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83話 ダンジョン確保

久々更新につき手短にあらすじ。


三つの勢力とやらが判明し、その関係性がややこしくなってきた


「ともあれ、今は私たちに出来ること。目の前の問題を一つずつ解決していくことしかできない」




そう言って、響さんは俺と唯火に改めて向き直る。

彼らにとってはここからが本題らしい。




「今話した通り、私たちのギルドは今深刻な人手不足。故に、ダンジョン攻略に人手を割く事が出来ない。戦闘要員をそちらに割いてしまうとその間『ユニオン』のナワバリに存在している未活動のダンジョンを他ギルドや探求勢(シーカー)に奪われてしまう恐れがあるからだ」


探求勢(シーカー)相手に対等な立場を迫るには、ダンジョン内の資源が不可欠、ってことですよね」




それと、攻略勢(ペネトレイター)同士でも決して一枚岩ではないと。

でもまさか他所のギルドのナワバリを侵すほどとは・・・・




「そうだ。未活動ダンジョンはまさしく眠れる財源。攻略後は内部に巣食うモンスターも基本的に消滅し、未知の鉱石などの資源が自然発生する。もっとも、それがどれほど続くのかは不明なのだが」




モンスターの魔石以外にも、ダンジョン自体にそういう希少価値がある資源が発生しているのか。

今までそれを目的としたダンジョン攻略じゃなかったから思いもしなかったな。




「って、そうだよ。俺たちが攻略したダンジョンに案内すればいいんじゃないか?」


「『小鬼迷宮(ゴブリンダンジョン)』と『屍人迷宮(グールダンジョン)』に、ですか」


「・・・・ふむ」




内部にゴレイドやヴェムナスの様な強力なモンスターがもう居ないって言うなら、探索の人員も最小限で済むはずだ。

彼らにとっては施しを受けたような形になるが、そんな意地を張っても仕方ないだろう。




「その二つのダンジョンは、どこにあるのかね?」


「さっきも話した、ここに来る前まで居た廃棄区画です」


「やはりそうか・・・・せっかくの申し出、すまないがそれはムリだ」


「遠慮とか意地ってやつですか?」


「そうではない。廃棄区画という場所が問題なのだ・・・・ナナシ君は、廃棄区画をどう認識している?」


「モンスターが発生したことにより、隔離された区画、と聞いてますが・・・・ん?でも、街中ではギルドがダンジョンをそれぞれ囲っているんだよな・・・・?」


「あ。でも、街中は廃棄区画に指定されてはいない・・・・?」




俺の疑問に唯火も続く。


ダンジョンが発生する過程で、地上でのモンスター発生は避けられないはず。

なのに人が行きかうこの街は、隔離されたというにはほど遠い雰囲気だ。


公園の皆は特例だろう。

人気が無い方が好都合だし、何よりあそこには強い思い入れがあった。

言い方は悪いが、大手を切って公共の場に不法滞在できるんだ。

自ら進んであの場所にいた理由はある。




「廃棄区画を指定するのは国側、探求勢(シーカー)連中だ。そしてその定義は、一般人・・・・日常の営みを繰り返す回帰勢(オリジン)の人たちには、モンスターの発生が一定量を超えギルドにも手が負えなくなりパンデミック状態になり得る危険地帯を、廃棄区画と認定される。と伝えられている」


「国に対して強い反感を持っていても、そういう抑制は守られるものなんですか?」


「そこが絶妙なバランスでね。本来、以前の様な国への信頼を失くした今、探求勢(シーカー)の要請などは通らないモノだろう。連中もそれはわかっている。だから、数の多い民衆一人一人がスキルなどの未知の異能を身につけた今、その反発を恐れあまり強行には出られない」


「スキルを用いたクーデターなんか起きたら、それこそ国が滅びかねないですからね」




その時は共倒れになりそうではあるが。




「うむ。だが、回帰勢(オリジン)の彼らにとってはそのルーティーンの様な生活を守る事が最重要。であれば、モンスター発生のパンデミックなどに巻き込まれるのは当然回避する」




変わらない日常を続けることにそこまで執着するのか。




「我々、攻略勢(ペネトレイター)としてもこの均衡を崩すのは時期尚早と考える者ばかりでね。結果として、ライフラインを確保してくれている回帰勢(オリジン)の人々を守る形となる要請なら、たとえそれが国側からのものであったとしても大抵受けるのが暗黙の了解となっている」


「なかなかにうまく回るもんですね」




歪ながらも調和がとれているというか。




「ああ。だが、廃棄区画に関してはまた少し話が違うのだ・・・・あれは実はモンスターが直接的な原因ではない」


「原因がモンスターではない?」


「人間の・・・・回帰勢(オリジン)の中でも過激派、とでもいうのか。自分たちの生活圏に入ってきた異物に問答無用で危害を加える。その結果そこにモンスターが湧こうが一切省みない。その行動理念は、同じく変わらぬ生活を守る事・・・・例え相手が三勢力の均衡を崩すに等しい相手でも、構わず嚙みついてくる。そんな危険な思想を持つ人間を隔離、いや。その区画一体を空け渡したといった方が正しいだろう」


「まさか・・・・」




その話を聞いて結び付くかはともかく、今だ俺の中で三つの勢力に当てはまっていないある一つの集団脳裏をよぎる。




「身に覚えがあるかね?私も以前偶然にも対面する機会があったが、取りつく島も無かったよ。まるで異文化の民族と話しているようなすれ違いさえ感じた・・・・君達はよく、あの廃棄区画の中で一時とはいえど暮らしていたね。生きているのが不思議なくらいだ」


(山さん。あんたもそうなのか・・・・?)




確証はない。

それに違和感もある。


もし彼らがそうなら、魔物使いが池さん達を食い物にしていたのを黙ってみているとも思えない。

あの黒装束連中ならレベル一桁の魔物使いを排除することなど造作も無かった事だろう。

ホームレスの皆を襲いに来た時点で始末できたはずだ。


その後、俺が公園で寝泊まりしている時だったいくらでも寝首を掻く機会はあったはず。


唯火を公園に連れてきたあともそうだ。

連中は俺を殺す気で襲い掛かっては来たが、明らかに俺同様外部の人間である唯火相手には攻撃の意思が感じられなかった。




(それに、屍人迷宮(グールダンジョン)で久我達から逃げた時も、山さんは俺たちを見逃した)




そして俺が取り損なった命の後始末を知らぬ間に済ませ、廃棄区画から出て行けと、猶予を与えた。




(なんにしても、行動が全く読めない)




なるほど確かに。

山さん率いる集団がその過激派なのかは知らないが、そんな危険人物がいる場所にギルドの人たちを案内するわけにもいかないな。




「まぁ、そんなわけでね。私たちユニオンとしてはダンジョン攻略経験のある君たちの力を借りたいのだよ。もうすでにナワバリの維持は限界なのだ。今回発生するであろう、ダンジョンがそこに加わればもはや管理しきれない。それを皮切りに、他ギルドの侵入を許してしまうかもしれない」


「・・・・いくら一枚岩でないといっても、勢力図的には同じなんだから歩み寄りの道はないんですか?」




俺の問いに響さんは渋い顔で首を振る。




「話の便宜上、他二つの勢力の性質を悪い面を多く言ったが、我々側もギルドによっては毛色がまるで違う。中には好戦的で殺しを生業にする者達もいる・・・・そんな連中と分かり合えるとは到底思えない」




なるほど。

モンスターやダンジョンの資源で自分自身や国への交渉材料となるなら、その他の人間の命をエサにモンスターを呼び寄せた方が実入りはデカい。

そんな考えを持つ人間だっている。

きっとそんな連中が近くにいるのだろう




「でも、その危機は攻略後も変わらないんじゃないんですか?というか、強敵がいなくなったことでさらに狙われやすくなるんじゃ」


「それは『攻略者特権』、というのがあるのだ。わかりやすく言えば、攻略時パーティーメンバーに加入していた者がいなければ、攻略後のダンジョンの扉は開かれない。その時一人でも攻略時の人間がいればいいんだ」


「攻略者を脅して人質にでも取られない限り、ギルドが信用していない部外者は攻略後のダンジョン内に入ることはできないってことか」




抜け道はありそうだが、十分な抑止力にはなりそうだ。




「今は何とか少ない人数でナワバリ内のダンジョンを警戒しているが、それも直抑えきれなくなる」




先に言った通り、近い内に新たなダンジョンが現れるから。

つまり、俺が朱音を斬ったせいだ。




「響さん。さっきも言った通り、俺が原因を作ったところもある。だから、こっちからもう一回お願いします。俺にも手伝わせてくれ、モンスター討伐とダンジョン攻略」


「ナナシさん。そこは『俺たち』って言ってほしかったです・・・・せっかくですから他のダンジョンの攻略も手伝わせてもらいましょう」


「本当に、いいのかね?」




若い俺たちに荒事を頼むのは気が引ける、といった葛藤がその表情にうかがえる。




「はい。ダンジョン発生から『王』が出現するまで、時間があります。やるなら今しかないかとも思います」




俺と唯火はほぼ二人のみで、種を統率する『王』と戦ったから死ぬ思いをした。

ゴレイドの時の様な異例が無ければ、今までの攻略より楽なはずだ。


それに今回は二人だけじゃない。




「次席。ワルイガ本人がこう言ってるんだから、力を借りましょ。それに、あたしもついてく」


「朱音・・・・だがお前のスキルは」

「今回はきっとそうはならない」




話の内容はわかりかねるが、なにやら朱音の言葉に強い意志を感じる。




「こう言いだしたら聞かないですからね。僕も同行してフォローします」




睨みあうようにする親子を仲裁するように聖也が割って入ると、あきらめたようにため息をつき立ち上がる。




「ナナシ君。唯火さん。よろしく頼みます」




言いながら手を差し出してくる。


言外に、

『娘を』とも言っているように感じ、俺と唯火は一瞬だけ視線を交じらせ頷きあうと。






「「任せてください」」






こちらも立ち上がり響さんと握手を交わした。



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