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51話 制圧。力の把握

窓を破り施設内へ入ると、狭く長い一直線の通路を疾走する。




「くっ!なんてすばしっこいやつだ!」


「この先は行き止まりだ!残りの戦力全てで圧殺するぞ!」




「おっと、ここが終点か」




追ってくる連中から聞こえた通りどうやら行き止まりなようだ。

立ち止まると、背後から数多の敵意を感じる。




「どうやら、ここでおしまいみたいだな」


「はぁ・・・はぁ、とうとう観念したか?だが投降したところでお前の死は変わらんぞ。ここに待機する隊員をほとんど戦闘不能にしやがって・・・」


「投降?」




振り向き、長い通路にぞろぞろと寿司詰め状態の連中を見る。




「俺が『おしまい』って言ったのは、この戦いの事だよ」


「? だから投降―――」




瞬動(オキザリノ)―――』




「消え―――!?」




かき分け、薙ぎ払い、速力は緩むことなく。

隊列の先頭から、最後尾まで―――




『―――必斬(タチ)




一直線に並んだ隊列は一筋の剣閃によって爆ぜる。


通路の窓を突き破り投げ出される者。

壁、天井に叩きつけられる者。


それぞれが一振りの剣撃の元、意識を手放す。




「・・・ふぅ」




振り向き確認しなくても分かる。

背後だけでなく、この建物中からこちらへ向ける敵意を感じない。


『五感強化』の耳も意識のありそうな人間の物音を拾わない。



鞘に納めたまま振るった剣を腰に戻し、一息つく。




「とりあえずこの建物にいるやつは粗方倒したな」




そして、戦いの中でペラペラと唯火の居場所らしき情報を勝手に口走ってくれた。




『このままではたった一人の男にここが墜とされるぞ!』


『援軍を呼べ!南西にある『屍人迷宮(グールダンジョン)』に隊長たちが居るはずだ!』




それを聞いた時点で急行してもよかったんだが、あまり俺の素性が知れると唯火を救出するのに支障が出そうだったので、結局全滅させることにした。




「しかし、これだけの数相手に戦って経験値を得られないってのは、少し損した気分だな」




かつての魔物使いの言葉を信じるなら相手がモンスターでなく『人間』であっても、その命を奪えば経験値は入るんだろうけど。




(俺にはまだ・・・その踏ん切りがつかない)




これだけ殺意むき出しで刃を向けられても、生かした後に遺恨が残るとしても。


今はまだ、この甘さを手放すことができない。





「・・・戦闘中、スキルレベルが結構上がったな」




考えを止め、するべき決断を先延ばしにする。




(かなりのスキルを併用したから熟練度はかなり得ることができた)




《走破製図LV.7⇒LV.9》

《読心術LV.8⇒LV.10》

《目利きLV.8⇒LV.9》

《武具投擲LV.8⇒LV.9》 

《索敵LV.8⇒LV.10(MAX)》

《隠密LV.5⇒LV.6》

《五感強化LV.8⇒LV.9》




屋内外目まぐるしく場面が変わる戦闘だったから、普段あまり使わないものも伸びたな。




「そういえば、ダンジョン攻略からまだステータスを確認していなかったっけ」




これから向かう先でも派手な戦闘になるかもしれない、自分の力を把握しておかないとな。




「ステータスっと」




名:ワルイガ=ナナシ

レベル:61

種族:人間

性別:男

職業:

逃亡者(とうぼうしゃ)

精神掌握者(メンタリスト)

鑑定士(かんていし)

解体師(かいたいし)

斥候(スカウト)

上級

剣闘士(グラディアトル)


武器:ショートソードC+(無名)

防具:レザーマント(魔改・形態:ストール)

防具(左腕):ミスリルガントレット(魔改・スロット:● 充魔(チャージ);■□□)


攻撃力:943

防御力:879

素早さ:791

知力:627

精神力:781

器用:1414

運:150

状態:ふつう

称号:【小鬼殺し】


所有スキル:

《平面走行LV.10(MAX)》

《立体走行LV.10(MAX)》

《走破製図LV.9》

《洞察眼LV.10(MAX)》

《読心術LV.10》

《精神耐性LV.10(MAX)》

《目利きLV.9》

《弱点直勘LV.10(MAX)》

《弱点特攻LV.10(MAX)》

《ドロップ率上昇LV.6》

《近距離剣術LV.10(MAX)》 

《体術LV.10(MAX)》

《直感反応LV.10(MAX)》 

《武具投擲LV.9》 

《索敵LV.10(MAX)》

《隠密LV.6》

《五感強化LV.9》


ユニークスキル:《全  乏》




小鬼迷宮(ゴブリンダンジョン)を攻略したことによって大分ステータスが上昇したな。

遂に唯火同様、4桁のパラメータも出てきた。


・・・よくわからん『器用』だけど。


というか―――




「何なんだ、俺の『ユニークスキル』」




遂に『器用貧乏(きようびんぼう)』の『き』の字も出なくなった。

なにだよ『全  乏』って。


全乏(ぜんぼう)』?


とうとうオリジナルの熟語で煽り始めたんだけど。


試しに最近覚えたスキルへの『目利き』を行うと。




《認識不可。対象にバグが発生しています》




何のことだかさっぱりわからん。




「まぁいいか、今に始まったことじゃない」




と。

何の気なしにスキル欄を見ているとあることに気が付く。




「そういえば、さっき戦ってた時・・・」






::::::::






「初手の雷撃で確かに数はだいぶ減ったけど・・・」




どうも建物から機を窺って潜んでいる奴も複数いるようだ。

ここの兵隊の中にも『隠密』を使う奴がいるのだろう。

『索敵』には引っ掛からないが、『五感強化』の聴力で隠れていることだけはわかる。




(けど正確な位置までは分からない・・・)




公園の先遣隊には、『索敵』範囲外からあの光る爆弾を放り込まれて聴力と視覚を持っていかれた。


今だって居場所の分からない敵に同じような策で刺されてもおかしくはないんだ。




「もっと、広範囲を、精密に感知できれば・・・」




斬りかかってくる敵をいなしながら、意識を集中する。


スキルの『合わせ技』。

これは何も攻撃系だけではない、ゴレイドの時にも【侍】スキルの『見切り』を体現させた。






『五感強化』

『索敵』






(・・・手応えを感じない)




合わせるスキルの数が二つでは足りないのかとも思い、『直感反応』も組み込んでみるが―――




「変わらず、か」




組み合わせ的に実現不可能なのか、何かしらの条件を満たしていないのか・・・






::::::::






「結局、的を絞らせないように常に動いて対処したけど。成功していればもっと楽に戦えただろうな」




そして、今スキル欄を見て気づいた、か細い『瞬動必斬(オキザリノタチ)』との相違点。




「さっき合わせようとしていたスキル、『索敵』と『五感強化』はLV.10に達していなかった」




ゴレイド戦で初めてこの『合わせ技』を使えた時点で、発動時に組み込んだスキルは全て『LV.10』に達していた。




「LV.10からさらに使い込むとMAXの表記が付く。つまり、一つのスキルのレベル最大値は『10』」




最大レベルまで極めたスキル同士じゃないと組み合わせることができない・・・

というのが俺の仮説だ。


ほぼ確信に近いものはあるが。




「この仕様には『目利き』の掛けようがないからな、でも多分そう言う事だろ」




この発見はデカい。

強敵と戦う時、出来ないことに縋り続けて隙を見せずに済む。




「実戦の中で得るモノはスキルや経験値だけじゃないな」




俺はどこか自身に言い聞かせるようにつぶやいた。


いつか向き合わないといけない『決断』を思いながら。






「よし・・・待ってろ、唯火」




長考してしまったが、それに見合う有意義な分析ができた。




その遅れを取り戻すように、


彼女が居るという『屍人迷宮(グールダンジョン)』へと全速で駆け出す。



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