242話 触手
相も変わらずナメクジ更新で申し訳ございません。
恐縮ですが、あとがきにお知らせがございますので、
どうぞお付き合いください!
(『剣聖』スキル……!)
「――ありゃ?」
転移で巨蟲の攻撃範囲から逃れた女に構えをとり。
即座に発動。
(『瞬動必斬』――!)
出し得る最高速度。
対象が居ないと発動できない、高速移動斬撃でその場を逃れる。
「――あっぶなぁ。回避のついでにボクも斬り捨てようなんて、ちゃっかりしてるなぁ」
案の定、女は再びの転移で斬撃を躱していた。
攻撃自体が目的ではなかったが、加減したつもりもない。
スキルの性能だけでなく、反応速度も超人のそれだ。
(って、今はそんなこと分析している場合じゃない!)
物理的な攻撃範囲からは逃れた。だが、圧倒的破壊力にはその余波がつきもの。
ゴレイドの『重撃』のように。
(空へ避けるしかないか……!)
機動力に劣る空中は避けたいところだが、この異常な巨体。
その自重から考えるに、そうほいほいと追撃はこないだろう。それが上方なら尚の事。
(それにしても、デカすぎだろ)
今まで対峙してきたどのモンスターよりも、大きい。
というか長い。全長は高層ビルとどっこいどっこいってところか。
(あの図体から繰り出される攻撃。速度はそれほどでもないけど、広範囲……そして、凄まじい破壊力)
技とか魔力とかそんな類ではない、障害を取り除く程度のそんな動作。
それが、致命の攻撃へとなり得る。
(『覚醒種』……こんな規格外の化け物と、どう戦えば――)
女への警戒を怠らずに『無空歩行』で宙へ退避。蟲の巨体が地を抉り、予想通り、その余波が周囲に伝番し地を砕く。
「――いいのかなぁ? ボクに横恋慕なんかしてて」
「!」
巻き上げられた砂塵の中で、複数の影が動き、それらが上空へと飛び出してくる。
「別個体のディグワームか!?」
いや、それにしては気配が増えたという感じはしない。
この殺気、攻撃の意思は、変わらず単体から発せられるものだ。
つまり――
(イビルワームの攻撃!)
数十本の副腕……触手と言った方がしっくりくるか。
その一本一本の先には大口が付いていて、そこいらのディグワームと同等の大きさ。
見た目は同じ、だが――
「速い……!」
ディグワーム達とは比べ物にならないほどの速力。
宙に浮いた状態では、最小限の動きで次ぐ攻撃を予測しなければ、あっという間に捉われてしまう。
(じり貧だな……)
『無空歩行』を駆使して、宙を縦横無尽に立ち回る。
息つく間も与えない、触手の連撃。
反撃の隙など、あるはずもない。
「だから言ったでしょぉ? ほかの女の子に目移りしてるからヤキモチ焼いてるんじゃない? あはっ」
「っ……黙ってろ!」
回避に詰まり、黒鉄の左腕に全力の膂力を込め、迫る触手を弾くと、その先には偶然転移の女が居た。
「あ~。それって悪手じゃない?」
尚も、続ける軽い口調の言葉の中に、悦の色が濃く出るのを聞くと。
「! くっ……そ!」
振り抜いた左腕が触手に嚙みつかれ、ガントレットが悲鳴を上げる。
今まで幾度となく窮地を救ってきてくれた防御力が、破られかけているのを、徐々に圧迫される左腕の感覚で把握。
「――『隔絶空間』!」
左腕を捕縛した余裕か、一瞬緩んだ猛攻の隙にスキルを発動。
触手それぞれが警戒を強めるかのように、僅かな停止。
「同じ蟲なら……!」
宙に、最後のガソリンの携行缶を取り出し、拘束されていない腕で剣を振り両断。
食らいついた触手と自身の腕にガソリンを浴びながら。
「炎も効くだろ!」
剣の腹でガントレットの喰らわれていない箇所を強く擦ると、魔鉄特有のものなのか、青白い火花が発生。そして瞬時に――
(よし。燃え移った)
食らいついていた触手と他の触手にも燃え広がる。
しっかり痛覚があるようで、空中でのたうつように拘束を解放。
「おー! なんかいろんな戦法してるね~。キミの戦いは見ごたえあるなぁ」
だが当然、燃料を被ったこちらの身体も同じく燃え移ってしまった。
「あっつ……!」
速やかに消化行動へ移る。
竜鱗の羽衣を操作し帯状に延長。火元の左腕に羽衣を何重にも巻き付ける。
この程度の炎なら、この羽衣は焦げもしない。
「ひゅ~。器用だねぇ……で・も――」
「っ!」
触手っ引っ込んだが、下方から再び攻撃の気配。
視線を向けると、そこには大穴が広がって――
「は?」
この、穴は。侵食していく暗闇は……
「小手先だけじゃ通用しないのが、『覚醒種』だよ」
(イビルワームの、口……!?)
『無空歩行』で空を蹴り、緊急退避。
だが――
「ぐっ!? 足を……!?」
巨大な口内から、先ほどと同じ触手が伸び、足首に噛みつかれ牙が食い込む。
そのまま、暗闇の奥へと引き込まれ――
「く、そぉおおお――!」
視界全てが、闇に閉ざされた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この度、本作は……
書籍化されることが決定いたしました!
こちら、第一巻の書影となります↓
出版元は一二三書房様。
担当いただいたイラストレータ様は、KeG様です。
自作にはもったいないと感じざるを得ない、
実力派イラストレーターKeG様さまのイラストの数々が、
美麗なる表紙から挿絵に至る随所にて、作品を彩ってくださいました!
そして、書籍タイトルは『ナナシの器用貧乏』となっております。
かなりコンパクトになりましたね。
加筆も頑張りました!
……今だ、私などがこのステージにいることが信じられませんが……
ここまでこれたのは間違いなく、本作を読んでいただいている皆様のおかげでございます。
自信など一向に湧いてきませんが、出てしまうものは仕方がないので、
良い作品になるように尽力致します。
ちなみに、発売日は2024年11月15日となっております。
この投稿は2024年11月12日のものです。
もっと早く告知するのがベターだったなと(汗)
各書店やらネットなどで、色んなところに出没すると思うので、
一人でも多くの読者様と巡り合えたら幸いです。
最後に、本作と関わってくださったすべての皆様に感謝を申し上げます。
これからも宜しくお願い致します。