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つかの間の新居

 新たに作ったゴーレム「スケルトン」

 

 実は一つ面白い試みをしていた。それは学習機能というやつだ。

 

 AIにおける機械学習とういのとはちょっと違う。あれを扱うにはまだマジックオーブのデバイス的キャパシティが圧倒的に足りない。

 

 スケルトンの学習機能は非常に簡単。5体が相互に情報を共有し合い、特定の作業における精度とスピードを測り、最も優れたサンプルのやり方を真似る。

 

 例えば、切り倒した木の樹皮を剥ぐ作業を例に例えると、木の種類、長さ、幹の太さなどの基礎情報を整理したのちに実際に木の樹皮を剥がしにかかる。

 

 当然、仕上がりの品質もスピードもまちまちなわけだが、それらを全て記憶し、情報連携し、どのような木であればどの過去の結果が最も模範的かを選び、それに沿って作業を進める。

 

 途中、偶然にも良いレコードをたたき出せば皆がそれを真似する。

 

 いたってシンプルな仕組みだが、効果は絶大だった。

 

 勿論、日に日に劇的に作業が改善されるわけではないが、大きな失敗をするわけでもなく、じわりじわりと良いものが出来上がっていく。

 

 こうして、スケルトンが量産する建材をうまく使いながらわずか1日足らずで立派な家が出来上がった。

 

 家は家でもログハウスというやつだ。家の中は木の良い匂いがして落ち着くし、それに凄く暖かい。

 

 そして、水は空間収納から取り出さなければならないにせよ、ちゃんと風呂まで用意されている。欲を言えばヒノキ風呂なんて最高なんだが、何の木かは知らん。まっすぐとした木だったから、きっと杉かその仲間だろう。

 

「うわぁ、ゴーレムってなんでもできるのね。」

 

 シーラが目を丸くしながら喜んでいる。まぁ、俺もこの家の仕上がりにはかなり満足している。それにしても、その頑張ったゴーレムを作ったのは俺なんだがな。俺には何も誉め言葉はないのか?

 

「これなら快適に過ごせるだろ。ちゃんとお前の部屋と俺の部屋は分けてあるから安心しろ。」

 

「当然でしょ。」

 

「お前なぁ、強引だったとはいえ、一応俺はお前の主なんだが?」

 

 そして、当然奴隷契約を現時点で解除するつもりはない。俺は用心深い。

 

 今でも、当たり前だが、シーラは時折辛い表情を見せる。俺の前では気丈に明るく努めようとしているが、それでもまだまだ心の傷がいえるには時間がかかるだろう。俺もそういうセンシティブなところに触れるつもりはない。

 

「食料は非常食がまだあるし、ちゃんとした肉が食いたければその辺で狩ってくる。ああ、この辺ってどんな生き物が生息してるんだ?」

 

 そういえば、この森に来てゴブリン以外に遭遇していない。猪やら鹿といった野生の獲物はいるのだろうか。そもそも、ここは地球じゃないから、そういう一般的な野生の生き物がいるかどうかも知らないが。

 

「はぁ、ちゃんと野生の猪も鹿もいるわよ。中には虎熊という魔獣もいるけどね。虎熊と出会ったら逃げることをお勧めするわ。」

 

「虎熊?」

 

 はて、初めて聞く名前だ。当たり前か。ここの地理も生き物も良く知らん。

 

「虎のような毛皮を持った熊のことよ。強力な再生能力に加え、咆哮でちょっとした魔法程度ならかき消しちゃうの。しかも、足も相当早い。接近戦じゃあ、人間ではまず勝てないわ。」

 

「じゃあ、行くのやめようかな……」

 

 物騒極まりない。戦わなければならないにしても、初戦は万全の体制で臨みたい。森の中で少数のゴーレムだけ連れて行って、負けて殺されました、なんてオチは勘弁してもらいたい。

 

「ひよったわね」

 

 俺を見てにんまりと勝ち誇ったように笑うシーラが憎らしい。

 

 くそ

 

「俺は非力な非魔術師だからな。そういうのはお強い魔術師様の役目化と。」

 

「あなたのゴーレム見て、魔術師としての私のプライドは簡単に吹っ飛んだけどね。あんなの従えておいて非力とかないわ。」

 

 そんな馬鹿なやり取りをしているときだった。

 

「グウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」

 

 すさまじい咆哮が新居を激しく揺さぶった。

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