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57話 VSレッサー・ヴァンパイア 光

殺意と怒りを隠そうともせずその本性を現す吸血鬼、ヴェムナス。




(くび)り殺してやるわぁ!!」




まるで知性が失われた獣のように喚き散らし飛び掛かってくる。




(速い・・・!)




洗練さを欠くチグハグな動きだが―――




「がぁあああぁぁぁああ!!」


「・・・!」




攻撃を避けヤツの一撃が地に達すると、それを中心に触れたものは爆散する。




「ばっ・・・か力だな・・・!」




吸血鬼は人知を超えた怪力を備えるとよく聞くが、本当らしいな。

まともに喰らえば一撃で危険域だろう。




「ずあぁあっ!」


「くっ!」




回避した横合いからくる骨の大蛇の追撃。


怪力と獣のような動きで怒涛の近接戦闘、『操骨(そうこつ)』で攻撃後の隙をカバーし中長距離も狙ってくる。




(早いとこケリを着けないとまずいな)




回避に徹したところで、いずれ押し切られる。




「唯火!!」




大蛇の追撃を屈んで躱しながら、彼女の名を呼ぶ。




「―――! なんですか!?」




その間も、ヴェムナスの猛攻は周囲の景観を変える程苛烈さを増し、時々こちらの肌を掠める程に詰め寄ってくる。




「その子・・・くっ!その『ハーフエルフ』の女の子の・・・っ! 名前は!?」


「え?あ、は、ハルミちゃんです!」




大蛇に跳ね上げられ大きく跳躍するヴェムナス。

すると大蛇は二つに分かれ挟撃を仕掛けてくる。




「そう、っか!ハルミちゃん!聞いてるか!?俺のっ、声!俺はナナシ!」


「・・・な、なし?」


「あのお兄ちゃんのお名前、ナナシ。っていうの」




二頭に分かれ交差し連続する突進をバックステップで躱しつつも口を動かす。

そして、跳躍し宙を舞ったヴェムナスは狙いを付けたように急速に落下。


『操骨』により作らされた隙、回避先の俺に強烈な踵の鉄槌を振り下ろす。




「しゃぁっ!」


「ぐっ!うぅっ・・・く!」




咄嗟に腕を上げ、魔鉄(ミスリル)のガントレットでそれを受ける。




「ぐっ!?」




魔鉄は軋むが破壊される気配はなく、それよりも俺の体がその衝撃に悲鳴を上げる。

肩は外れる手前。

膝はさび付いたかのように軋み。

足場は砕け崩壊している。




「っらぁ!!」




押し切られ潰される前に、なんとか攻撃逸らして流す。

そして宙で無防備になったヴェムナスに渾身の―――




『平面走行』

『洞察眼』

『弱点直感』

『弱点特攻』

『体術』




「『崩拳(ほうけん)』!」


「がっ!?」




魔鉄の拳を鳩尾に沈め。

出来るだけ遠く、遥か後方へと吹き飛ぶように腕を振り抜く。




「ぐぁっ!」




立て続けに同じ腕へと負荷が掛けられ遂には脱臼する。

だが痛みに動きを止めている暇はない、奴を遠のかせた今するべきことをするんだ。




「唯火!ハルミちゃん!」




肩をはめつつ彼女たちの元へ急行すると俺はある頼みごとをする。




「時間が無い。ハルミちゃん、君の()を貸してくれないか?」


「ハル、のちから?」


「ナ、ナナシさん!?」


「心配するな、側で戦えっていうんじゃない」




驚いた声を上げる唯火を手短に諭す。




「ハルミちゃん。あいつを倒すために、君の『職業(ジョブ)』の力が必要なんだ。絶対怖い目には会わせない」


「ハルミちゃんの、『職業(ジョブ)』・・・?」


「『じょぶ』って、この子のこと?」




不思議そうにそういうと、彼女の手のひらに淡く光る、いや。

光そのものと言った()()が現れた。




「これは、さっきの・・・」


「唯火、この子の力を見たのか?」


「あ、いえ。実は・・・・」




―――なるほど。


俺が来る前にヴェムナスに一度その力を見せたのか・・・






なおのこと好都合だ。




「ハルミちゃん。君のその【精霊使い(せいれいつかい)】の力。正確にはその光―――『光の精霊(その子)』の魔力を貸してほしい」




ハルミちゃんがハーフエルフだと確認した時、『目利き』で見たステータスは。




名:?

レベル:1

種族:ハーフエルフ

性別:女

職業:

農夫(ファーマー)

上級

精霊使い(せいれいつかい)

 使役:『光の精霊』


武器:なし

防具:なし


MP:80

攻撃力:4

防御力:5

素早さ:7

知力:24

精神力:22

器用:3

運:7

状態:ふつう

称号:無し


所有スキル:

『穴掘りLV.3』

『成長促進・植物LV.4』

『精霊使役LV.4』

『精霊探知LV.3』

『精霊付与LV.3』





「あいつの弱点は『光』だ。吸血鬼の『特性』か『属性』かは知らないが、さっきの光る爆弾、唯火も見ただろ?」




吸血鬼が光に弱いなんていかにもだろ?と締めると。




「確かに、可能性としては高いかもしれませんけど・・・かと言って、この光がヴェムナスの致命打になるでしょうか?」




唯火の言いたいことはわかる。

ハルミちゃんの能力は恐らく優れたものに分類される。


けど現時点の、この小さな灯のような頼りなさげな光で、吸血鬼を倒すきっかけになるか疑問なんだろう。




「大丈夫。この小さな光―――ハルミちゃんの力は、ヴェムナスを倒す最強の矛になる」




疑問符を浮かべる彼女たちに、手短に俺の作戦を説明した――――――






:::::::::::






(なんなのだ?あの人間は?)




まるで巨人の一撃のような痛烈な拳を見舞い吹き飛ばされ宙を飛ぶながら思考に浸る。




(脆弱な人間が、『屍人(グール)』から『吸血鬼(ヴァンパイア)』へと進化した我とどうしてここまで渡り合える?)




今自身の感情を包んでいたのは、怒り・焦燥。


そして至る、一つの結論。




(あの人間だけは生かしておけん)




個の矜持よりも。

種としての本能がそう告げる。




(殺す。殺す!殺す!!)




湧き上がる殺意に逆行するように、熱を下げ冷たさを取り戻す思考(それ)




人間が放ったと思えぬ一撃に遂には階層の端まで運ばれ。




「―――貴様は!!」




壁面へと行きつく頃には、体勢を立て直し四肢全体で壁へと着地し。




「コロス!!」




僅かな冷静さを取り戻した殺意とともに、壁を砕きながら一直線へと跳躍する。




「必ず・・・!」




そして、宙を飛ぶように瞬く間にその場に舞い戻ると。




「ヴェムナス!決着をつけてやる!」




我がすぐ戻ることを予見していたように迎え撃つ人間の男の姿、そして傍にいる女と小娘。




何より、男の黒鉄の左腕がわずかに。

淡い輝きを放つのを、冷静さを取り戻した我の目は見逃さなかった。






(―――なるほど)











それが狙いか



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