真の大賢者とは
なんか、主人公が事件に巻き込まれて目立ちたくないけど結局目立っちゃって英雄になる的な展開の小説に飽きてきたので、主人公は全く何もしない的な小説が読みたくて自分で雰囲気で書いてみました。
「おお、勇者よ!此度もよくやってくれた!皆の者、安心するがいい!王国の平和は守られた!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアア!
今、勇者と言われた俺、アルトは、王の面前で跪き、王の平和宣言を聞いていた。今回は、渓谷を超えてきた真祖並に成長した吸血鬼を相手に、なんとか俺を含めた4人のパーティーメンバーで討伐することができた。
吸血鬼に対して有効な手段は限られ、俺たちが相手取るまでにかなりの犠牲者が出たと聞いた。俺だから倒せたものの、吸血鬼ハンターなる者がいるわけでもなし、かなりキケンな状況だったといえる。
「もとよりこの身は、王国に捧げた剣!王国の平和を揺るがす者は、この勇者アルトが葬るのみ!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアア!
決まった・・・!完全に・・・!俺の右手に掲げられたミスリルの剣が、太陽に反射して白く輝いている。まるで俺を祝福するかのように、俺を光り輝かせている。最高に気持ちがいい!勇者最高!高揚感が半端ない!これに代えられる充実感は存在しないと言ってもいい。今この時、世界は俺が中心に回っている・・・!
平和宣言後、市井の人々にも平和が訪れたことを実感させるかのように、祭りが始まっていた。王城内から街にかけて大きな通りがあるのだが、そこが人で溢れている。
「すまないが俺はこれから用があるから、みんなは楽しんでくれ。」
「おう!いつものだな!俺達だけで盛り上がって悪いな!まあ安心しろ、例のごとく俺達で適当に露店回って見繕っておくぜ。」
「勇者様、お早いご帰還をお待ちしております。」
「いってらー!」
上から順に、男戦士ポポス、女神官マリー、女魔法使いオルガが返答する。俺の頼りになる仲間たちだ。ぶっちゃけると女神官とは最近付き合い始めたばかりで、イチャイチャしたい今日このごろ。今、俺は青春真っ只中だ。順風満帆、とてもうまくいっている。・・・うまくいっているのだ。これから向かう祈りの場のおかげで・・・。
「今回も本当にありがとうございました!しばらく来れなかったので、今日は多めに奉納品を持ってまいりました!」
今、勇者と言われた俺、アルトは、目の前にいる人物の前で土下座の姿勢で発言している。しかし、その目の前にいる人物は、椅子に座ったまま一瞥しただけで、興味なさそうにこちらに背中を向けて、机上の盤面を凝視している。盤面には、40個の割符のようなコマが半々に相対するよう並べられており、コマには読めない文字で何か書かれている。
「そう。おめでとう。あと、今日もありがとう。またよろしく~。」
目の前の人物はそう言って、椅子に座って背を向けたままこちらに手を振った。
「ははっ!こちらこそ、今後とも宜しくお願いします!」
目の前にいる人物こそ、祈りの対象であり、俺が勝手に大賢者として崇めている黒髪黒目の若い男性、リューセイ様だ。彼のおかげで、俺は勇者として名が通っており、また、勇者たらしめる能力を有しているのである。そんな大きな力があるにも関わらず、彼は自分から何かすることはない。そう、最早彼にとって地位や名声というものは何の価値もないのだ。
「王手!」
自分が動くまでもない、真の大賢者は働かないのだ。
こんな感じの小説あったら感想で教えて下さい。飢えてます。