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デットヒート  作者: 長谷川ラジオ
1/15

エアコン運びの途中

エアコンを手持ちで列車で届けるが、途中でおなかがすいててんぷらそばを食べることに


友達に頼まれて買ったばかりのエアコンを地元まで届けることになった。

地方の電気屋で買った方が安いってこともあるんだな。

新品なのに、交通費を含めて考えてもまだ安い。

型落ちなのかもしれないが、最新型との違いはボタンの色くらいだ。

普通に使うには全然問題なさそうだ。

あいついい買い物したな。


友達はバス停までは送ってくれたが、そこからは俺だけだ。

あずかったエアコンをだきかかえるようにして、バスの座席に座った。

駅までは25分くらいだ。

エアコンもってるから気をつけないとな。。。 。 。


いけない、うとうとしてしまった。

商店街を走っている。もうほとんど駅の近くまで来たようだ。


「駅前北口です。終点です。皆様お降りください。」

とりあえず駅までは無事来られたようだ。

バスをおりて駅舎に入っていき階段を上がる。

いなかにしては大きい駅だ。

窓口では、ぜったいエアコンをはなさないように切符を買った。

列車は2番ホームらしいな。

階段を下りていく。

しかし地元でないのでどうも勝手が分からない。

まだ頼まれてちょっとしかたってないのにエアコンが重い。


ホームで列車を待つと、10分おきくらいに列車が入ってくる。

いろんな行き先の列車が来るが、乗っていいかがわからない。

ぐずぐずしていると、扉がしまってしまい、列車は発車してしまう。

もう何本も行ってしまった。

念のため、行き先の表示を見直すと、1番線にも2番線にも目的の駅は入っている。

方角はあっているみたいだが、反対のホームに来る列車でも、目的地に行かれないこともないようだ。

でもこっちのホームで基本的にはあってるみたいだ。

迷っているうちに、ずいぶん時間がたってしまった。

なんだかおなかもすいてきた

たしか階段を上がると立ち食いそばやがあったはずだ。

そこに行ってみよう。


列車はいったんあきらめて、そばを食うことにする。

階段を急ぎ足でグイグイ上がる。エアコンの重みもこういう時はたいして感じない。

上がってちょっと行ったところにそばやがあった。やった、なんとなく覚えていたのは当たってた。

そばやでは、天ぷらがあがったばかりで、今ならいろんなのがある。

あゆやでかいえび、はぜや野菜、ご当地の名物、うまそうなものばかりだ!


となりの人が俺を押しのけてとっとと注文する。

「そこのえび3匹と野菜のセットね。あったかいそばで。」

種類がありすぎて、なにを注文していいものか分からない。

注文の仕方も、どう言っていいものか、何だかここのテンポがつかめない。

ぐずぐずしていると、どんどん売れてしまう。

しかし、あやしいやつが近づいてくるし、落ち着いて食べられない。

あいつさっきから俺のエアコンずっと見ているぞ。

エアコンをひもでぐるぐるまきにして体にまきつけて&天ぷらを注文しようとするが、天ぷらはあっという間に売れてしまい、もう残りわずかだ。

「あゆとえび、野菜のセットをください。あったかいそばで。」

「あいよ」」

お金を払おうとして、さいふを取り出したら、さしこみの絵が入っていた。

あゆやえび、野菜の絵だ。あいつが入れたらしい。

『これが名産なので、駅などで食べるといいよ』と書いてある。

「なんだ。絵で描いてあるじゃないか。かわいいやつだな。残りすくないし、おまけしとくよ。」


やった、なんだかおまけしてもらえそうだ。

しかし、まわりにいる人はみんな怪しく見えるし落ち着いて食べられない。

俺がえび天を夢中になって食ってるスキを見て、絶対にあの後ろの男がひもをナイフで切って、エアコンをさっと持っていくに違いない。

いや、俺が野菜天のうまさに感動しているところを見て、となりでそばをほとんど食い終わっているやつが、すっとエアコンを持ち去るかもしれない。

いやいや、もっと遠くから見てるやつが、かっぱらいのプロなのかもしれない、、、


とにかく、もっとしっかり体に巻きつけるしかなさそうだ。

でもこんなに体にぐるぐる巻きにしていると、かえってシロートっぽくて、狙われるんじゃないだろうか。


「兄さん、せっかくあげたてでいいとこなのに、そんなことしてたら冷めちゃうぜ。」

「すいません。早いとこ食わないと!

 うまいっ!く~っ!やっぱ名産のえびはうまい。ぜんぜん違う!

 あいつはこんなのをショッチュウ食ってるのか。うらやましいな。

 あゆもうまい。ここは川の魚もうまいんだな。

 う~ん、ぜんぜん違う!同じ魚と思えないな。

 あったかい野菜天も最高だ。

 玉ねぎも人参も野菜自身が新鮮だから、天ぷらが活きてるな。

 いけねえ。そばも食わないと。

 そばも太メン固めで俺好みだ。うまいっ

 つゆもいいじゃないか。何杯でもいけそうだな。

 すいません、天ぷらまだある?

 天ぷらもそばも全部もう一杯!

 くう~っ、うめー!」

 予想はしていたけど、やっぱり、天ぷらそばに夢中になってしまった


「う~ん、サイコーうまかった。

 おやじ、ごちそうさま。

 さて行くか、よいしょっと。

 あれっ?なんか軽くなってないか。

 そんなはずはないや。

 そばを食って力もついたんだろう。

 もういっかい、よいしょっと、あれ?

 やっぱり、妙に軽い感じがするな。

 でもエアコンはしっかり体にゆわいてあるし。

 おかしいな。箱だけみたいに軽い。

 そんなはずはない、箱の中には確かに、あれ?

 なんにも無い」


その瞬間に、すーっと血がひけて、ひっくりかえりそうになる


「からっぽだ!

 やっぱり、おれが天そばに夢中になってるうちに、だれかがエアコンを盗んだんだ!

 チクショ―、分かってたのに。

 なんてこった。

 今ならまだ盗んだやつを見つけられるかな。

 そんなに時間はたってない、もしかするとまだ駅を出てないかもしれないぞ。

 ほかの列車に乗って逃げるかな。

 しかし、かなりの荷物だし、あんなの持ってたら目立つから、

 列車に乗って逃げようとはしないだろう。

 この駅でおろしてしまうと考えて良さそうだ。」


空き箱を抱えながら、駅から飛び出した。

重いものを持っているからそんなに遠くには行けないはずだ。

まだ駅前通りを歩いているか、バス乗り場の辺りにいるんじゃないか。

しかし見渡す限りそんなやつはいない。

地元に詳しいやつで、どこかの店に逃げ込んだのか?

そうされたらお手上げだ。

いや待て。地元の人といえどあんなもの持っていたら不自然だろう。

絶対にまだその辺をうろついているはずだ。


真っ赤になってドタバタ探し回っていると、そこから見えるホームの上に

あっ!エアコン持ってるやつが今来た列車に乗り込もうとしている

この辺は停車時間が長いから走ればまだ間に合うぞ!

大慌てで駅へ戻り、列車に飛び込んだ。

ガラッ扉がしまる。やった、ぎりぎり間に合った!

あのやろうが乗ったのは1,2両後ろだ。

ハヤアシで車内を後ろに向かう。


あった!エアコンだ。

棚の上にエアコンが置いてある。

しかしエアコンの下にはだれも座っていない。

どいつが犯人なんだ。

間違って他の人の物ってことは無いよな。

「おいだれだ。犯人は。」

乗客は数名いるが、だれもまったく反応しない。

「エアコンは持っていくぞ。」

この車両では落ち着かないので、エアコンを持って数両前に移った。


しばらくしてようやく落ち着いてきた。

気が付いてみると、丁度うまいぐあいに乗りたい列車に乗れたみたいだ。

本当に不幸中の幸いだな。

しかもこれが最終列車だったようで、あぶないところだった。


犯人はまだこの列車に乗っているらしい。

また取られたりしないように、寝ないで気を付けよう。


しかし乗客は少なくて、全く静まり返っているし、どうしてもウトウトしてしまう。

ガタッ。後ろの車両からだれかが移ってきた。

こいつが犯人か!

しかしこの人は週刊誌のタバを抱えて歩いてきた。

どうやら棚に置き捨ててある週刊誌を集めているようだ。

長距離列車だと、いまだにこんなことする人がいるらしい。

スマホで用は足りそうだが、意外とゴシップ記事目当てに読む人が多いんだろう。


んん?棚に目が行って気が付いてみると、棚の荷物はどれもグルグル巻きに縛り付けてある。

寝てしまってもいいように、荷物はがっちり止めておくのが常識のようだ。

アブナイところだった。棚に素でエアコン置いとくなんて、お取りくださいというようなもんだ。

慌ててエアコンを縛り付けた。

これでちょっと寝てしまっても大丈夫。

すいているし、少し横になってもいいだろう。

多少ホッとして眠り出した。


気が付いてみると10駅くらい進んできたようだ。

エアコンも、もう安心、な筈だった。

「あれっ無い」

グルグル巻きにしたはずの紐が切られて、持っていかれている。

あんなに縛ったはずなのに、それでも盗んでいったんだ。


この列車にいるはずだ。

隠れても隠し切れないだろう。

前か後ろか。

どちらに逃げた。

一度他の車両に移った者が、大荷物を抱えてまた現れたら、変だと気付かれるかもしれない。

だったら前だ。

前に行ってみよう。

前の車両を探しに行く。

しかし、隣の車両にはいない。

まあ、そう簡単にはいないだろう。

もう一つ隣を調べに行こうとしたとき、真っ暗な車外に人影が。

あっ犯人は、いま止まった駅で降りたんだ。

慌てて車外に飛び出る「こらーエアコン泥棒!」

泥棒は逃げようとしたが諦めてエアコンを置き去った。

ガタン!エアコンは取り戻したがホームに取り残されてしまった。

最終便だ。もうどうしようもない。この駅で降りてみるしかなくなった。

ホームに明かりは無い。おまけに無人駅だ。駅前だが店は1軒も無い。

エアコン抱えて朝まで待つか?いや少し歩けば泊まる所があるんじゃないか。


真っ暗な駅前を歩いてみることにした。

大荷物抱えてひとけの無いところを歩くのは変な気分だ。

5,6分歩いたか。どうやら宿屋らしきものが見えてきた。

やった、助かった!

「すいませーん。すいませーん。宿屋のかた居ませんか。」

反応が無い。もう寝てしまったのか。看板だけでやってないのか。

「すいませーん。宿屋のかた居ませんか。」

「だれだいこんな時間に。うるさいねー。今日はもういっぱいだよ。」

「えーっ、そんなこと言っても他に行くとこないですよ。

 屋根を貸してくれるだけでいいのでなんとかなりませんか。」

「ごめんだね。この先にもう一軒あるからそこで聞いてみな。」

きびしいなー。しかたなくそのもう一軒に行くことに。


また5,6分歩いたか。次の宿屋が現れた。ここが最後の望みだ。

「ごめんくださーい。宿のかたいらっしゃいますかー。」

「だれだねこんな時間に。」

「列車の最終便で取り残されちゃったんです。泊めてもらえませんか。

 屋根があればいいですから。」

「今日はもういっぱいなんだけどね。まあ納戸でよければ泊ってきな。」

「やった。助かった。有難うございます。」

「なんだかすごい荷物だね。荷物までは責任持てないからね。」

へとへとで、部屋に案内されたら、すぐに寝てしまった。


朝は早くから目がさめた。

「ずいぶん早いね。

上りの始発は9時半なんで、港と岩場でも見てくるといいよ。」

だいたいここは海の近くだったのか。

何が何だか分からず駅を降りたので、ようやく少し事情が分かってきた。


細い道を少し下ると海岸に出られた。

小さい港と岩場がある。

特に名所があるという訳でもなく、ひとけは無い。

海は足元から遠くはてまで青く澄んでいてとても綺麗だ。

まあちょっと立て込んでいたので、ほっと出来て助かった。

岩場に行ってみると小魚が群れていて、小さいイシガキダイのようだ。

釣りをするにはいいかもしれない。

なんとなくしばらくぼっとしてから宿屋に戻ることにした。


「おばさん、海よかったですよ。

 さてと、そろそろ支度するか。

 あれっ、エアコンは?

 おばさん、荷物のエアコンどっかに動かした??」

「知らないね。

 だれも納戸なんか入ってないよ。」

「まさか泥棒!

 しまった油断して結わいたりしてなかった。

 こんなところで、、、」

体じゅうの力が抜けてがっくりきた。

どんなとこにも泥棒はいるんだ。

ここまできて盗まれるオレは大まぬけだ。


「そういえば、さっき酒屋さんが来たよ。」

酒屋さん、んん?

納戸には瓶ビールのケースと段ボールの箱が積んである。

もしかして

あっ、あった。

こんなとこに隠れてた!

とりあえず泥棒でなくて良かった。

「おばさん、すいません。

 酒屋の荷物の陰にあったよ。」

「こんなとこに泥棒が入るだなんて変だと思ったよ。

 まあ良かったね。

 列車に遅れないように気を付けな。」

軽い朝食を出してもらい、駅に向かった。


上りの始発が来た。

最終とは違って、かなり人が乗っている。

こんな中では泥棒も出来ないだろう。

最終のように、ひとけが無いのに何かピリピリしているなんてことはない。

列車が進んで行くにしたがって、だんだん混み合ってきた。

街中に入ってきて、立って乗車する人もでてきた。

ここまできたら、もう絶対大丈夫だ。

あとは乗り換えの駅で、そばでも食っていくか。



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