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132話 VS星竜 星の力

星竜ほしりゅう・・・アトラゥス」


名持ネームド、ですか」


「みんな!ここはあたしたちが!ビルに避難してて!」




レベル120。

三桁のレベルはシキミヤに次いで二回目だ。

奴よりも下回ってはいるが、ちっとも見劣りなんて感覚は湧いて来やしない。


竜種という種としてのポテンシャルがそうさせているのだろう。


パラメーターは部分的にしか閲覧できないが、ほぼ3000越えの数値であろうことは間違いない。

スキルも複数所持。

欠けた表示の中何とか読み取れるのは『竜鱗の加護』。

あの鉄壁の守りを誇っていた地竜のそれよりレベルが高い、これだけで防御力の高さが窺える。




(分析しろ。敵の脅威——————)




名:暮 朱音

レベル:57

種族:人間

性別:女


職業:

上級

付与魔術師エンチャンター


武器:9㎜拳銃

防具:なし


MP:2400/2400

攻撃力:627

防御力:573

素早さ:699

知力:1023

精神力:981

器用:310

運:60


状態:ふつう

称号:なし


所有スキル:

攻撃力上昇ストレンジLV.6》

防御力上昇プロテクトLV.5》

素早さ上昇(バーニア)LV.6》

盲目ブラインドLV.6》

遮音ミュートLV.3》

忍び足(スニーク)LV.6》


ユニークスキル:『限突支援エクスエール




(こちらの戦力——————)




名:かがり 唯火ゆいか

レベル:92

種族:ハーフエルフ

性別:女

職業:

上級

宝玉指揮者ジュエルコンダクター

魔導拳闘士マジックフィスト


武器:レザーグローブ

防具(胴):レザーメイル(改)

防具(胴):レザースカート(改)

防具(飾):伝心の指輪


MP:10400/10400

攻撃力:969

防御力:970

素早さ:1160

知力:1735

精神力:1578

器用:210

運:60

状態:ふつう

称号:無し


所有スキル:

『操玉ⅡLV.1』

『操玉・属性解放LV.2』

魔添まてん・剛力LV.8』

『魔添・駆動LV.7』

『魔添・体術LV.7』

『魔添・威圧LV.4』


ユニークスキル:???


固有スキル:『同類吸命ブロスドレイン




『目利き』で二人のステータスを閲覧、

心慮演算しんりょえんざん』により加速する思考。




(唯火も朱音も竜種との戦闘を経てレベルアップしている。パラメータも以前より上昇、スキルレベルも。情報の開示で見れるようになった朱音のユニークスキル『限突支援エクスエール』。クラスアップし進化した唯火の【宝玉指揮者ジュエルコンダクター】)



俺たちとアトラゥスのパラメーターとは確かに大きな開きがあるが、これらを駆使して戦いを組み立てていけば勝てないことはないはずだ。



(朱音は徹底して後衛。この差は一度のダメージが致命傷だ、常に距離を取って『限突支援エクスエール』に備えてもらう)




そう、勝利を見据えて思考を練る。




(唯火は進化した『躁玉』で牽制、射程距離は伸びMP消費も下がった性能と『魔添』の機動力を活かして中距離から高い頻度で攻撃。それである程度奴の防御策を知れるはずだ)




だが——————




(俺は———)




加速する思考、冴える脳内とは反面に、その姿を見せる前から感じている胸のざわつき。

いやな予感は一向に消えない。


空から降り立ち奴と視線が交差し、策をはじき出すその間2秒に満たない程度。


己の行動をそこに組み込もうと、謀略の出口が見えかけた時———











「———ひざまずケ」


「「「「!?」」」」




膨れ上がる敵意。


それは悠長に策を練る脳内を真っ白に飛ばし、肉体の反射に脳機能のリソースをすべて割くことを強制させるほどの不吉さ。


だが、己の最高速で剣へと触れた腕は———




「なん、だ!?これは・・・ッ!?」




抜刀の動作を成すことがかなわなかった。




「朱音、ちゃ・・・!」


「ぁ・・・ぐ、ぅ」




身動きの利かない体で視線だけ巡らせると、唯火は四つん這いでつくばり、朱音は地べたに伏していた。

それぞれのその現状が、己の意志ではないことは明白。


そして『威圧』系統の、相手を委縮させ戦意を削ぐ類のものでもない。




「体が・・・重、い!?」




自重が何倍にもなったような得体のしれない圧力が、膝をつかせようとする。




「耐エルカ。ソノ脆弱ナ肉体デ大シタモノダ———」


「ぐぅッ!?」




黒鉄の竜がそういうと。

肉体を押しつぶす圧力がさらに強まる。




(肺が・・・!呼吸も、ままならない!)


「ナナシさん!!」




唯火の声を聞くに、この圧の上昇は俺を狙い撃ちにしたものらしい。

足場のコンクリートは砕け、アスファルトへと沈み始める。




「ヨク粘ル・・・コレ以上ハ、臓物ガ爆散シテ死ヌ、カ」




言葉は流暢だが人語を操るに適した人の形を成していないせいか、くぐもって唸るかのような声で言い。




「———ッは!?はっ!はぁ!」




圧し潰す力は弱まる。といっても依然として体の自由が利かない程の圧を受け続けているようだ。




「はぁっ・・・はっ・・・『重力』、か」


「流石ニ体感スレバ理解デキルカ。称賛ハ送ランゾ」




なんだ?こいつ。

やけに———




「人間ノ男ヨ。名乗リヲ上ゲヨ」


「なん、だと?」



異形からの名乗りの催促。

かつての、ゴブリンの王ゴレイドを彷彿とさせた。



「二度ハ言ワヌ」


「・・・・ワルイガ=ナナシ」


「私ハ『アトラゥス』。『竜王ノ系譜』ニ連ナル者」



すでに暴いたその名を口にし、続ける。



「人間ノオ前カラシタラ得心ガイカヌダロウ。異形タル私ガコウシテ対話ヲ要求シテイル事ガ」


「そりゃ、な・・・!」



対話と言いながら、この体を潰そうとする圧は一向に消えやしない。

仲良く手を取り合うつもりもない証拠だ。



「私タチ竜種ハ、ノ種族ヨリモ古クカラ知性ト理性ヲ持チ合ワセテイル。ソノ私カラミレバ、オ前タチ人間ノ方ガ理性ヲ欠クヨウニ見エル」


「話が、見えないね・・・!俺の、記憶違いじゃなきゃ・・・!お前らみたいな、モンスター・・・見たこともないんだが・・・・理性、的な行動を求めるなら、戦わずに、帰ってくれないか?」



思わず願望を垂れ流す。



「ソノヨウナ道モアルダロウ。ダガ叶ワヌ。ソレガ()()()()ナノダ———」


「・・・?」



竜の声色にわずかな憂いが聞き取れた。


俺たち人間より強者であるにも関わらず、この竜の言葉には下等レッサー吸血鬼ヴァンパイアが漏らしていたような人間への侮蔑が感じられない。

ほんの少しづつ、この竜に抱く感情に変化の兆しが己の中に芽生え始めたのを自覚する。


と——————




「! 動、ける」


「コノ加重デ無傷カ。ヤハリ大シタ男ダ、並ノ者デアレバ()()ナルノガ普通ダ」



人間のような所作で俺たちの背後を指さす。


圧から解放され膝をつき息を整える唯火と朱音。


その、さらに後方———




「みんな!!?」




悲痛な朱音の叫び。

逃げ遅れたギルドメンバー数名のギルドメンバー達は、血反吐を地に流しながら倒れていた。

その中には歓迎会の時、親愛の証として大事にしている酒を譲ってくれた源蔵さんと清蔵さんの姿も。


甘い考察を練っていたところに冷や水をかけられたような気分だ。



「そんな!いやぁ!」



俺たちより彼らとの付き合いがずっと長い朱音は見たことがないほど動揺していた。



「落ち着け朱音!まだ息がある!」



アトラゥスから目を逸らさず、聴覚を強化しかすかな息吹を聞き取る。


今度こそ剣を抜きながら、俺は苦肉の策に出る。




「星竜・アトラゥス!戦うなら俺たちが・・・俺が相手だ!彼らはもう戦えない!」



先ほどの会話の中で垣間見た、この竜の理性と知性。

そして、見下す対象である俺たち人に対する情のような何か。


感じ取ったそれらに一縷の望みを託しメンバーたちの撤退を懇願する。

恐らくさっきの圧で内臓を大きく損傷した状態だ、一刻も早く手当てをしなくては手遅れになる。



「だから頼む。彼らを退避させてくれ!」


「・・・・好キニスルトイイ」



驚くほどあっさりと聞き入れてくれる竜。

その心中は窺い知れない。




「朱音。唯火・・・・頼む」


「まさか・・・一人で戦うつもりですか!?」


「ワ、ワルイガ・・・?」



二人の声に振り返ることはしない。



「朱音。『超加速バーニア』だ」


「で、でも———」

「さっさとしろ!邪魔だ!!」



逡巡する二人に怒鳴りつける。


一拍置いて。



「『超加速バーニア』・・・ッ」



肉体への負荷が掛かり始める。

先の圧を経験した後だからだろうか、以前よりも軽く感じる。



「・・・行け」



瀕死の彼らを救うには、誰かがこの役を負わなきゃいけない。



「五分・・・三分で戻ります!!」


「しっかりして!」



唯火は『魔添』を、朱音は『攻撃力上昇ストレンジ』で自身の筋力を強化すると、メンバー達を抱え離脱する。

遠ざかる足音を背に聞きながら剣を構えると。



「・・・・あんたみたいなモンスターは初めてだ。・・・・戦わずに済む選択はないのか?」


「無イ。私ガ望ムノハ、殺戮ヤ蹂躙デハナイガ引ク事ハ叶ワン・・・・」



ソレニ、と続け。



「オ前ハドウニモ興味ヲソソル」




それだけ言うと、翼を一度はばたかせゆっくりと上昇する。



「元ヨリ、オ前タチ人間ト直接戦ウ気ハナカッタ」



発する言葉と反比例していやな予感はより濃く、不吉なものになっていく。



「苦シム間モナク。全テヲ無ニ帰シテヤロウ、ト」



鈍く輝く黒鉄の爪を広げ、天高く掲げると。



「なん、だ?あの、黒い球は?」



掲げた竜の手の先の虚空に、漆黒の球体が出現。

黒い稲妻のようなものを纏うそれは、奴が生み出したこということだけは明白。



「私ノちからハ星ノちから、『重力』。ソレヲ任意ニ圧縮。私ノ魔力ヲ喰ライ続ケ拡大。ソノ果テニ何ガ生ジルト思ウ?」


「何を・・・するつもりだ?」



無様にも、呆けたように聞き返すしかなかった。



「闇ダ。全ベテヲ呑ム、事象ガ完結スルマデ繰リ返ス極小ノ・・・・何ト言ッタカ。オ前タチ人間ガ名付ケシ呼称———」



アア———


何気ない忘却、それを思い出したような。

そんな場にそぐわぬ声色でこぼすと。






「ソウ、確か・・・・『ブラックホール』。ト呼ブノダッタカ」








聞くや否や———



俺は剣を片手にアトラゥスの元へと駆け出した。


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