*幕間* ほら、地獄のような楽園が。
その少女は時折、自分が何処にいるのか分からなくなることがあった。
ふとしたときに感じるそれは、思えば物心がついたときからずっと感じてきたもの。酷く漠然としている一方で、恐ろしい程に現実味を帯びた孤独の中に少女を閉じ込めてしまうものだった。
自分は確かに此処にいる。
そんな確信はいつも自然と持てたものの、そこには常に形容し難い違和感のようなものが付いて回る。自分が自分でないような、何処かに一人で取り残されてしまうかのような、先の見えない恐怖にも似た違和感があったのだ。
しかしそれはある少年と出会ってから変わった。
少女は僅かではあったが彼と一緒にいることで、それが薄く和らいでいくような気がした。実際に、少女がその感覚に襲われることは少なくなっていった。
だけどそんなある時、気づいてしまった。
その少年も、少女と仝だということに。
ふとしたときに見せる少年の表情や片鱗に、少女は自分と似たようなものを感じていた。
潰れそうな己を支えさせるように、壊れそうな相手に必要とされるよう、いつかそうなってしまうだろう何かに怯えながら、彼らは互いに依存するようになっていたのかもしれない。
いつか見た気がするそんな未來を、現実が暗示し、侵蝕しているような気がしていたのかもしれない。
この崩れはじめている世界に跼蹐する彼ら自身に、少女は気づいていたのだろう。
例え彼らが目を背け、忘れようとしようとも、未來を生きる彼らの選択は畏れる現実のそれと分かつことは叶わない。
逃避して嫌忌する帰趨の先にある結末を、同時に狂おしい程に渇望する彼らは歪んでいるのかもしれない。
だがそれでも良い。そんなのも悪くはないのだろう。
確実に狂っていく目睫の軌跡を、その少女は誰よりも求めているのだから。
そしてそれはきっと、少年も仝なのだろう。
今日というこの日も彼と共にいれるよう、少女は涙の下に笑みを隠すのだった。
急な幕間。急な作者コメ。
はい、ここまでお読み頂きありがとうございます。取り敢えずこの話はほっておいても大丈夫……な筈です(笑)明日からは通常の本編に戻ります。
お目を通して頂けるだけでも大変嬉しいです。誤字、指摘、感想なども大歓迎ですので(泣いて喜びます)お気が向いた時にでもよろしくお願いします。
それでは!