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97話 付与魔術師の苦難その2

「いったぞ!気を付けろ朱音!」


「うぇ!?ちょ!あたしこいつと相性悪いんだってば!」



人気のない街中の大通りで、俺たちの声と。



「グァアアァァア!!」



名:なし

レベル:31

種族:リザードランナー

性別:男

武器:なし

防具:なし


攻撃力:713

防御力:651

素早さ:961

知力:496

精神力:589

器用:27

運:11


状態:ふつう

称号:なし

所有スキル:

《竜鱗の加護LV.1》




「このリザードランナー!そこまで強くないけど突進力半端ないのよ!あたしの付与魔法じゃ足止めできないィィ!」


「どこか細い路地に入れ!」



二足走行の竜の足音と咆哮が響く。


サラマンダーやワイバーンよりは小さく、特殊なスキルも使ってくる気配は無いがアクションがかなり激しい。

止まっている時はほとんどなく常に走っている。

小さいといってもでかい馬くらいの体高はあるので、それで突進されたら大ダメージは免れない。


おまけに・・・・



「いやぁー!前からも来たー!」



今回は単体でなく、群れで出現したのだ。

数は確認できてるだけで20体。

うち3体はすでに討伐済みだから、あと17体だ。


その中の7体に朱音は追われていて目の前からもう10体に回り込まれている。



「待ってろ!」



こちらも追う速度を上げて、車止め手すり、車両、歩道橋、と。

速度を殺すことなく一足ずつ踏み台にし高度を上げ、ビルの壁面を水平に駆けていく。


朱音を追いかける群れの先頭にいるリザードランナーを眼下に捉え。

落下地点を見定め壁面を蹴る。



「ギャゥ!?」


「転がってろ!」



リザードランナーの背に飛び乗ると横薙ぎの一閃で首を斬り飛ばし、惰性で四肢を振り続けるその体を追いすがる後方の群れへと蹴り飛ばす。

狙い通り何体かは巻き込まれて転倒した。


が、抜けた3体は変わらず爆走してくる。



「グアァア!!」


「抜かせるか!」



後ろには近接に弱い朱音の背中がある。

こいつらを行かせたら太刀打ちできないだろう。



「ぐっ!?」



闇雲に突っ込んでくるだけかと思ったら、1体は俺へと飛び掛かり、もう1体はその隙に横をすり抜け、残りの1体は遅れて向かってきている。



「ふんっ!ぬぁ!」



リザードランナーの飛び掛かりを渾身の踏ん張りで一瞬受け止め、爪をいなし、首元へ喰らいついてきた一瞬にその頭部を貫き絶命させる。

そして、剣を抜きざま後方へと抜けた1体に向け投げ放ち。



「グガッ!!」



『竜殺し』の力を秘めた刃はたやすく心臓を貫き、対象を停止させた。

これで朱音への脅威は、回り込んできた群れだけになった、が。



「ワルイガ!!」


「そりゃそうくるよなっ!」



遅れてきた1体はこの機を狙っていたのだろう。

丸腰になった俺へと飛び掛かり押し倒される。

なんとかガントレットを差し込み喰らわせているがいつまで持つか・・・・



「ギャッ!?」


「そこからどきなさい!」



朱音が吼えながら何発もリザードランナーの頭部へと銃弾を撃ち込む。

先のワイバーンよりは数段防御力は低いが、その銃撃は鱗を剥がしキズを与える程度のダメージしかない。



「こんのぉぉぉおおお!」



だがそれでも朱音は引き金を引き続け、そしてこちらへと駆けよっているようだった。



「お、おい!どうする気だ!」



排出された薬莢が地に弾かれる音を徐々に近くに感じつつ、もはや聞きなれたマガジンを装填する小気味の良い音が耳に届くと同時に。

組みしかれた俺を噛み殺そうとするリザードランナーの頭上を飛び越え、その背に飛び乗り朱音はこう言った。



「この距離なら鱗がはがれるくらいじゃ済まないわよ?」


「ギャアァアゥ!」



死の宣告のように告げ引き金を引き続けた。



「あんたが死ぬまで!撃つ!」



そして、装填された弾丸を撃ち尽くし、引き抜いたマガジンの凸を――――



「『攻撃力上昇(ストレンジ)』!!」


「ギャァアァアアア!!」



竜の瞳に突き立てた。

断末魔の悲鳴を鳴き散らし、リザードランナーは絶命した。



(・・・・・こわ)


「はっ・・・はっ・・・」



アドレナリンが噴出しているのか、若干近寄りがたい朱音になんと声をかけていいか分からずも。

いずれ危機は去っていないので、気を取り直す。



「あ、ありがとな朱音。でも、まだ終わってないぞ」


「・・・・しんどいわね」



朱音を追っていた群れの残りも体勢を整えたみたいだし、回り込んできた方も地を鳴らしながらこちらへと突進してくる。


要するに、一か所に()()()()来ている。




「唯火!!」




俺がそう叫ぶと、近くのビルの中から窓を破った人影が飛び込んでくる。

そして、俺たちとリザードランナーの間、ちょうど俺の投げた剣が刺さった亡骸の側へと降り立ち。



「ナナシさん!」



放ってよこしてきた(それ)を見もせずに受け取る。



「ナイスタイミングだ!」


「これだけまとまっていれば、一気に蹴散らせます!」


「よし、やっちゃって!」



竜殺しの刃と、唯火の放つ魔石の閃光が。


残りのリザードランナー達を殲滅した。






《リザードランナーの群れの殲滅を確認 経験値を取得しました》

《リザードランナーの群れの殲滅を確認》

《特定討伐ボーナス 取得経験値2倍》

《ワルイガ=ナナシのレベルが75⇒77に上昇しました》


《該当モンスターの討伐を確認。『ショートソードC+(無名)』の武器熟練度が上昇しました》






::::::::






「すみません。遅くなっちゃって、ナナシさんほど身軽ならもっとうまく奇襲かけられたんですけど」


「いや、これ以上ないタイミングだったよ」



リザードランナーの全滅を確認すると俺たちは前回の教訓を得て、遮蔽物の多い建物の影に身を潜めた。

そうそうあのような好条件のそろった場所から狙撃されるようなことはないだろうが、やはり油断は禁物。

それというのも今回も魔石が落ちていたからだ。

しかも個体数が多かったからか、今回は3個も。

もっとも、その大きさはワイバーンのモノと比べると随分小ぶりではあるが。



「ちょ、これどうなってるのよ。こんな数の魔石、しかも竜種の・・・・もうダンジョン攻略なんてしなくていいんじゃない?」


「攻略の目的はそれだけじゃないだろ?」


「そうなんだけど、でもこれすごいわよ。マンション買えるレベル。竜種って魔石をドロップしやすいのかしら?」


「・・・・どうだろうな」



同じチームの朱音にぐらいは、俺の『ドロップ率上昇』スキルの件について話しておくべきかもしれないが、やはりこの様子を見ると黙っておいた方が良いかもしれない。

朱音本人がどうこうじゃなく、やはりモンスターがドロップする魔石を狙うものにとってこのスキルは魅力的すぎる。

どこから話が漏れて、その結果どんな危険な目に合うか。



(内通者とやらも、まだいるかどうかも特定できていないしな)



リザードランナーの群れが出現したこの現場に駆け付ける前。

内通者の疑いがある聖也の元へと、その真意を暴きに向かった。


かつて、『探求勢(シーカー)』の久我にそうしたように、心の声を読むスキル『聴心(インサイト)』なら彼が黒かどうか見破るのは造作もないはず。


そして、スキルを発動した俺の耳に届いた声は、驚くべきものだった。






《スキルの発動に失敗。使用者の魔力操作を確認できませんでした》






要はスキルが使えなかった。



(まさか、魔力が発現していないと使えないスキルとはな・・・・)



文言からして、唯火や朱音のように魔力が発現していない俺には使う資格が無いという事だろう。


ではなぜ、久我と対峙したあの時は使えたのか?という話になる。

が、あくまで想像に過ぎないが、なんとなく心当たりはある。


あの時俺は、王が出現した『屍人迷宮(グールダンジョン)』。

その扉を封印していた術式の術者、唯火の友人ハーフエルフのレジーナの思念と一種のシンクロ状態だった。

ダンジョンに突入する時に、合わせ技『万物対話(トーカー)』でレジーナの思念とコンタクトを取ってからそんなトランス状態だったんだろう。


聴心(インサイト)』と似たスキル特性の『万物対話(トーカー)』の使用にも魔力操作とやらが必要そうではあるが、術式の魔力に思念が宿っていたんだ。

何かしら導かれた状態だったんだろう。


ともあれ、企みに失敗した俺は屋上から離れ聖也のもとを去った後、すぐさま街中にモンスターが現れたとの情報が入り。

竜種討伐班の俺たちはこの現場へと急行した次第だ。



(結局、内通者の存在の有無さえ分からずじまい。余計な火種にならないように『ドロップ率上昇』のスキルについてはギルドの皆には黙っておこう)


「・・・・一つくらい頂いちゃっても」


「だ、ダメですよ?ドロップした魔石はギルドに持ち帰るように響さんに言われてるんだから」


「唯火は自前の魔石持ってるから」


「私のは武器に使ってるだけで・・・・」


「利便性抜きにしても、女子的にこの輝きは心惹かれるものがあるじゃない?」


「・・・・まぁ、分かりますけど」






うん・・・・黙っておこう。


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