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13話 死闘のあと

「はっ!」

「ギャっ!?」


 飛び込んできたゴブリンを袈裟斬りに両断。


「……今日はこれで全滅みたいだな、この調子だと明日にはもう出なくなるか?」


 戦闘体勢を解くと池さんが遺した剣を鞘に納める。

 この剣かなりの優れもので、血のりで全く痛まないのだ、自動的に洗浄されてる感じ。

 刀剣に関して素人の俺は手入れのしかたも知らないので、ほんと池さんには感謝だ。


「あれから、もう5日経つのか……」


 魔物使いに逃げられた後、俺は池さんが命を懸けて守ったホームレス仲間たちがいる公園へと戻った。


 聞く話によると、どんなにぼろくても家の中には入ってこないらしく、皆をそれぞれの住家に避難させたあと周りのモンスターを狩りつくした。

 レベル1のゴブリンしかいなかったので特に苦戦はしなかった。

 そのことを彼らに伝えると大層喜び、池さんの死を伝えると大層悲しんだ。


 魔物使いの悪行を知っているのは池さん一人だったらしく、彼らは何も聞かされていなかったという。

 黙っておいた方がいいとも思ったが、守られた彼らにもまた知る義務があると思い全てを伝えた。


 それぞれ思うところはあったのだが割愛しよう、皆が池さんに感謝しているというのは紛れもない事実なんだから。


 その日俺は池さんの住家を使わせてもらった。


 ところがその翌日、なんとまたも同じくらいの数のモンスターが現れたのだ。

 考えてみれば前日、湧いたモンスターを倒すのにスキルを使っていたから当然と言えば当然の結果で、結局いなくなるまで彼らは隠れているしかないのかと頭を悩ませたが、俺はとてつもなくシンプルな答えに行き着いた。


『手加減すればいいじゃん』


 ゴブリン、オークとの戦闘でスキルの使用にも加減が効くというのを俺は感じていた。

 要するにスキルを意識的に発動しないで、武器とステータス頼りのゴリ押しだ。


 案の定スキルを制限した翌日には明らかに湧いてくるモンスターの数はかなり減っていた。

 その後も幸い、レベル5以下のモンスターしか出現しなく、何より池さんの剣が強力なので難なく今日まで生き残ってきた。



「おーい!みんなもう出てきて大丈夫そうだ!」



 一つの群れを殲滅すると、その日はもうモンスターが出てこなくなるのだ。

 公園に戻り今日も狩りつくしたことを大声で伝えると、皆ぞろぞろと日のもとに出てきた。

 すると代表するように池さんと一番の古い付き合いである、山さんが口を開く。


「ありがとうな兄さん。ケガはなかったかい?」


 山さんはとても穏やかな人だ。トゲがあった池さんとはまた違う味がある。


「ああ。この通り、無傷だよ。それより礼は言いっこなしだって言ったろ?俺が無傷でいられるのは皆が()()()()()()()()()装備のおかげでもあるんだ」


 池さんの死をみんなに伝えた時はじめて知ったのだが、池さんを始めとするここの全員が、元は様々な工芸の職人だったらしい。

 池さんは自分のような一線を退き行き場を無くしたような人間を積極的に仲間として迎え入れていたそうだ。

 池さんの剣が収まったこの鞘も彼らの作品だ。

 元々が職人だったこともあり、彼らの職業(ジョブ)も多くが生産職ばかりで腕もいい。


「それに、今日はゴブリンが2体だけだったからな。もう明日には湧いてこなくなるんじゃないか?」

「そうかそうか。前にバケモンどもが出てきたときはひと月くらい出てきたもんだが、お前さんには頭が上がらんな」


 そう。前回の話を聞いてみると、魔物使いがけしかけたモンスター湧きの時は一か月も籠城していたという。

 そんな長い期間それぞれが孤立無援で狭い住処に居続けたんだ、その精神的ストレスはもちろん身体的にもきついものがあるだろう。


 そんなものが2回目もあったとしたらとても耐えられないだろう、そういった理由から見ても池さんがあの魔物使いの脅しに屈するしかなかったのも仕方なかったのかもしれない。


「いや、だからって拝むのはやめてくれよ、山さん。お互い持ちつ持たれつなんだってば」


 そういいながら、頑丈かつしなやかな革張りと高密度で軽量な鎖帷子(くさりかたびら)であしらわれた外套(がいとう)を彼らに示すように叩く。


 こいつは低レベルのゴブリンやそこらのモンスターの攻撃じゃ全く歯が立たないくらい丈夫で、今の俺のステータスなら全く気にならないほど軽い、それに羽織っているとなんとなくかっこいいという逸品だ。


 ちなみに、装備が増え今日までそれなりの数のモンスターを屠ってきた俺の今のステータスはというと。




 名:----

 レベル:12

 種族:人間

 性別:男

 職業:

逃亡者(とうぼうしゃ)

精神掌握者(メンタリスト)

鑑定士(かんていし)

解体師(かいたいし)


 武器:ショートソードC+(無名)

 防具:レザーマント(改)


 攻撃力:89

 防御力:92

 素早さ:123

 知力:79

 精神力:115

 器用:245

 運:23

 状態:ふつう

 称号:無し


 所有スキル:

 平面走行LV.3

 立体走行LV.3

 走破製図LV.1

 洞察眼LV.2

 読心術LV.1

 精神耐性LV.3

 目利きLV.1

 弱点直勘LV.1

 弱点特攻LV.1

 ドロップ率上昇LV.1


 ユニークスキル:《器 貧乏( ようび ぼ )



 変わったのは装備品だけで俺自身のレベルもスキルもオークを倒した直後から変化はない。


 相手のレベルも低く日に日に数も減ってきて、さらにはスキルも全くと言っていい程使用していないまま倒しているから、オークを倒して以来頭に響く声は聞いていないのだ。


 ユニークスキルも相変わらず、いや更に文字の表示がおかしい。

 ユニークスキルは希少で強力、と聞いたが、その情報もあの魔物使い発信なので正直あてにはしてない。

 役に立っているのかどうか謎なスキルである。


「いやいや、まだまだこの恩は返し切らんて……おお、そうだ。うちの若い連中からその外套に少し改良を加えたいという申し出があってな。少し預かってもよいかな?」

「あ、ああ。せっかくだからお願いするよ」


 魔物使いの一件以来どうにもここの人たちは俺のことを神格化している節がある。

 名前がこの世から消えてしまったという摩訶不思議なエピソードもそれに拍車をかけている気がする。



 モンスターがいなくなり皆思い思いに外に出て過ごしているのを見届けると、この五日間すっかり日課になっている池さんの墓参りに足を運ぶ。

 といっても、魔物使いとの決戦前に池さんが祈りをささげていた墓石のすぐそばだけど。



「……池さん。今日も誰も傷つかず平和だよ。きっと明日には、目途がつくと思う」



 こうして毎日彼らの近況を報告している。

 そして今日は、



「モンスターが湧かなくなったら、俺はここを出るよ」



 一足先に別れを告げに来た。






「バっ……化け物がでたぞーーーーーー!!」



 ……つもりだったんだがな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 剣を使う職業やスキルを取得出来ていないよね。
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