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14話 次なる脅威。交わる道

「モンスターが出たのか!?」


 化け物が出たという大声を聞き、池さんの墓参りもそこそこに公園の広場に戻る。

 すると、そこには仲間たちに囲まれた山さんと疲弊しきった男がいた。


「あぁ、兄さん……すまないね、騒がせちまって」

「いや。それより、化け物が出たって」


 山さんがなだめて開放するように寄り添っている男に目を向けると。


「き、聴いたんだ」

「聴いた?なにを?」


 呼吸の荒い男を山さんが何とかなだめ、落ち着くのを待つと口を開く。


「今まで聴いたことがねぇような、でかい図体から出てくるような、唸り声を……間違いなく人間のものじゃなかった」


 唸り声。

 モンスターのものか?討ち漏らしがあったということか?


「……その声はどこから?」


 これだけ怯えているんだ。

 もしモンスター(そいつ)がいたとしたら、その所感はイコール脅威度につながると思って動いたほうがいい。


 万が一、魔物使いが使役していたオーククラスの怪物だったら一刻も早く倒さないと。

 今までのモンスターは家の中には入ろうとしなかったが、大型で強いモンスターもそうだとは限らない。


「あの入り組んだ路地がある……廃工場がある辺りだ。近づいちゃいないが、そっち方面に向かって日課の散歩をしていたら……」


 声が聴こえた、と。

 廃工場というと、魔物使いにはめられて、魔物使いと戦ったところ、だよな。

 どうやら俺はあのへんに変な因縁があるみたいだ。


「ごめん、みんな。もしかしたら討ち漏らしがいたのかもしれない……山さん、悪い。さっき渡した外套(がいとう)返してもらっていいか?」


 今まで通りゴブリン程度のモンスターなら必要ないかもしれないが、どうもそうはいかない予感がする。


「ああ。まぁまだ手は加えとらんが……いくのかい?」


 まだ山さんの手元にあったらしく、外套(それ)を受け取るとすぐさま羽織り。


「うん、いく。気づいた異常にはすぐ対処したいんだ……最善を尽くしたいから」


 起こった事象の流れのままに身を任せるなんてまっぴらだ。

 手遅れになってからの反省や対処なんて俺はもうしたくない。


「すまない、若いの(あんた)に任せっきりで……気を付けてな」


 その言葉に軽くうなずくとスキルが発動しない速度でその現場へと走りだした。






 :::::::::::






 昨晩から走ってばっかり、一体ここはどこなんだろう?

 グニャグニャと入り組んだ路地に建物群、人気がなく閑散としている。



「はぁっ……はぁっ……」



 なんにしてもツイてない。

 夜が明け、やっと追っ手を振り切ったと思ったら今度は・・・



「ゲギャォォオオォ!」

「ゴブリンジェネラル……!」



 何でこんなモンスターが町中に出てくるんだろうか。

 群れを指揮するタイプのゴブリンの上位互換、戦闘力も相応のモンスター。

 見たところ周りに手下のゴブリンは見当たらないようだけど。


「……」


 あまり力を使うと、引き寄せられたモンスターの痕跡を追ってこちらにたどり着くかもしれない。



「……『操玉(そうぎょく)』」

「ゲグゥ……?」



 でも、このまま逃げ切る体力もない……やるしか、ない。


「……っ!?」


 途端、ひどい脱力感が全身を襲う。


「あ……れ?力が……まさか、MP切れ(マインドダウン)?」


 なんてことだ、迂闊にもほどがある。

 自分の状態に全く頭が回ってなかった。


「はぁっ……!はぁっ……!たて、ないっ」


 敵前でへたりこんでいてはただの的だ。

 動かなきゃ、動かなきゃ、動かなきゃ。


「……ゲギャガァ」


 立てないでいるとゴブリンジェネラルは一声鳴き、離れたところからこちらを囲うように手下のゴブリンを呼び出す。



「弓兵!?」



 不格好で粗悪そうな弓。

 だけど動かない的を射貫くことくらいはできる。



(死に、たくない……)



 数秒後に迫る死の恐怖、声を出すことも、立ち上がることもできず、膝を折り待つだけ。



(誰か、たすけてよぉっ……!)



 終わる自分が受け入れられなくて、強く瞼を閉じ目を背ける。

 食いしばるも震えで歯はかみ合わず、吐き気を催すほどの死への恐怖は少しもマシにはならず。



 矢を放つ弓弦の乾いた音を聞いた。



 これが私が最期に聴く音なんだとぼんやりと思った






「もう大丈夫だ」


 来るはずの矢は一向に私の体に届かず、


 代わりに今度は声が耳に届く。

 久しく聞いていない気がする、人の。


 男の人の穏やかな声。



「……あな、たは……?」



 MP切れ(マインドダウン)で眩む目を開け、何とか視認できたのは背中。

 翼のようにはためく外套を纏って、私の前に立つ背中。


「ここで待っててくれ」


 そう言いながら、私の体を外套で包むように肩にかぶせてくれ、彼は駆け出した。


 輝きに目を細めるように、私は背中(それ)を見ていた。

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