5》

遮音(ミュート)LV.3》

忍び足(スニーク)LV.6》


ユニークスキル:?




「あれ?今度は『目利き』が効いた?」


「どうしたんですか?」


「いや・・・」




理由はわからないがとにかく朱音のステータスが分かった。

思った通り明らかに後衛タイプっぽい。

さっき朱音も地上で俺たちと戦うといった時に渋ったのは、守る後衛がいる中、竜種と戦うのを嫌ったからだ。

だが、大口叩くだけあって俺の経験上での並のモンスター相手に後れを取ることはまずない感じだ。




(スキルもかなり豊富だな・・・・)




名称からその効果は簡単に連想できる。

ホテルでいくつか喰らったものもあった。

相変わらず見えないがユニークスキルも所有しているみたいだ。



(けど妙だな。俺に掛けた『素早さ上昇(バーニア)』と、大分上昇率が違う)




あの時のパラメーターは、もっと異常な補正値がついていた。

それに・・・・




「――――朱音!お前、そんな軽装で大丈夫なのか?防具も何も一切装備していないじゃないか。武器も拳銃一丁だし」




彼女の隣に並走し不安要素を投げかけると。




「? あたしの装備が銃だけだって、あんたに言った・・・?あ。あんたまさか本当に、【鑑定士(かんていし)】なの?」




屋上で俺と対峙した時のやり取りを思い出しているのだろう。

あの時初めて『目利き』が失敗して思わず口に出してたんだっけ。


これから背中を預けあうんだ、手の内は明かしておこう。




「そうだ。前にお前に使った時は何故か効かなかったが」


「それはあんた、マジックアイテムに決まってるじゃない。あの時あたしが羽織っていた外套。あれは敵からのラーニング系の干渉を防ぐことが出来んのよ。防御力もそこそこあったしね」


「なんで今は装備してないんだ?」


「あんたがあたし事ぶった斬ったから使い物にならなくなったのよ!!」


「・・・・すまん」


「朱音ちゃん、本当に大丈夫なの?」




まだ竜種を目にしたことが無い唯火だが、あの硬い鱗と巨体っていう情報だけあればその攻撃力は想像がつく。

今の朱音だと一撃で致命傷になりかねない。



「攻撃が当たればやばいだろうけど、問題ないわ。前衛に出るほど馬鹿でも、守りに徹して捕まるほどノロまでも無いの。・・・・援護に徹するから守ってくれなくて大丈夫よ」


「・・・わかった」




俺と同じく、彼女としても自身が招いたこの状況に自責の念を感じているんだろう。




「その代わり。あたしに攻撃力は期待しないでね」




ああ。と短く返すと、話しながらも随分と走ってきたようで。

先ほどギルドのアジトを揺らすほどの咆哮と同じものが頭上、真上から発せられた。




「いたぞ!」


「あれが・・・・」


竜種(ドラゴン)っ!」




見上げると、空の明るさにシルエットだけが浮かび一瞬の静止の後、直下。

つまり地上にいる俺たちの前へと急降下してきた。




「くっ・・・!」


「なんて質量!」


「視界が・・・」




空から降りてくる動作だけで着地点は砕け、砂塵を巻き上げる。

閉ざされた視界の中、『索敵』にかかる強い敵意だけがその存在を認識していた。




「朱音!俺たちの後ろに居ろ!」


「わ、わかった!」




2・3度のステップで俺と唯火の後方へと下がると、砂ぼこりに映る影の面積が大きくなり。

途端、強風と共に砂塵は描き消えた。




「風の魔法!?」


「いや、翼だ!」




吹き付ける風圧に目を潰されぬよう腕で庇いつつ視認した光景。

サラマンダーよりも大きく、二翼の翼を広げた、まさしく竜が降臨していた。




「『目利き』」




名:なし

レベル:46

種族:飛竜(ワイバーン)

性別:男

武器:なし

防具:なし


MP:1200/1200

攻撃力:1242

防御力:828

素早さ:1334

知力:690

精神力:598

器用:56

運:20


状態:ふつう

称号:なし

所有スキル:

《竜鱗の加護LV.4》

《自然治癒LV.2》

《風編みLV.2》




「やっぱサラマンダーより強敵か」


「ナナシさん!」




俺の目利きが成功したのを察したのだろう。

唯火は俺の指示を仰ぐように声を張り上げる。




「素早さが相当高い!あの翼で空も飛ぶだろうから絶対捕まるな!攻撃力も同等だ、隙を見せるな!」


「こっちの攻撃は!?」


「おそらく通用する!けど、『風編み』っていうスキルがあって、こいつは使い手の周りの風の流れを操るらしい。そう簡単に懐には入れないぞ!」


「そんなの反則じゃない!?」




確かに。

けど、きっとつけ入るスキはあるはず。




「向こうは空を飛べるのにわざわざ降りてきた。完全に舐めてる証拠だ」


「・・・その油断を叩くってことですね」


「あんたたちどんな戦いしてきたらそんな冷静に分析してられるのよ・・・・」




ぼやきつつも朱音は収まりのいい拳銃を取り出し構える。




「空で暴れられたら、ビルが壊れちゃいます。長期戦は避けないとですね」




唯火も公園の皆から譲り受けた防具を結びなおし、グローブの口を引っ張り拳を握り込む。




「ああ。あいつらゴブリンとかと違って、建造物もお構いなしに破壊してくる、けど」




二人の戦意に促され俺も剣を。

『竜殺し』の力を秘めた相棒を抜き放つ。




「どうやら、やっぱり竜種(こいつら)は群れないみたいだ。目の前のワイバーンだけに集中できる」


「ギャオォオオォォオ!!」




臨戦態勢を整えた俺たちの闘気に呼応するように。

ワイバーンは開戦の咆哮を轟かせ。




「いくぞ!二人とも!」

「「了解 (です)!!」」



俺たちの戦いはこれからだ!

(つづきます)

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― 新着の感想 ―
[良い点] サラマンダーより、ずっとはやい! 遠距離系の攻撃持ってなくてよかった……最悪空からひたすら攻撃してくるクソゲーになりかねませんね竜種
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