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5,根源
ぞくりと、背筋が凍る。
私だってもう大人だ、何十年もこの世を生きてきた。
生きていく過程で、誰かを恨むこと、そして誰かに恨まれることは、誰でも経験するだろう。
私だって、仕事を押し付けてくる上司を恨んだことはあるし、自分より頭が悪い人間に、頭がすこし良いという理由で恨まれたことはある。
しかし、こんなに深く、黒い怨念を見たのは、生まれて初めてだった。
「君は…………………………どうして……」
そんな言葉を零すと、今ではもう光など微塵も感じない空虚な目で見つめられ、思わず息が詰まる。
そんなわたしを見て、香音ちゃんはゆっくりと首を傾げた。
「おじさん、どうかしたの?」
「ううん、何でもないよ。」
「そっか、それなら良かった!」
そう言って、彼女はまた笑った。
この笑みも、今では不気味にしか感じられない。
しかし、その不気味さの中に、すこし悲しさも感じられた。
…ここまで知ってしまったら、もう、仕方がない。
「香音ちゃん、君のご両親の死因は?」
徹底的に、恨みの根源を調べあげ、この手で握り潰してやる。