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マジックオーブの製造

 この工場から逃げ出そう。


 クリードの記憶を辿り、まず俺がやるべきだと思ったことがそれだ。だが、逃げ出すといっても何の準備もしなければ成功しない。そして、準備する前にはまず必要な情報を得なければならない。


 俺が捕らわれているこの工場は厳重な警備で守られている。もっとも、工場と食堂、それに自分の独房以外の様子は良く分からない。


 まず、アルスマンとハーケン以外に数名の監督係がいるのは分かっているが、それ以外にこの施設の警備に当たる奴が何人いるのか? どんな奴らなのか? という情報が欲しい。


 それに加え、この施設の見取り図も必要だ。どういうルートで行けば最も安全にこの施設を抜け出せるのかが分からなければ駄目だ。


 理想は、この工場の敷地外の様子も知りたいところだが、それは難しいだろう。


 「問題は、施設の警備と施設の図面をどうやって手に入れるかだが…… 気配を消すような魔法はストックにはないな。」


 魔道具を作っている連中にそれとなく聞けないか? とも考えたが、それはあまりにも怪しすぎる。これまで喋ったことが無い奴が急に話しかけてきて、警備の様子を聞こうとする? 間違いなく逃走を疑われる。


 だから、この作戦に人の手は借りれない。


 ではどうするか?


 「偵察用の小型のゴーレムでもあればいいんだが。 ハッ? 小型? 偵察?」


 そこまで考えて、ふと思ったのは、地球にいたときに良く触っていたモノの存在だ。


 「ドローンとか造れないかな。あれなら大きさは手のひらサイズだし、夜の闇の中では恐らく人から気づかれない。」


 勿論、ドローンなんてこの世界にはないから、作るとしたらゴーレムとして作るしかない。そして、ゴーレムを作る以上、避けて通れないものがマジックオーブだ。マジックオーブの原材料や製造方法は未だ不明。恐らく、一から作るには時間が掛かりすぎる。


 そこでふと思ったことがあった。


 それは、ゴーレムのマジックオーブを分割できないか? ということ。


 ゴーレムに搭載されているマジックオーブは、そのスペック全てを使っているわけではない。搭載されているデータの容量、動作に必要な処理能力から考えて、ものによっては50%以上が過剰スペックなほどのマジックオーブを搭載いているものもあるように思えた。


 そこで考え付いたのが錬金術APIの利用だ。


 錬金術APIが提供する機能の一つ、錬成は、対象の形状を変更することができる。その機能を使って1つのマジックオーブを二つに分割できないか?と考えた。


 そして、その目論みは何と上手くいった。


 二つに分割できた上に、元のマジックオーブも問題なくゴーレムを動かすのに使えた。さらに新たに得られたマジックオーブは中身が空の状態だった。


 一度成功できたら、同じことを繰り返せばいい。


 施設からの脱出に使えそうな、強力なゴーレムを除き、俺は片っ端から余剰なマジックオーブをかき集め、それを錬成して一つの大きなマジックオーブを作ることに成功した。


 大きさにしてバスケットボールを一回り大きくした程のサイズはある。


 「おおぉぉ…… 奇麗なもんだな。」


 煌々と輝くマジックオーブについつい見とれてしまう。だが、このままの大きさでは当然今造ろうとしているドローンゴーレムに搭載することはできない。


 大きすぎるし重すぎる。


 だから、このマジックオーブをドローンゴーレム用にまた分割していかなければならないのだが、ここからが問題だ。


 どの程度の大きさのマジックオーブであれば、ドローン用のオペレーティングシステムとその他もろもろの必要な機能を搭載できるのか? という問題だ。


 これには恐らく試行錯誤が必要だと考えていた。


 しかし、あまり長くは時間をかけられない。


 怪しい動きをしていたらいずれ感づかれるし、日々の重労働と粗末な食事で俺の体はとっくに悲鳴をあげている。


 だが、自らの目的をもって動くということの喜びを今の俺は感じていた。だから、苦しい状況にも関わらず思わず笑いがこみあげてくる。


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