嘉利田工務店 栄光のゴールド免許
家族でやっている水回りの工事の会社、一工事終えて帰るところでトラブル発生
俺は嘉利田伸造。
親父と家内と3人で水回りの工事の会社をやっている。
親父はもうすぐ80歳で、そろそろ限界が近い。
家内はけっこう器用で、重要な社員の一名だ。
息子が1人いるのだが、海外で働いている。
今は午前中に一工事終えて帰るところだ。
工事はテンポ良く終わったのだが、帰りの道路が渋滞だ。
ここは片側1車線で抜け道がないのでいつも混んでいる。
ようやく交差点のところまできた。
「あっしまった。今いっちゃえば良かったな。」
さすがに親父も年なので、あまり無理な運転はしない。
信号待ちの先頭になってしまった。
「今日午後は2件のはずだったんだけど、今井さんからさっき電話があって、
漏れだしたみたいで急いで視てくれっていう話なんで、割り込みで先にやる事になった。」
「あの人いつもそう言うのよ。急いでやる必要ないわ。ねえ父さん。ねえ父さん。」(あれっ?)
「ちょっとアンタ。父さんなんか変よ。」
「えっ、父さん大丈夫か。」 肩に手をかけると
ガクッ 父さんの首が倒れた
「おい、父さん。居眠りか。おい!」
父さんの反応は無い。
キゼツしたのか。死んだのか。とにかく119番だ。
ブッブー! 「何やってんだ。早く行け!」
いつのまにか信号が変わっていて、後続車は大クレームだ。
「アンタ、ちょっと代りに運転して車どけなさいよ。免許持ってるんでしょ。」
「えっ、オマエ運転できないか。」
「あたしは免許持ってないわ。アンタ持ってるんでしょ。」
「免許はあるけど、もう20年以上運転してないよ。
無事故でゴールド免許なんだ。」
「じゃあ大丈夫よ。ちょっと動かすだけなんだから。
ちょっと父さんにどいてもらって。」
2人がかりで父さんを隣の座席にずらす
(よいしょっと)代りに運転席に
「あれっ、これオートマなんだ。
俺、オートマなんて運転したことないよ。」
「何言ってるのよ。オートマなんてだれでも運転できるわよ。」
ブッブー! 「いいかげんにしろ!バカヤロー!早く行け!」
家内が窓から後続車に笑顔で叫ぶ
「すいません。エンジンが調子悪くて。すぐ行きますから。(アンタとにかく速いこと交差点から出るのよ)」
「いくぞ」 ウィィィーン
「ちょっとアンタ、なにバックすんのよ。」
「あれーっ、止まんねー」 ウィィィーン
ガシャ! (追突)「止まった~」
「アンタ、どーすんのよ^交通事故よ!」
後ろの車の運転手がやってきた
「別にへこみもキズもないからいいよ。早いとこ出してくれ。」
「すいません。スグ行きますから。おい行くぞっ」
「アンタ、きをつけてよ^」 ウィィィーン
「こんどは前にいったな。」
「いいけどアンタ、赤信号よ、ちょっとどーすんのよ」
「止まんねー!」(左右からの車の流れに突っ込んだ)
バゥゥゥーン
ビュュューん
ぶわゥゥゥーン
「ひえー、すり抜けた。ラッキーだったな。」
「はーもー、とりあえず止めてよ。」
「いや、こんなとこじゃ車が多くて止められないよ。
どこかワキ道に入って止めよう。」
「その左っかわに見えてる道でいいわ。曲がって止めて。」 (左折)
曲がるとスグに正面から車が突っ込んできた
黒い大型の外車だ
「ブレーキよ!」
「あーッ、もー間に合わない、だめだ―!」
ビゥゥゥーン ドスドスガ―ッ
「やったすり抜けた~。5ミリ位しかなかったな。」
「あんなのがショッチュウ来るんじゃ避けきれないわ。」
「このへんで止めとくか。なるべく左によせとこう。」
「ちょっとアンタ。前からミニパトがくるわよ。
こんなとこ止めると、駐車違反とられるわ。」
「まだ乗ってるから大丈夫だよ。笑顔でいくんだ。」 2人で”にっっ”
何事もなくすれ違う、かと思ったら、止まって窓を開けてきた
「もしもし、ここは一方通行ですよ。気をつけてください。」
「あっ、すいませんドーモ」 ミニパト通過
「ちょっと、ここに止めておくのは無理だな。」
「道沿いにパーキングがあるんじゃないの。
最近、空き地はすぐパーキングにするからきっとあるわよ。」
「一方通行、逆走じゃないか。」
「今、ミニパト行ったばかりだからスグには来ないわ。大丈夫よ。」
「まあ行ってみるか。」 ウィィィーン
「ちょっとアンタ、前から大きなクレーン車が来たわ。
これじゃターミネーター状態よ。
どこでもいいから路肩によけて。」
「そんなこと言ってもよける所なんて無いよ。」 ウィィィーン
「なんで加速するのよ。正面衝突したら木っ端みじんよ。」
「うわー!」
路肩に無理やり乗り上げて、電柱に激突して停止。
バウゥゥゥーン クレーン車回避
でも電柱が曲がってしまった。
「大丈夫?動く?」
「ちょっとバンパーがへこんだけど、大丈夫そうだ。
人をはねないで良かった。
このままではいられないから動かすぞ。」 ウィィィーン
「あっ良かった。その先にパーキングがあるじゃない。」
「よし、今日はそこに止めていこう。」
加速して急カーブしてパーキングに突っ込む
キーッ!ドン 駐車してある車に激突して停止
「あーっ、しまった、どうしよう。すげー高そうな外車だ。
扉がまがっちゃったよ。」
「大丈夫よ、アンタ。高級外車のデザインなのよ、きっと。」
「でも片側だけ曲がってるよ。」
「高級スポーツカーだから普通と違うのよ。」
「そうか。イタリア製かな。さすがに発想が奇抜だな。」
「それより早く帰りましょう。
父さんを診てもらわないといけなかったわ。
119番したほうがいいかしら。」
「う~ん、こんな所じゃな。
父さんの具合も分からないし。。。
息はあるな。
父さん、おい、父さん^」
親父さんを揺さぶると、何事もないように、普通に目をさまして、動き出した。
「おう、オマエどうしたんだ。ん~ん、オレ寝てたのか。
しまった、こんな時間か。急がないとな。
あれっ、オマエ最近また運転するのか。」
「そういう訳じゃないけど、俺も運転の練習しとかないとと思ってね。」