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ヤガマ村

あるひ、俺はシーラに呼び止められた。


「グリード」

「どうした?」

「あのね…… 大丈夫だった……」

「? 何が大丈夫だったんだ?」

「だっ、だから! できてなかったの!」


ここまで言われてようやく俺は理解した。ゴブリンに襲われた彼女とこんな辺鄙な、もっと言えばゴブリンの集落の跡地で生活をしていた理由。


"ゴブリンの子供を身ごもっていたら殺してほしい"


あの日以来、彼女は常に不安な毎日を送っていたことだろう。俺と接しているときは努めて表情に出すことをしなかったが、ふとした瞬間につらい表情を見せる彼女を何度見てきたか知れない。


妊娠しているかどうかいつ分かるのかは彼女しか分からないわけだが、その結果がようやくわかったようだ。


結果は問題なし。


俺は安堵のため息をついた。俺だって自分と敵対する相手ならいざ知らず、できることなら人殺しなんてしたくない。


「よかったじゃないか! これでお前の集落まで行けるな。」

「うん!」


嬉しそうな表情を浮かべるシーラだが、勿論これで完全回復というわけではない。身体的な傷はもうないが、心のダメージは依然として大きく残っているに違いない。


だが、こんな時にどんな対応をすればよいのかさっぱり分からない俺は、無難な言葉をかけてやるくらいしかできなかった。


「グリード…… その、ありがとね。」

「? 何がだ?」

「ゴブリンから助けてくれたこと。この10日間、私の面倒を見てくれたこと。虎熊をやっつけてくれたこと。全部感謝してるわ。」

「ああ、そのことか。お礼はお前の住んでた集落に着いたらたっぷり請求するから覚悟しておいてくれ。」


こうして、俺達は10日間過ごしたこのログハウスを後にした。勿論、このログハウスは跡形もなく破壊した。あとあとまたゴブリンたちが住み着いても困る。惜しいとは思うが、まぁ、しょうがない。



俺とシーラはトリスターに乗ってシーラのいた集落を目指した。


「あなたってホント規格外よね…… 何この乗り物?」

「ああ、これな。トリスターっていうんだ。かっこいいだろ?」

「名前を聞いているんじゃないわ! こんな乗り物、村で見せたらそれだけで人だかりができるわよ。村に入る前に隠しなさいよね。」


シーラは俺の空間収納を知っているので、そこに隠せという話だ。勿論そうするに決まっている。


「その空間収納だって村では珍しいんだからね? 勿論、そういうものがあるということは知っているけど、かなり高価なものよ。」

「へぇ~、これ高価なものだったんだな。」

「それはそうよ。誰でも欲しいと思うでしょうね。それこそ、商人なんて大金出してでも欲しいはずよ。あなた、村についたら本当に気を付けてね?」

「へいへい」


確かに、俺が持つ魔道具やゴーレムなんてのは力づくでも奪いたいと思えるほど魅力的に見えるだろう。その点は俺も理解している。露見すれば寝ているところを襲撃されたり、毒を盛られたり、などなど、ありとあらゆる手段で奪おうとするだろうということは当然理解している。


だからこの10日間で俺の腕とペンダントに取り付けたマジックオーブにはそれなりの対策をしているつもりだが…… さて、どこまで通用するか。




シーラのいた集落は、飛行してから半日程度で到着した。


名前は、ヤガマ村。人口2000人程度の村だが、この周辺では割と大きい分類なのだそうだ。開拓村としてスタートしたこの村はまだまだ開拓途上ということもあり、シーラのようなハンターが多く滞在し、魔物達から村人を守っている。


必然的にハンターの数が多く、なんと100人くらいはこの村にいるというから驚きだ。


「そういえば、イルベンスの村もハンターが多いとか言ってたな。」


この世界に来て初めて滞在した村、イルベンス。そのことを思い出すと必然的にアルバ達が思い出された。


俺が関りを持ってしまったがために滅ぼされた村。やはり今でも思い出すと胸が苦しくなる。また人の住むところに行けば同じようなことが起きないか? とふと脳裏をかすめたが、あの時とは状況が異なる。


俺はもう追われる身ではない。


「さて、久しぶりの人の住む集落だ。楽しみだな!」




村の付近でトリスターから降りた俺たちは、トリスターを空間収納にしまい、村の中に入った。村には特に柵や防壁があるわけでもなく、また、門番の兵士がいるわけでもなく、簡単に中に入ることができた。


村に入るなり、いきなり村人がこちらを、正確にはシーラを見てびっくりした表情で話しかけてきた。


「おや、シーラかい? あんた、無事だったのか…… てっきりあんたは死んだものと村中で話になっていたんだ。」

「ええ…… でも、このグリードが助けてくれたの。」

「そうかそうか、無事で何よりだった。」

「それじゃあ、仲間のところに行きますので、これで。」

「ああ、それじゃあね。」


やはり、人口2000人程度の村だと情報が早い。いちハンターの生き死にが村人にまで広がるというのは俺にとっては意外だが、そういうものなのだろう。


どうやら、シーラはハンターギルドという、ハンターの仕事の受注や報酬支払などを行う施設に向かっているようだ。その施設はちょうど村の中央にあり、村の中では比較的立派な建物だ。石造りの3階建てで、1階が受付と仕事の受注、報酬支払となっており、さらにちょっとしたバーが併設されているらしい。


シーラの仲間がいるとしたらその場所なんだそうだ。


シーラのパーティーは4人パーティーなのだそうだ。前衛としてシーラとバルバドという男がいて、後衛としてアリスとマロンという女性がいる4人パーティー。リーダーはバルバドという男なのだそうだ。


なにそのハーレムパーティー…… と思ってしまったが、どうやらこの村のハンターの中でも飛ぶ鳥を落とすような勢いで成長している実力のあるパーティーらしい。


ハンターギルドのドアを勢いよく開けたシーラはバルバド達を探し、そしてバーのテーブルで椅子に座っている仲間たちを見つけた。


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