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僕の職業は不遇職!?  作者: ひろ
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第7話「デート」

今回はある日の1日を書きました。毎回拙い文章ですが、楽しんでいただけると幸いです。

 その日、僕は部屋の中にいた。毎日訓練だと身体も疲れてくるし、今日は一日フリーの時間だ。周りを見渡し、何をするか考えていると、部屋に誰かがノックをした。


「はーい、今いきますよーっと」


 ドアを開けると、そこには桜さんが立っていた。今日の服装は花柄のワンピースみたいだ。桜さんの栗色の髪によく似合っている。どこかに出かけるような格好だが、僕に何の用だろう。


「あ、あの…いっしょに街に行かない?その、気晴らしに…なんて」


 少し顔を赤くしながらそう言った。その表情を見てみると、目をきょろきょろ動かし、落ち着きがないように見える。


(これはひょっとして…デートじゃないだろうか。いや、この僕に?そんなまさか)


「えっと、僕が一緒でもいいの?ほら、もっと他の人とか誘わなくて大丈夫?」

「か、楓君がいいの!2人で…その、回りたいから。ダメ…?」


 顔を赤くしながら、上目遣いで僕を見つめてきた。その仕草にどきりとしながら、僕は思った。


(こんなの反則だろ…てか、これを断るやつは男じゃない!)


「わかった。僕でよければ付き合うよ」

「やったぁ!ありがと、楓君!じゃあ、門の前で待ってるね。早く来ないと拗ねちゃうんだからっ」


 桜さんは嬉しそうにしながら廊下に出て、門まで向かって行ったのだった。その後、僕は急いで準備をして門に向かった。門に着くと、桜さんが気がつき、こちらにやってきた。


「ごめん、待たせちゃったかな?急いで準備してきたつもりだけど」

「ううん、大丈夫だよ。私からお出かけしよって誘ったわけだし、気にしないで。ほら、いこ!」


 そうして、僕らは街へと出かけるのだった。街に着くと、あまりの人の多さにクラクラした。元々、人が多いところは苦手なのだ。この中ではぐれるのはまずいと思い、僕は桜さんの手を握った。


「ごめん、桜さん!人が多いからはぐれないように手を握ったけど、大丈夫だった?」

「う、うん…突然だったけど、嬉しかったから大丈夫…!じ、じゃあもっと強く握らないとっ」


 桜さんは僕の手をぎゅっと握ってきた。この時、桜さんは顔を真っ赤にしていたのだが、僕は僕で、女の子の手って柔らかいんだなと思っていたので気がつかなかった。


「うーん、それにしても人が多いな。ところで、どこか見たいところある?

「アクセサリーみたいな物が売ってるお店ってないかな?少し興味があって」

「アクセサリーね。わかった、探してみるよ」


 僕は魔眼を発動させ、意識を集中して店を探した。なかなか見つからなかったが、少し道を外れたところでお店があるのを見つけた。


「お、あれじゃない?ほら、あそこのお店」

「あ、ほんとだ!じゃあ入ろっ」


 そう言って僕の手を引く桜さん。もうすっかり手を繋ぐのには慣れたみたいだ。人間慣れが必要だよね。


「ん、これは…こんなものまであるのか」


 僕が手にしたのは、一つのアクセサリーだ。単純に勾玉の石に紐を通しているネックレスだが、その効果が凄かった。


 勾玉のネックレス : 一見するとただのネックレスだが、装備者が瀕死になった際に一度だけ身代わりにすることが出来る。その時、このネックレスは壊れてしまう。


 こんなにすごい効果なのに、なぜこんな所で売っているのかは疑問に思ったが、一応買っておいた方がいい気がした。保険のためにも。


「楓君はそれが気に入ったの?なら、私が買ってあげる!」

「え?ああ、自分で買うから大丈夫だよ」

「私が買いたいの!ちょっと待っててね」


 僕からネックレスを取り、買いに行ってしまった。


(うーん、案外桜さんって強引な所あるんだな。まあ、可愛かったから問題ないけど)


 そんなことを思いながら、僕も桜さんに似合いそうなネックレスを探した。そして、桜さんが戻ってくる前にこっそり買っておいた。これは後で渡しておこう。


「はい、これ!プレゼントっ」

「ありがとう、桜さん。嬉しいよ」


 僕がお礼を言うと、とても嬉しがっていた。本当、桜さんって可愛いよな、とつくづく思った。その後も色々な店を回り、気づけば夕方になっていた。


「そろそろ帰ろうか。もうこんな時間だし」

「うぅ…残念。もっと一緒にいたかったな」


 そう言うことを男の前で言わない方がいいと思う。勘違いしてしまうだろう。それはそうと、渡すものがあった。鞄から袋を取り出し、桜さんの手に乗せる。


「はい、これ。僕からもプレゼント」

「え!?いつの間に?」

「こっそりとね。僕だけプレゼントって格好つかないし、桜さんにも渡したくてさ。大したものじゃないんだけど」

「ううん、とっても嬉しい…大切にするね」


 そう言う桜さんの顔は、まさしく天使みたいな笑顔だった。そして、お互いに城の中に帰ろうとした時、桜さんがつまずいた。


「きゃっ」

「危ないっ!」


 とっさに桜さんを抱きしめ、僕が下になるように位置を変えた。上手く僕の上になるような形なので、怪我はないはず。


「だ、大丈夫?」

「う、うん…大丈夫、なんだけど…そ、その…楓君の手が…」

「え?」


 手ってなんのことだろう。そう言えば、とても柔らかいものが僕の右手にある気がする。さりげなく右手を動かすと、ふにょっと僕の右手にあるものが形を変えた。ていうか、それは桜さんの胸だった。


「えええぇぇ!?ご、ごめんっ」

「あっんん…あ、あんまり動かしちゃダメ…」

「は、はい…すみません」


 僕はパニックになっていた。だって、生まれて初めて女の子の胸を触ったのだ。それは当然のことであった。


「と、とにかく…立てる?」

「う、うん。ごめんね、庇ってくれたんだよね」


 僕は桜さんに立ってもらって、ようやく僕自身も立つことができた。それにしても、柔らかかったなぁ…そんな事を思いながら、手をニギニギさせる。それを見て、桜さんは顔を真っ赤にさせてあたふたしていた。


「ご、ごめんねっ!こんな粗末なものを触らせて!」

「そ、そんな事ないよ!むしろありがとうございますとお礼を言いたいくらい…あっ」

「ふぇぇぇ!?うぅ、忘れてー!!」


 そう言って、素晴らしい速度でお城に帰っていった。僕は手についた感触を忘れないように、しばらくその場で立っていたのだった。



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