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虎熊の脅威

 凄まじい咆哮を聞き、つかの間の安穏とした気分が一気に吹き飛んだ。


 咄嗟に、外に待機させていたデヴァストとサーチャーの視覚映像を映し出すが、そこに現れていたのはまさかの虎熊らしき魔物。


 らしき(・・・)というのは、俺が虎熊を見たことがないからで、ただ、シーラが言っていた通り虎のような毛皮と熊のようなシルエットをしている。


 ただ…… 熊というには巨大すぎないか?


 小型トラックほどの大きさはある。俺の所有するどのゴーレムよりも巨大なんだが。


 俺は視覚映像をシーラでも見れるようにするために映像の設定を変更し、所有者以外でも映像が見れるようにした。


「うわぁ、これってゴーレムが見ているものを映し出しているってこと? すごいのね。」


「呑気なこと言っている場合か。これがお前の言っていた虎熊か?」


「うん、間違いないわね…… しかも最悪。こんな大きな虎熊初めて見たわ。」


「虎熊を見たことがあるんだったら話は早い。性能抜群の槍をくれてやったんだ、お前が行って倒してこいよ。」


「無茶言わないでよ! 見たことがあるというのは、ハンターが狩猟して死んだ虎熊だよ。出ていったところで、私なんて瞬殺だよ。」


 勿論、シーラを単独で行かせるなんて冗談に決まっている。


 俺は早速、デヴァストと殲鬼に射撃を命じる。

 射撃を命じた直後、主に殲鬼の魔弾の射撃が辺り一面に鳴り響いた。


 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ


 ゴブリン程度なら簡単に肉片に変えるほどの殺傷威力があり、丸太でもたちどころに木屑に変えてしまう威力がある。そんな弾が大量に虎熊に着弾する。


 が、どうやらこいつはこちらの想定の斜め上を行く化け物らしい。


「殲鬼の魔弾に耐えるとか…… 化け物かよ」

「あのゴーレムでも倒せなかったらどうなっちゃうの?」


 シーラが心配そうに俺の顔を覗き込む。


 「殲鬼とデヴァストでだめなら、残る手段は暗仁と黒影しかいないが、破壊力という点では殲鬼のほうが上だ。つまり打つ手がない……」


 「うそ……」


 打つ手がない、つまり死ぬしかない、ということだが、シーラにも伝わってくれて何よりだ。当然俺としてもそんな未来は望んでいないので戦況を見守りつつも何か打開策が無いかと考え始めた。


 一番簡単な方法は、戦力の投入。


 暗仁と黒影はまだ戦闘に参加していない。この2体を投入すればちょっとはこちらに有利に働くかもしれないが、そんな期待は簡単に裏切られる。


 虎熊の方を見ると、魔弾に傷つきながらも弾の貫通は許さず、それに耐えている。しかも、傷ついた個所が猛スピードで再生しているのが映像からも分かる。ゆっくりではあるがこちらへの歩みも止めていない。


 こんな相手に暗仁と黒影を追加投入して状況が変わるか? いや、無理だろう。


 殲鬼とデヴァストの攻撃で弱ったところを暗仁と黒影でとどめを刺す、なんて考えができるかと考えていたのだが、弱らせるというところまで至らない。これでは追加2体だしたところで、それこそ攻撃力では殲鬼に劣る2体を出したところで戦況は変わらないと考えられた。


 やがて、殲鬼に目を付けた虎熊が殲鬼めがけてスピードを上げて突っ込んできた。そして強烈なタックルを殲鬼に食らわせる。


 グギャーーン


 10メートルほど吹き飛ばされた殲鬼を見て俺の恐怖心はさらに高まった。


「おいおい…… 殲鬼だって重さ1トンはあるんだぞ? それを簡単に吹っ飛ばすとか、ありえないだろ!」


 幸い、殲鬼はまだ戦闘可能ではある。修復機能が破損個所を直していくが、少し時間がかかりそうだ。


「デヴァスト! アーチャー! 散開して敵を攻撃しろ!」


 あんな相手に一か所で固まっていたらそれこそ良い的だろう。命令を受けたデヴァストがお互い一定間隔の距離を開けつつ魔弾の散弾を放ち続ける。


 しかし、やはり散弾では威力が足りないのか、虎熊は豆鉄砲でも喰らったかのようにギロリとデヴァストを睨みつけ、各個撃破に向かうように思われた。


「落ち着け。何か方法はないか? もっと高威力のダメージを相手に与える方法は……」

「ちょっと、何を一人ぶつぶつ言ってるの?」

「お前もちょっと何か考えろ! あいつに弱点とかないのか?」

「戦ったことないから分からないよ……」


 シーラは俺の怒鳴り声に委縮してしまった。少し悪いと思ったがそんなことは後だ。こいつから生き残らなければ話にならない。


 それにしても、参った。高威力の魔法でもあればいいのだが、そんな気の利いたものをすぐに準備できるはずがない。


 高威力そうな魔法を探してみることはできるが、使い勝手の分かっていない魔法をいきなり実戦で投入するのは愚の骨頂。失敗したときのリスクが高すぎる。


 相手が確実にダメージを負い、かつ、使い勝手がある程度わかっている魔法……


 そう考えていると一つ思い当たるものがあった。


 幸いにも、家の中には戦闘に役立たないと思って待機させているスケルトンがいる。こいつがこの作戦の要だ。


 「フフッ…… フハハハハッ! これならいける! ちょっと待ってろよ、虎熊ぁ!」


 自然と笑いがこみあげてきた。

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