ゴーレム・メーカー
どうやら、この世界は地球とは異なる技術で成り立っているようだ。ハーケンの後を追いながらクリードの記憶を辿る。
クリードの職業であるゴーレム・メーカーとは、言葉そのままの意味で、ゴーレムを作る人だ。
ゴーレムというのは、魔術の力で動く石や木でできた人形のことのようだ。
ふと、地球で言うところのロボット的な奴か?と思ったが、あながち間違いじゃなさそうだ。ロボットが電気を動力に動くのと同じく、ゴーレムは魔力を動力に動く。
動作制御は複雑な魔術式で構成されたオペレーティング・システムで行われているようだ。もっとも、そのオペレーティング・システムは古代の魔法文明で扱われたクルタ文字で書かれており、この時代ではその文字を理解している者はいないらしい。だから、古代遺跡から出土するゴーレムをメンテナンスして動く状態にすることが、ゴーレム・メーカーという仕事のようだ。
それって、作ってるわけじゃなくてメンテナンスしてるだけじゃね? と突っ込みたくなった。
結構な知識・技術が求められそうな職業だが、どうやら待遇はイマイチみたいだな。そしてその理由も分かった。
魔術師絶対主義
古代文明が残した魔術はマジック・オーブという宝玉に記録された状態で遺跡から出土される事が多い。そして、そのマジック・オーブに魔力を流し込めば魔法が発動する。魔力を流し込める者、すなわち、魔力を持ったものは魔術師として重宝されるというわけだ。逆に、魔力を持たない人間は人扱いされないとか。「平家にあらずんば人にあらず」という有名な言葉を思い出してしまった。
しかも最悪なことに、クリードは魔力持ちではない。さらに魔力持ちは遺伝する。つまり、俺に子供ができたとしても、その子供は魔力持ちではない。
「はぁ、詰んだ」
思わずボソッとつぶやいてしまった。
「あぁ? なんか言ったか?」
「あ、いいえ、何でもありません。」
ぎろりと睨みつけてくるハーケンに慌ててごまかす。
さて、ゴーレム・メーカーに話を戻すと、ゴーレムというのは主に軍事兵器として用いられている。まぁ、出土するのはそう多くないみたいだからな。だから、ここはいわば軍事工場で、俺は兵器製造技術者というわけか。まさか人殺しの道具を造らされる羽目になるとは思わなかった。
もっとも、何の愛着もないこの世界の人間がゴーレムで死のうが何とも思わないが。
そのゴーレムの力も中々の物のようだ。動きははっきり言って愚鈍。だが、その高い攻撃力と耐久性は、非魔術師にとっては脅威そのもの。ゴーレムのパンチを喰らえば、非魔術師は1発で戦闘不能になるみたいだな。
そんな知識を理解しながら歩くこと10分。
ついに俺は職場であるゴーレム製造工場に到着した。