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魔道具工房の制圧

静まり返る工房。

 その視線は漆黒のゴーレムの足元に集中していた。


 ピクリ


 ピクリ


 まるで生きたまま解剖されたカエルのように生物学的な反射のような動きを見せるマオは、次第にその動きも緩慢なものとなっていき……


 やがて完全に動きを止めた。


 「キッ、きさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 仲間を殺されたダインという男の怒声がその沈黙を破った。


 そんなダインという男を見る俺は冷めたものだ。ついさっきまで理性的に振舞い、この施設の中でもトップクラスの手練れだと、敵ながら高く評価していたのだが、仲間を一人殺されればこれか。


 というかだ。


 むしろ怒りをこちらに向けられて心底お門違いと言いたい。


 「仲間が殺されて怒り心中か。」


 「卑しい奴隷くずれの癖に、マオを殺しおったな? 許さんぞっ!」


 「アホかと。俺を拉致して強制的に働かせておきながら、自分たちが害を受けると「許さん」だと? こういうのを自業自得と言うんだよ。」


 「クッ」


 正論を言われ、言葉を失ったのか、ダインは押し黙るも、その眼は今にも俺にとびかかって来そうなものだった。


 「しかも、この男は俺を殺しに向かって来たんだろ? 当然返り討ちにするさ。 それとも何か? 俺は一切抵抗することなく死なねばならないと? どんな理屈だよ。アホかと。」


 「ぐぬっ」


 「それよりもいいのか? 足が止まっているぞ。」


 その言葉を聞いてダインは「ハッ?」と気づくも、もう遅い。元々不利な戦闘なのに仲間が殺されて自分を見失うなんて三流もいいところだ。


 こちらも時間は惜しい。さっさと終わらせてもらおう。


 俺はサーチャーに攻撃の指示を出す。


 既に、この会話の最中、サーチャー達はゆっくりと悟られないように移動を済ませており、ダインを取り囲むように配置させてある。これから突っ込んできてもゴーレム2体が俺への道を阻み、止まったままならサーチャーの釘の餌食だ。


 ドスッ


 「ぐふっ?」


 ダインの背中に釘が刺さる。恐らく肺に到達していることだろう。


 ドスッ、ドスッ


 「ゴバッ」


 今度は胸と脇腹だ。恐らく、これでもう戦闘はおろか生きていられるのもあと数刻だろう。ダインは体勢を崩し、その場に倒れこんだ。


 そして、ダインの戦闘不能により魔道具工房の制圧は完了だ。まだこの場にいる20名の同類達がまさかこちらに歯向かってくることなどあるはずもなく(いや、歯向かってくる想定もしているが)、この場でこれ以上の戦闘は恐らくないだろう。




 俺はダインから目を離し、次の目的に焦点を当てる。


 そう、もう一つの目的。魔道具のマジック・オーブの回収だ。


 工房を見渡せば、あるわあるわ。マジック・オーブという宝の山。


 実はまだ魔道具に組み込まれているマジック・オーブは調べたことがない。推測としては、特定の魔術を使うためだけに特化した、簡素化された制御プログラムと術そのもののAPIが組み込まれているに違いない、と考えていた。


 その両方に興味があるが、どちらかといえばまだ自分が知らないAPIのほうが断然興味がある。この工房内にあるマジック・オーブを全て調べつくせば、さらに面白い発見があるだろうし、今後の生活にもきっと役に立つ。


 とはいえ、これだけの量を一人でかき集めるのは大変だから、是非同類達に強力してもらうことにする。


 「すまない、是非強力してもらいたいのだが、良いだろうか?」


 「……」


 紳士的に協力を要請したつもりだったが、反応がない。皆の顔を見れば、俺を恐れているのは明らかだった。


 フゥ、とため息をつく。


 まぁ、無理はないか。ゴーレムという得体の知れない兵器で、自分たちを強制的に働かせていた憎むべき相手とはいえ、人間3人を殺した人物だ。「もしかしたら自分たちの殺されるのでは?」と考えるものもいるだろう。


 だが、「貴方たちに危害は加えません。私を信じて。」なんてことを言っても信じてくれるはずはないし、そもそも時間がない。


 なので、手っ取り早く協力してもらえるよう、利というエサをちらつかせることにする。


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