マジック・オーブ
マジック・オーブに触れた俺の驚きと興奮は半端なかった。
まるでARのようにウィンドウ画面が開く。そこにはクルタ文字で書かれたコマンドメニューが表示され、アクセス者(つまり俺)の入力を待っている。
「なるほど、オペレーティング・システムに触れたくないのも理解できる。変な操作をしたらゴーレムがどんな動きをするのか責任が持てないからな。」
クルタ文字を理解できなければ何をどうしていいのかもわからないだろう。
とはいえ、クルタ文字を理解していても何をどうすれば良いのか分からない。なんせ、コマンドが分からない。
どこかにコマンドリファレンスなどないものか?と考えていた時に新たなウィンドウが開いた。そこにはコマンドリファレンスと記載されている。
「はて、頭で思っていたことが現実になるとは、もしやこのオペレーティング・システムは触れた者の思考を読むのか?」
だとすれば、かなり高度な技術が使われている。その分野においては地球の技術を超えているといってもいいだろう。
とはいえ、まずはコマンドリファレンスをパラパラと見始めた。
「まずは、マジック・オーブというのが何なのかを知りたいな。」
パソコンで言うなら、OSの種類、バージョン、あとは簡単なデバイス情報。CPUが何なのか、とか、メモリとハードディスクがどれくらい搭載されているのか、なんて情報は欲しいところだ。
そもそも、パソコンに照らし合わせて考えるんだったら、マジック・オーブというのは構成が可笑しい。
それ単体でPCの役割を果たしている? そう考えると、このマジック・オーブがデバイスで、中にはさらに細かい部品で構成されているのか?
うーん、分からん。
一度分解して中身を見てみたいという思いもあるが、ガラス玉のような形態なので、ねじを外せばパカッとカバーが外れるような物ではなさそうだし、元に戻せなかったらハーケンの奴に何をされるのか分かったものではない。
そんなことを考えながらコマンドリファレンスを眺めていると、デバイスステータスを見るコマンドがあることが分かった。
showDeviceStatus
ITっぽく書くとこんな感じの表現だな。
そのマニュアルにリンクがあり、リンクにはハードウェア・ソフトウェア構成に関する記載とあるではないか。
当然、そのリンクを開いてみる。
すると、新たなウィンドウ、というよりドキュメントが表示された。