転生というよりよみがえり?
ざっぱーん
「うっ?」
俺は何か冷たいものをかけられたらしい。それで意識が戻った。
あの暗い世界での話が本当なら、俺は確か転生したはず。だが、可笑しいことに目の前にある俺の手は随分と大きい。赤子の手じゃない。
もしかして転生って、こっちの世界の誰かに成り代わることか?と思ったが、今はそれどころじゃなかった。
「うぐっ?」
凄まじい頭痛に呻き声が出てしまう。何かが頭のなかに入り込んでくる。
これは……誰かの記憶?
凄まじいスピードで色んな映像、音声、それにこれは……感情? そういったものが俺の頭の中に流れ込んでいく。正直言って苦しい。それを受け止めるだけで精一杯で、とても中身を細かく確認する余力は無かった。
「ぐがぁぁぁぁ? いっ、痛いっ、痛いぃぃぃぃ!」
頭が割れそうになるほど痛い。何かが元々の俺と融合するかのように入り込み、混ざり合い、組み合わさっていく。
うっすらと……ではあるが、理解した。
俺は、この体の元の持ち主、クリード・ゲシュタルトと入れ替わったのだ、ということ。クリード・ゲシュタルトは俺が入り込む前に他界した。
理由は分かった。過労により精神を病んでの自殺。
どこの世界も似たり寄ったりだな。まさか異世界に来てまで過労が原因で死ぬ奴がいるなんて俺はガッカリだ。
そして、クリード・ゲシュタルトが自殺したのちに、その魂?が抜けたタイミングで俺の魂がこの体に入り込んだ。
そう考えると、まだ苦しくはあるが、先ほどの激しい頭痛はこの体に俺の魂が同化するための通過儀礼的な痛みだったのかもしれない。まだ全部呑み込めていないが、クリード・ゲシュタルトの記憶もあるようだ。
そんなことを考えながら状況を整理していると、俺の頭上から不遜な声が聞こえてきた。
「ふんっ、焦らせやがって。漸くお目覚めか?」
壮年の小太りの男。名はなんと言ったか? 確かアルスマンとか言ったな。クリードの職場の上司だ。
それともう一人
「ふぅ、危うくこの職場からまた自殺者を出すところだったぜ。」
こいつもクリードの上司に当たる男。年齢はクリードと同じ20歳。名はハーケン。
クリードの記憶が俺に警笛を鳴らす。それと同時に過去にあった辛い記憶が走馬燈のように頭をよぎり、俺に過去の出来事を伝えてくる。
なるほど。無理な仕事の押し付けに体罰か。
一言で言えばそれだけなのだが、中々エグイことをする。何日も徹夜しても終わらない程の仕事をクリードにやらせ、自分たちは遊び惚けていたわけか。そして、生産性が下がれば暴力を振るう。確かに俺の体にはそこら中にアザがあった。
「おい、クリード。目が覚めたらさっさと仕事に戻れ。 お前が寝ていたせいで仕事が止まってるんだよ。 さっさと動け。ああ、それとハーケン、クリードがまた変なことやらかさないか見張ってろよ。」
「チッ、仕方ねーな。 おい、クリードさっさと行け。」
「……」
俺は言われた通り、立ち上がるとハーケンの後を追って部屋を出る。まだ状況が追いつかない。クリードの仕事が何なのかは記憶として認識はしたが、正直言って俺の想像を超えていた。流石は異世界と言ったところか。
クリードは、ゴーレム・メーカーという職業だった。