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30話 異常の片鱗

 ~小鬼迷宮(ゴブリンダンジョン)第6階層~



「ゲギギギ」

「……」



 名:無し

 レベル:19

 種族:ゴブリンタンク

 性別:男

 職業:なし

 武器:プレートシールド

 防具:なし


 攻撃力:71

 防御力:126

 素早さ:59

 知力:47

 精神力:45

 器用:22

 運:8

 状態:ふつう

 称号:無し


 所有スキル:

【身代わりLV.1】



 ほぼ全身を覆うような大きな盾を突き出してくるゴブリンタンク。

 2階層の湧き場(スポット)を制圧した後、3・4・5階層と徐々に強くなるモンスターたちを難なく蹴散らしながら進んで行き、この6階層になってからは明らかに個体ごとの役割がはっきりしてきて統率が取れ始めている。


(ゴレイドの率いてた群れ程じゃないが、連携が取れている)


 特に盾持ちのゴブリンタンクが混じっている会敵は厄介だ。

 その大盾で姿が見えにくいから『洞察眼』も使いづらく、なにより自身の体だけでなく―――


「ゲギャァアア!」



 名:無し

 レベル:21

 種族:ゴブリンナイト

 性別:男

 職業:なし

 武器:質素な鉄の剣

 防具:なし


 攻撃力:142

 防御力:86

 素早さ:87

 知力:41

 精神力:52

 器用:36

 運:6

 状態:ふつう

 称号:無し


 所有スキル:

【剣術LV.2】




 その背後に伏兵を潜ませて奇襲をかけてくるのだ。


 1対1から突如現れる1体。

 その凶刃は初見での回避も防御も困難と言える。


(思い出すな。ゴレイドと同じ戦法だ)


 もっとも、鋭さは奴の方が数段上だった。

 なにより―――



()()()()()()()()()()()()()()

「ギャ?」


 ナイトがタンクを飛び越える跳躍のほんの一瞬前。

 俺は突き出された大盾を踏み台に宙高く、ナイトが飛び上がるであろう高度より高く跳躍した。


 成長したスキルは俺自身実感がない程、身体能力を引き上げる。

 空中で体勢をひねりながら、縦直線に並んだナイトとタンクを背後から二体まとめて唐竹の一閃で両断した。



「……すごいですね」

「ん?ああ。『斥候(スカウト)』の事か?」


 実は2階層から3階層に降りてすぐの事だ。






 ::::::::






「この階層……岩陰だけじゃない、そこら中穴だらけだな」

「まさしくゴブリン達の巣窟ですね。全方向から襲撃が来てもおかしくはないです」


 初めてのダンジョンということもあり、2階層まででもずっと気配を探るためにを感覚を研ぎ澄ましてきたが……



(聴覚や視覚だけじゃ頭打ちだな……)



 この死角の数。

『直感反応』で襲撃には対応できるかもしれないけど、

 ずっと気を張り詰めていたらこちらが疲弊していくだけ。



(……備えるために、拾うんだ)



 音・臭い・空気の流れ・足跡・存在の痕跡。

 その先に、間違いなく敵は居る。




 《熟練度が規定値を超えました》

 《職業(ジョブ)斥候(スカウト) 獲得》

 《索敵LV.1 獲得》

 《隠密LV.1 獲得》

 《五感強化LV.1 獲得》




「……唯火(ゆいか)。左後ろの巣穴。前方の岩陰。2体づつ潜んでいる」

「えっ……?」






 ::::::::






「閉塞的で入り組んだダンジョンでは便利な能力だよな」

「そう、ですね」


 それもすごいけど……階層が深まってきて徐々にモンスターのレベルも、ナナシさんのレベルに肉薄してきているはず。

 2階層での湧き場(スポット)では確かに数の利、地の利はゴブリン達にあったけどレベル差は2倍もあった。


(けど、6階層にきて自分と同じレベル20台のモンスター相手に、それを全く意に介さず一刀のもとに下し続けている)


 2階層で感じた、おぼろげな『負』に分類する感情。

 彼の毒気の無い『ありがとう』の一言で、自分でも不思議なくらい浮足立ち、一時霧散した感情。

 それが、徐々に輪郭を露わにしていくような感覚がある。



(でも、今一番強い思いは……この人の力になりたい)



 命の恩人。

 自らの危険を顧みず戦いへと駆けてくれた。

 暗闇をずっと逃げているような、ぼんやりとした意識の中。

 守ってくれた……あの背中。



「……っ」



(ダンジョンに入ってから感情がグチャグチャだな、私)



 抱えている感情(もの)すべてがモヤがかっていて、自分でもうまくフタが出来ない。



(今は、ダンジョン攻略に集中……集中)


「ん?こんなところに……扉?唯火!ちょっと来てくれないか?」

「はい!わかりました!」



 ならせめて、溢れないように大事に抱えよう。


 堰を切ってしまう、その時まで。

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