第11話「地上へ」
長く開けてしまいました。最近忙しくてなかなか書く時間が取れませんね…
しばらく歩いていると、また大きな部屋に辿り着いた。特に危なげなく、戦闘を行いながらここまできていた。そんなことを繰り返していけば、自然と戦闘にも慣れてくる。
「ふぅ…ここら辺の敵はそこまで強くはないな。魔眼も使いつつ戦闘しているおかげでだいぶ慣れてきた」
『普通は魔眼など慣れるまで数年はかかるものじゃが…マスターはやはり特殊じゃな』
「そうなのか?まあ、加護がいろいろついてるおかげかな」
辺りを見渡すと、なにやら装置らしきものがあった。それに近づき装置を調べていると、転移の魔法が組み込まれていることが分かった。
「これは…この装置を使えばここから出られるのか?」
『どうやらそのようじゃの。しかし、気をつけよ。この装置がここにあると言うことは、最後の砦みたいなものじゃからな。何かくるぞ!』
その言葉を裏付けるように、いきなり部屋の中央に魔法陣が現れた。そして、その中から巨大な蠍のようなモンスターが出てきた。
即座に魔眼を発動させ、相手の情報を見る。
「こいつはなかなか強そうだな。特に、尻尾の毒に気を付けないと」
『うむ、そうじゃな。この毒に触れれば、さすがのマスターでも危ないからのう』
その時、相手が動いた。僕は全力でいくために、そのまま魔眼を発動させたままにして行動を先読みしていた。そのため、蠍の攻撃を紙一重でかわしていく。
「くそっ…こいつ、思ったよりも早いな。先読みしててこれか。一瞬も気が抜けない」
僕は避けながらも、隙を見て銃を撃ち込んだ。しかし、あまり効いていないようにみえる。それなら、弱点属性を撃ち込むだけだ。
「お前の弱点は…炎!なら、これでどうだ!!」
敵の尻尾をしゃがんで回避し、そのまま流れるように火の属性弾を撃つ。多めに魔力を込めたおかげで、かなりの破壊力を得た一撃。一瞬よろけた敵に僕は連続で攻撃していく。
「ここがチャンス!くらえぇぇぇ!!」
そして、連射し敵は炎に包まれた。何度か攻撃を喰らいそうになったが、何とかなったみたいだ。
「しかし、この目は本当にチートだな。これなかったら危なかったし」
なんて言いながら、僕は倒した安堵感に完全に油断していた。故に、敵がまだ動いていることに気づけなかった。
『マスター!油断するな、まだ敵は生きておる!!」
「えっ…?」
炎に包まれたまま、的な蠍は尻尾を繰り出す。反応に遅れた僕はそのまま腹部を貫かれ、吹き飛ばされていた。
「ごふっ…か、完全に油断してた…くそ、ここはダンジョンじゃないか。何を安心し…て…」
急に瞼が重くなり、視界が暗くなっていく。そうか、これは毒か。倒れる瞬間、蠍が大きな声を上げながら死んでいくのがみえる。なるほど、あれは最後の一撃だったわけか。
「ぼ、僕は…死ぬ…のか…こんな、ところ…で…」
『マスター!お主は死なせん、妾が…な…す…』
僕の意識は遠ざかっていった。最後に何かイヴが言っていたが、聞き取ることは出来なかった。そして、僕の意識は完全に闇に沈んだ。
「う……こ、ここは…どこだ?ぐっ…そうか、確か最後に攻撃を食らって…それで…ていうか、生きてる」
「当たり前じゃ。妾がついててそう簡単に死ねるか」
聞き覚えのある声が聞こえた。僕の上から。しかも、頭の下が何やら柔らかい。これは、なんだろうか。ふにふにと触ってみる。
「んっ…マスターも男の子なんじゃなぁ。そんなに妾の太ももが気になるか?」
「えっ?あれ?お前…誰だ?」
僕はどうやら膝枕をされているらしい。顔を上げ、膝枕をしている人物の顔をみる。そこには、銀髪の髪の綺麗な顔のかわいい美少女がいた。ちょっと幼い気もするが、僕の3つ下くらいだと思われる。
「誰って…酷いのう。マスターよ、妾じゃ。イヴじゃよ」
「はっ!?いや、イヴって銃だよな?人間じゃないじゃん!」
「妾ほどの実力があれば、人間の姿になるなど造作もない。久々になってみたが、やはりこの方がのびのび出来てよいのう!」
もう一度観察してみる。柔らかい太ももに、少し膨らんだ胸。そして、可愛らしい顔。普通に可愛くて、僕は思わず言ってしまった。
「でも、イヴって可愛かったんだな。びっくりしたよ」
「か、可愛いとな?ふむ…少し照れるが、嬉しいぞ」
そう言って、僕に向かって微笑んだ。その笑顔に、僕は見惚れてしまっていた。しかし、僕は思考を切り替えてイヴに話しかける。
「イヴ。とりあえず、ありがとな。僕のこと助けてくれたんだろ?」
「お主は大切なマスターじゃからな。当然じゃ!それはそうと、いくら妾の治癒とお主の高速治癒があるとは言え、しばらくは動かん方が良い」
「ていうか忘れてたけど、僕には完全耐性っていうのがなかったっけ?」
「マスターの様子を見るに、レベル差が激しい時にはあまり働かんようじゃな。まあ、マスターが強くなれば問題ない!」
スキルも万能ではないらしい。そして、僕はそのまましばらくイヴの膝枕で寝ながら、意識を手放した。