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第1幕、終了
「それにね?」
さっきまで何も無かった瞳に、急に何かが宿る。
いや、何かなんかじゃない。
私はこれを知っている。
驚くほど見慣れた感情。
「もしお兄さんが本当の聖人だったとしても、ここで死ぬんだから!」
彼女の目に宿ったのは、とても哀しい"使命感"。
しかし、そんなことに今更気づいたってもう遅い。
すべてが、最初から決められていた。
私のあの感情も、あの子のあの言葉も、すべてが台本の下に仕組まれたものだった。
最初から私は、掌で躍らされていただけだった。
どこかで、拍手の音が聞こえる。
「なかなか無難で良かったですよ、でも、面白みにかけていましたね?」
これは黒幕の声だろうか。
「お兄さん、あなたがかけてくれたあの言葉、ちょっと嬉しかった。ありがと」
これは、私を殺したあのこの声だな。
最初から、気づいていた気すらしてくる。
やっと思い出した。
あのこの名前を聞いた時のほんの少し、本当にかすかな違和感の正体を。
私は、彼女を知っていた。
彼女の本当の名前を知っていた。
_________彼女の名前は、________________
そこで、視界が暗幕に包まれた。