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74話 本当のルール

再び深い眠りへとついたハルミちゃん、いやフユミちゃんか?

とにかく、彼女を背に負いアカネを追跡した道のりを遡り、行きと同様に建物の屋上を飛び移りながらホテルへと戻る。

『走破製図』で記憶してあるから、こんな道なき道でも迷うことはない。


そんな帰り道の最中、先ほどのやり取りを思い出す。






:::::::::::






「彼女はあたしが所属するギルドのギルドマスター。その先は、フユミ(マスター)が目を覚ました時本人に聞くか、ウチに来て()()に聞いて」


「・・・」




アカネがハルミちゃんの事を口にする直前、発せられる発言の真偽を『洞観視』で確認したから嘘はついていない。




「はぁ。聞きたいことがまた増えただけだったな・・・」




だからこそ謎が深まるばかりだった。


まぁ、今の口ぶりならハルミちゃんを迎えに来た時俺も同行してもいいという事だろうから、その時洗いざらい教えてもらうさ。


どのみち、まだ得体の知れないアカネや『ギルド』の連中にこの子を丸投げできない。

唯火だって納得しないだろう。




(ギルドのホームに飛び込むのは危険度が未知数だから、できれば唯火には留守番しててもらいたいけど・・・)




ついてくるだろうな。




「とにかく。マスターの指示通りに、あんたたちの宿に迎えを派遣する。色々知りたいならその時一緒に来て」


「―――もし、剣を向けてくるなら、その時も容赦はしない」


「あ、あたしは行かない・・・迎えの使者にはよく言い聞かせとくわよ」




言いながら後ずさり距離をとる。

どうやら俺の放った斬撃は、彼女にトラウマのようなものを植え付けたらしい。

まぁ、死んだというなら無理もないことだが。


・・・どうにも、毒気が抜かれるな。




「俺も少し読みが甘かった」


「え?」


「思い返せば。お前の言葉の端端に、この子との関わりをほのめかせるような符号はあった・・・体、傷つけて悪かったな」


「っ! あんな容赦なく剣振っといてあたしを殺そうとしたのに、その相手に謝るって・・・あ、あんたイかれてるわよ!異常者!サイコパス!」


「ひどい言われようだな・・・」




一瞬でも殺された相手と会話するこいつも相当イかれていると思うが。

・・・まぁいい。




「とにかく。そん時はきちんと話を聞かせてもらうって、その次席なりなんなりに言っておけ」


「わ、わかったわよ」




捨て去るようにそう言い、ハルミちゃんを負ぶって帰路につこうとするが。




「・・・そういえば、これだけ派手にスキル使ったんだ。ここらにもモンスターが湧くよな」




あっちが吹っ掛けてきたとはいえ、俺も立派な当事者だ。

ここらに住まうこの騒動とは何も関係ない人たちを思うと、さすがに知らんぷりというわけにもいかない。




「そう、ね。あんたに斬られてあたしが血を流した以上、湧いてくるでしょうね」




ん?




「おいおい。随分な言いようだな。元はと言えばお前が最初にスキルを使って来たんだろ?もうその時点で手遅れじゃないか」


「はぁ?あたしは殺傷目的の攻撃なんて一度も放っていないし、ビルに突っ込んだ時傷を負ったとしても、結果的に支援魔法をあんたに掛けただけだから直接の原因にはならないじゃない」


「・・・は?」


「・・・え?」






:::::::::::






「まさか。地上に湧くモンスターがスキルそのものじゃなく、スキルによって流れたと認識される『血』のみに引き寄せられるとはな・・・」




確かに、池さんに聞いた公園での話も、魔物使いとの戦いのも。

スキルを使用した激しい戦闘で血が流れていた。


少しはこの世界に慣れてきたかと思ったが、まだまだ知らない仕様が沢山あるようだ。




「ってことは、今回起きるであろうモンスター湧きは言わば俺のせい、か。まぁ――」




『地上に現れたモンスターの討伐もギルドの仕事としての一環だから、あたしも無関係どころか当事者だし、こっちで対処するわ』




心境としては信用はできないが、これまた噓を言っている気配も感じられなかったのでとりあえず任せることにした。


ギルドってくらいだから、アカネみたいなやつが多数所属する団体なのだろう。

てことは情報もたくさん集まってくるってことだ。


ハルミちゃんとギルドへと同行するのはそう言った情報収集も期待できる。




まったく。

最初はこの子の帰る家を探していたわけだが、ずいぶんとややこしいことになったもんだ。


まぁ、そのギルドがハルミちゃんの帰る場所だというなら結果的に良しか。

そこにご両親も居るのだろう。




「着いたか」




俺たちが泊まるホテルが見え、部屋の窓は開いたままだったが、万が一踏み外しでもしたらハルミちゃんも危険にさらされるので余計なリスクは負わず路地裏へと降りる。


薄暗い路地から日の当たる歩道へと出ると、こんな世界でもやはりそれなりに社会は動いているのだろう。

駅へと向かう通勤の雑踏が行きかっていた。




(いや、こんな世界だからこそか)




通信機器が制限されている今だからこそ、足を向けなきゃならないところもあるだろう。

現場系の業種はそんなに変わりはないだろうし。

需要と供給がどうなっているのかは知らないが。


半年前までは俺自身もこの人の流れの一部だったのに、今はやけに遠くの事に感じられる。




「・・・ん?唯火。あんなところで待っていたのか」




仕事へと向かう彼らの流れとは、一人真逆の方向をさかのぼって進むような錯覚を感じながらホテルの正面まで着くと。

正面口の階段に、ハルミちゃんとお揃いの寝巻きのまま腰かけるそわそわした雰囲気の唯火を発見。


明らかに周りの景観とは浮いている彼女は、ふと顔を上げ目が合う。




「あ!ナナシさん!?ハルミちゃんは!?」


「大丈夫だ。無事連れ戻したよ、どこもケガしていない」




穏やかな寝息を立てるハルミちゃんはを見ると、大層安堵した様子で息をつき。




「もー!心配したんですよ!私も一緒に追おうかと思ったけど気づいたら背中見えなくなっちゃってるし!でも連絡とる方法とかなくって――――――」




待っている間色々頭の中で考えていたのだろう。

堰を切ったようにあーだこーだとまくしたてる彼女をなだめながら。



このあとさらにややこしい状況になったことを説明される、少し未来の唯火に同情した。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] アカネとか言うゴミ今後パーティーとかヒロインとして出続けるなら読むのやめようかな 作者の性癖に付き合う気は無い
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