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閑話:エリーゼの悲劇

 エリーゼの放ったサン・フレアの魔法は約30分にわたり町を燃やし続けた。


 町は完全に壊滅状態で、住民は皆骨すらも粉々になっており、ちょっとした原型を探すことさえ不可能。さらに、建物も熱で溶岩と化しており、町だった場所は溶岩の噴火口のようにドロドロにとけた溶岩が蠢いていた。


 クリムゾン・フレアという広範囲殲滅魔法を禁術に指定されたエリーゼが編み出した魔法、サン・フレアは、クリムゾンフレアよりも効果範囲を狭めるものの、熱反射魔法と組み合わせることで魔法効果範囲内の威力はむしろ向上されているという、まさに極大魔法の極致に至る大魔法であり、これまでも任務のたびにいくつか村や町を地図上から消滅させてきたというのはまさにこの魔法だった。

 

 エリーゼはイルベンスの町だった場所をイルベンスの城壁から見下ろしていた。そして、自分の魔法の威力に改めてほれぼれするのだった。

 

 貴族に生まれ、強力な魔法センスを持ち、そしてこの美貌。

 

 そのために退屈と思う時もあるけれど、なんと素晴らしい人生だろうか。

 

 この魔法は自分に優越感を与えてくれる素晴らしい天からの贈物。

 

 そう信じて疑わない。

 

 

 「そういえば、回収したゴーレムは大丈夫かしら? あれは大事に保管しておかないとね。」

 

 逃亡者の捕獲を諦めるに至った、新種のゴーレムの発見。これさえあれば町一つ滅ぼしたところで何のお咎めもないだろうが、逆に言えばこのゴーレムが無ければ、ただ町一つを滅ぼした大罪人でしかない。

 

 もっとも、大罪人といっても、エリーゼを罰せられるものなどこの国にはあまりいないのだが、だとしても自分の分が悪くなるのは間違いない。

 

 「こちらにあります。」

 

 城壁の近くに張ったテントの中に大事に保管されている新種のゴーレムを見てエリーゼは満足する。

 

 「合計10体か。まぁ、これだけあれば研究するにも十分なかずと言えそうね。よくやったわ。」

 「はっ!」

 

 だが、次の瞬間エリーゼの思わぬ出来事が起こった。

 

 「えっ?」

 

 突如眩暈を起こし、その場に倒れこむエリーゼ。眩暈と合わせて頭痛と吐き気が起きる。

 

 「いっ…… 一体…… な、にがっ……」

 

 とにかく、このテントにいるのは危ない。そう感じて必死にテントから出ようとするも体の自由もきかない。それでも何とかテントの入口までたどり着いたところで事態は新たな局面を迎える。

 

 

 ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

 

 なんと、新型ゴーレムが爆発しだしたのである。

 

 「アッ、アアアッ…… なんてこと……うぐっ、がはっ!?」

 

 エリーゼが不幸だったこととしてはその爆発に対して顔を向けてしまったことだろうか。高温の爆発物と合わせ、様々な破片がエリーゼの顔を傷つける。

 

 頭皮、おでこ、ホッペ、眉間、ありとあらゆる場所を破片がかすめ、突き刺さり、途端にエリーゼの顔は血まみれになり、爆風による打ち身と打撲も重なってエリーゼは意識を失った。


 いくら高位の魔術師としても、無警戒の場で攻撃を受ければこのように脆い。

 

 

 

 

 種明かしをすると、サーチャー内部にはグリードとの通信が途絶えて20分経過すると爆発するようにプログラミングされていた。もっと正確に言えば、爆発する直前まで錬金術により空気中の酸素と二酸化炭素を一酸化炭素に物質変換し続ける。

 

 エリーゼが眩暈がしたのは一酸化炭素中毒によるものだ。

 

 本来の狙いとしては、一酸化炭素中毒にして相手の動きを鈍らせ、その後起こる爆発でダメージを与えるというものだが、見事にエリーゼはグリードの罠にかかったというわけだ。

 

 もっとも、サーチャーに搭載されているマジックオーブは小さいため爆発力も大したものではないが、それでも連続して10体ものサーチャーを捕獲し、それを一か所に置いてしまったのがあだになった。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 テントに設置されたベッドで目を覚ましたエリーゼは、自分の頭と顔に巻きつけられた包帯を見て愕然とする。目と口以外、包帯が巻かれていない場所はなく、鏡に映った自分の姿はまるで化物のよう。

 

 「なっ、なんなの? これは……」

 

 恐る恐る、包帯を外していく。そして次第に外すスピードは上がり、一気に包帯を全て取り外した。

 

 そこに映し出された自分の顔は自分の見知った顔ではなかった。

 

 爆発物により飛び散った破片で皮はおろか肉にまで達したその傷跡はひどく、恐らく回復魔法で回復させたのだろうが跡が残っていた。どころか、まだ完全に傷が塞ぎ切っておらず、ところどころ肉が見えた状態。

 

 そんな状態だから、サラミスの誉めてくれたサラサラの髪は爆風で焼け縮れ、傷を負った個所は治療のために剃られている。マシュマロのようなきめ細かくやわらかな肌はどこもかしこも傷跡が残り、ジャガイモのようにくぼみができている。

 

 「アッ、アアッ…… アアアアアッ??」

 

 あまりのショックにエリーゼは動機が激しくなり、気を失ってしまった。

 

 

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