ヒーロー
あれから僕との会話を約四十分続けたところで、俺の通う塾に隣接するコンビニに着いた。
現在の時刻は午後四時
塾が始まるまであと一時間はある。
とりあえず、立ち読みするか…
一旦"僕"との会話を止め、大好きな漫画を読み始める。
この漫画は主人公がある日突然力を手にし、人を殺す敵と戦うというシンプルな話なのだが、俺はこの主人公に心酔している。
主人公は、自分がいつ死ぬか分からないような戦いに身を投じており、実際に何度か死にかけたにも関わらず、弱音や泣き顔を一切見せず、初対面の人に対しても相談にのったり、誰に対してもいつも笑顔で振る舞ったりする、俺の理想のヒーローだ。
はぁ、俺もこの人みたいになれたら…
でも現実に悪の組織が出現するわけもなく、謎の力に目覚めることもない。
しょせん理想は理想でしかない、もう何度も自分に言い聞かせたはずなのに、そんな理想を想像する度に笑顔になる自分がいる。
おっと、そんなことを考えていたら思ったより時間が経ったようだ。
俺はコンビニのチキンとおにぎりを買い、近くのベンチに腰をおろし、食事を始める。
塾が始まるまであと三十分、さてどう時間を潰そうか…
そんなことを考えていたら、下校中の高校生らしき四、五人の軍団がこちらに近づいてきた。
パッと制服を見る限り、俺と同じ高校のようだ。
彼らから目と身体を背け、できるだけ存在を消す!
我ながらやってて悲しくなるが、これも絡まれないためだ。
彼らは俺に絡むことなく通りすぎる。
ふぅ…
安心のあまりため息をもらす。
誰かと話すのが怖くなったのはいつからだろう。たぶん今の自分は少し泣きそうな顔になっているだろう。
ふと、あの漫画の主人公と比較し、情けない気持ちになった。