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99話 意外な能力と隠し事

あらすじ


朱音「お前ステータス見せろ」

主人公/唯火「・・・はい」

「まずあたしからね」



そう言って、開いたステータス画面を反転させ俺たちへと向ける。



名:暮 朱音

レベル:49

種族:人間

性別:女

職業:

上級

付与魔術師エンチャンター


武器:9㎜拳銃

防具:なし


MP:1980/1980

攻撃力:534

防御力:441

素早さ:576

知力:879

精神力:828

器用:320

運:59

状態:普通

称号:なし


所有スキル:

攻撃力上昇ストレンジLV.5》

防御力上昇プロテクトLV.5》

素早さ上昇(バーニア)LV.5》

盲目ブラインドLV.5》

遮音ミュートLV.3》

忍び足(スニーク)LV.6》


ユニークスキル:【限突支援(エクスエール)




・・・・改めてみると結構強いよな。

初めて唯火のパラメータを見た時のレベルよりは下回るけど、それでもその当時の唯火に肉薄する数値だ。



(唯火はハーフエルフとしてのパラメータ補正みたいなものが入っているはずで、事実MPの最大値は突出したものがある。けどそれ以外のパラメーターは、もし朱音が同じレベルだったら一部の数値は上回っているんじゃないか?)



それでも。

使用している武器の問題もあるだろうが、サラマンダーやワイバーンに比べて防御力の低いリザードランナーに効果的なダメージを与えられなかったのを見るに、やはり職業ジョブやスキルの相性というのは戦いの結果を大きく左右する重要なファクターなのだろう。



つまり今注視するべき項目は――――



「ユニークスキル、【限突支援(エクスエール)】?」


「そ。その効果は・・・・自分以外の対象に支援系の『付与魔法(エンチャント)』を掛けると、その効果が倍加される・・・いえ、されてしまうの。使用したスキルのレベル以上の効果を強制的に引き出されてしまうユニークスキル」


「すごい能力じゃないか」


「ワイバーンと戦った時の効果もすごかったですしね。ナナシさん完全に人外の動きでした」



朱音本人はなんだかネガティブな言い様だが、その絶大な効果はワイバーン戦で俺が自ら体験した。

まるで自分の体ではないように感じる程身体能力が向上し、空を飛ぶ竜の元へと体を運んでくれた。



「数字だけ見ればね。あんたに『超加速バーニア』を付与エンチャントした時も言ったように、その異常なパラメータの急上昇は肉体の破壊を招く。そして、私のレベルに応じて倍率は上昇していきその効果の調整は一切きかない。ちなみにこれは私にしかわからないけど、他者に支援魔法をかけた時はスキル名が変化するわ。『素早さ上昇(バーニア)』から『超加速(バーニア)』みたいにね」


「極端な能力だな・・・・でも俺は大丈夫だったが?」


「どういうわけかね。初めてあんたに『超加速バーニア』を掛けた時も、ワイバーンの時も体に大きな変化は見られなかった。大体、付与エンチャントされた側は腱が切れたり骨折したり大怪我するはずなんだけどね」


「そんな危ないもの付与したのか・・・・」


「初めての時は敵対してたし、ワイバーンの時はちゃんと説明はしたわよ」



思い返せば確かにそんな事を言っていたが、もっと念押ししてほしいものだ。



「それで?あとはどんな効果があるんだ?」


「え?」


「「え?」」



唯火も同じことを思ったのだろう、二人の疑問符が重なる。

まさか・・・・



「今説明した、支援魔法(エンチャント)効果の強制倍加。これがユニークスキル【限突支援エクスエール】の効果のすべてよ」


「それはまた、なんというか・・・・」


「朱音ちゃん、ほんとに?」


「嘘じゃないわ。結論、あたしが仲間に掛けられる支援魔法は、その身を滅ぼしかねない過剰な強化のみ。あたしだって好きでこんな色物スキル身に着けたわけじゃないわよ」



そう言ってため息を一つ漏らす。


朱音のユニークスキルがすごいのはわかる。

パラメータの上昇率だけで言えば破格も破格。

瞬時に何十レベルも上昇した先の力を一時的に手にすることができるんだから。

だがその結果、肉体を破壊してしまいかねないなら本末転倒。

その一撃で敵を仕留められなかった場合、過剰な強化による反動で身動きが出来なくなりこっちがやられてしまう。



「これが、あたし自身に掛けた支援魔法とあんたに掛けた支援魔法の上昇率の違いのカラクリ」


「なるほどな、なかなか一朝一夕とはいかないか」



考えてみれば、あれほどの力を手にするのに全くのノーリスクなわけがない。

代償なしに使えるほど甘くもないわけだ。


そして恐らく、彼女がダンジョン攻略に向かわなかった理由は【限突支援エクスエール】がもたらす肉体の破壊。

大所帯のパーティーでは自分の付与魔法がかえって足を引っ張りかねないと判断したんだろう。

聖也もそんな事を言っていた。



(乱戦向きじゃない、が大物相手(ジャイアントキリング)にはもってこいの能力だな)



つまり、強力な種族である竜種たちを相手取るにはうってつけだ。



「でも強力なことに変わりはない。竜種の名持(ネームド)との戦いでもきっと切り札になるはずだ」


「あくまで切り札、ね。開幕すぐに付与(エンチャント)するにはあまりにリスキーだからね」


「でも、ナナシさんは何で平気だったんですよね?」



平気という事はないが、確かに朱音が言うような大怪我の類は負っていない。

何メートルもあるビルの壁面を垂直に上って、空高く跳ぶ飛竜との距離をゼロにするまで力を使っても体の軋みと疲労感を感じるのみだった。



「そう。その秘密が、あんたのステータスに隠れていると睨んでる・・・・あたしも支援魔法をかけた相手が五体満足なのは初めての事なの」



何やら随分と熱を帯びた目で見られているな。

無事なことが気にくわない、というわけではないだろうが。



「次はワルイガ。あんたの番。そのステータスを見せて」


「あ、ああ」


「朱音ちゃん・・・?」



俺の目を覗き込むように接近してくる気の入りようで思わず気圧されたじろぐ。

その熱に唯火も少し戸惑い気味の様子だ。



「ほら。これが俺の――――」



開いたステータス画面を二人に向けて展開しようとする。











《はい。そこまで》











「・・・・ん?ワルイガ、何よこれ」


「・・・・・」



なん、だ?

今何か、女の声が・・・・・



「何も見えない・・・というか、読めない・・・?」


「文字化け?これあんたが意図的にやってるの?」


「あぁ、そうか。ユニークスキルのことか。いやな、こいつだけはどうしてか――――」


「違います、ナナシさん。パラメーターもスキルも全部おかしいんです」


「・・・何?」



展開した画面を一度消し、もう一度自分の目の前に出現させる。



「・・・・なんともないが」


「あんたにはちゃんと見えてるの?」


「前に見せてもらった時はこんなことなかったのに・・・・」



俺の後ろからステータス画面をのぞき込む二人の反応を見るに、俺とは違うモノを見ているらしい。



(狙撃を受けた拍子にバグったのか?)



自分でもおかしなことを言っているとは思うが、例えば古いテレビゲームみたくちょっとした拍子に画面がドットで塗りつぶされフリーズしたり、データが消えてしまったりするあれだ。



(いやでも、俺には普通に見えてるわけだし。スキルの使用も問題ない)



朱音のステータス画面を見た時は何ともなかった。

もしかして、何かしらのスキルの妨害を受けているのか?



「ナナシ、さん?」


「・・・・敵の気配は無いな」


「第三者の妨害、ってこと?」


「わからない。そう言うスキルってあるのか?」


「自らのステータスの一部を隠す『隠蔽いんぺい』のスキルは聞いたことがあるけど、他人のステータス画面をこんな風にぐちゃぐちゃにする、まして本人以外の周りの人間だけ見れなくなるなんて、少なくともあたしは聞いたことないわね」



となると、直近の変化点はさっき聞こえた女の声。

唯火でも朱音でもない・・・・

なのに不思議と。



(どこかで・・・・聞いたことがある気がするんだよな)

「二人とも、さっき妙な女の声が聞こえたりしなかったか?」


「声?いえ、別に」


「私も特には、聞こえませんでしたけど」


「そうか・・・」



まぁ、別に俺自身困るようなことではない。

むしろ秘匿性がアップしていいくらいだ。

彼女たちには後で口頭で伝えればいいことだろう。



「悪い、何でもないんだ。すまんが俺のステータスなぜか見せられないみたいだ。先に唯火頼むよ」



相当意味不明な状況だが、それを言ったらそもそもこんな冗談みたいな世界になっちまったんだ。

今更驚く事でもない。


現状、彼女たちが俺のステータスが読めない以上次に話を進めるしかないと判断した俺は唯火の番だと促すと。




「あ・・・えっと、私は――――」


「あぁ。唯火はいいわよ」


「ん?知っておきたいんじゃないのか?」



さっき偉そうに説教していた勢いはどこへやら。

唯火にはステータスの開示を求めない朱音。



「あんたは『目利き』で見てるんでしょ?なら問題ないじゃない」


「俺はそうだが、お前は――――」

「あたしは後で唯火と二人きりで見せてもらうわ」



急な仲間外れに面喰う。


かといってムキになる気も起きず、確かに俺は彼女のステータスをほとんど知っているから、今更見せてもらわないでも、戦闘時の連携に何にも問題はない。

朱音が後で見せてもらうというのなら、別にそれはそれでよい気がした。



(・・・唯一、唯火の『ユニークスキル』はわからずじまいだがな)



つまりそう言う事なのだろう。

二人は何らかの理由で、俺に唯火のユニークスキルを隠している。


そしてその理由は今はきっと触れない方が良いだろう。

戦闘時の命運を左右するほどの重要要因であれば、彼女たちも隠すようなことはしないだろうが、隠す選択をしたという事はそう言う事だ。



(明かしたくないことを、無理に詮索はしないさ)


「さ。そう言う事だから、少し場所を変えて作戦会議しましょう。ワルイガのステータスが見えないなら口頭で教えてもらわないと。ここじゃ誰が聞き耳を立ててるか」


「今更な気もするがな」


「・・・・ごめんなさい、ナナシさん」


「ん?なんか言ったか?」


「な、何でもないです」



彼女の消え入りそうな謝罪の言葉を、俺の耳は聞き逃さなかったが、聞こえないふりをすることにし。



「ほら二人とも。今日の竜種がいつ出てくるか分からないんだから早くする」


「い、今行きます!」


「なんだか日替わり弁当みたいな言い方だな」




急かす朱音の背中を追いかけた。


多忙なのもあり、執筆が煮詰まってるのもあり。


・・・ポジ発言じゃないのに、煮詰まるっておいしそう。


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