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錬金術と新たなゴーレム

 錬金魔術APIには物質を扱う上で便利な魔法が多く登録されているが、その中でもじっくり腰を据えて取り組みたいと思っていた魔法があった。


 それは元素変換という魔法。


 これぞまさしく錬金術というもので、その名の通り、例えば石を金に変えることだってできる。ただし、その魔力消費も半端ない。流石に町の外を移動していた時はいざという時のことを考えてパワーポットの魔力を全て消費するなんて事は考えられなかった。しかし、今は比較的安全な場所にいるからこそ、魔力消費も無視して元素返還という魔法に取り掛かることができる。


 ちなみに、パワーポットはどういう原理かは知らないが、消費した魔力は時間が経過すれば勝手に回復する。恐らく、大気中に魔力ないし魔力に変換しうるものがあるのだろう。


 パワーポットの原理もそのうち解き明かさなければならないが、今はまず元素返還魔法を使いこなすということだ。


 何故元素返還魔法を使ってみようしているかといえば、ゴーレムを作る上ではやはり石材よりも金属製のゴーレムが加工のしやすさや耐久性の観点から優れているからだ。それに、パワーポットから供給される魔力を体中に運ぶためのパワーケーブルも鉄や銅で作られている。


 そういうわけで、新たなゴーレムを作るにしても、まずは鉄や銅といった素材を得るところから始めなければならず、それらの素材を得るために元素返還魔法を活用しようというわけだ。


 元素返還魔法は、マジックオーブから見て相対座標を指定し、そこから半径Xメートルの球体内にある物質を指定した元素に変換する魔法。


 この時点で、魔法に渡すパラメータは相対座標情報と、球体の半径、変換希望の元素情報だ。


 ただ、これだけだと、元素の粒子状の物質ができるだけで加工ができない。というわけで、出来上がった元素を結合させ一定の大きさの結晶体になるように錬成魔法を組み合わせるというオリジナルの魔術式を構築する。


 まぁ、いきなり失敗ゼロで上手くいくことはなく……


 指定座標や球体の半径の情報を間違えて、危うく自分も元素変換されてしまいそうになったり、床に大きな穴が空いたり、という失敗を乗り越えつつ、奮闘すること半日――――


 「やっと鉄ができたぁ……」


 そこには努力の結晶である砂鉄の山が漸く姿を表した。ちなみに、元素返還の魔法に食わせる物質は地下室を作る際に掘って生じた土。それをせっせと鉄に変えていく。


 ある程度鉄ができたら今度はパーツ作りだ。


 パーツ作りは錬成魔法を使って指定した形にしていく。これはサーチャーやトリスターを作る際にやってきたことだからあまり難しいことはない。


 飯の時間とシーナに勉強を教える以外は全てゴーレム作成に明け暮れること1週間。


 出来上がったのは真っ白な純白のゴーレム。


 身長は2メートルで、目は碧眼。頭部は軍隊の丸いヘルメットのように見事な曲線を描き、背中には酸素ボンベのようなものを二つ背負っている。


 そして、その最大の特徴は何といっても両腕に装着された計4つのガトリングガン。つまり、左右2丁ずつなのだが、1丁につき6銃身のガトリング砲で、分間3000発の弾を撃つことができる。つまり、左右併せれば分間12000発の弾をお見舞いすることが可能という恐ろしいゴーレム。


 ただし、発射する弾は「バレット」と呼ばれる魔弾で、実際の威力は地球のガトリングガンより落ちるだろう。こればっかりはガトリングガンの構造を良く知らない上に弾を何千何万発も作る環境と時間がないので仕方ない。さらに言えば、弾の消費量があまりにも多すぎて、弾を持ちながらの戦闘などできやしない。


 そんな苦肉の策で考案したガトリングガンだが、サーチャーが射出する釘よりはかなり強力だ。それこそ、恐らく生身の人間が受ければ肉片も残らないだろう程に。


 ちなみに、「バレット」という魔弾を大量に放つ以上、このゴーレムは大量の魔力を消費する。それを可能としているのは背中に取り付けられた大きな二つの酸素ボンベのようなパワーポットで、施設のゴーレムに取り付けられたパワーポットの実に6個分。


 それでも、4つのガトリングガンを最大射出できる時間はおよそ30分程度しか持たない。


 それに、こいつのオペレーティング・システムは暗仁、黒影のものをベースにしているとはいえ、重力制御魔法などのスペックを多く消費する魔法は取り外してある。したがって、ほぼ固定砲台として弾を撃ち続けるしかない、そんな仕様だ。


 とにかく、大量破壊兵器といって差し支えない物騒なゴーレムなわけだが、何故こんな物騒なゴーレムを作ったかといえば――――


 「このゴーレムで鳥の魔物を殺せればいいんだがなぁ……」


 アルバ達から聞いた、山にいる空飛ぶ魔物、タイタスフェザー対策である。


 正直、タイタスフェザーの実力を知らないので、相手が突っ込んできたときに弾幕を張って返り討ちにできないか?と考えた結果がこのゴーレムだ。


 問題は、こいつの弾がタイタスフェザーに効くかどうか。まぁ、こいつの弾が効かないということは、その辺の石よりも固いということを意味しているので、あまり想像したくない。


 いずれにせよ、俺はちょっとした感動と興奮でどうにかなりそうだった。


 初めて作る人型ゴーレム。


 これまでも、サーチャーやトリスターといったドローンをベースにしたゴーレムを作ってきたが、実は人型ゴーレムに比べれば作成難易度はあまり高くない。


 なので、思わずゴーレムにほおずりしてしまう。


 「圧倒的火力で敵を殲滅させる破壊の象徴…… そうだな、お前は今日から『殲鬼』だ。」


 こうして、俺に新たな戦力が加わった。


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