友人
友人が心さびしく病んでることくらいわかってた。
道具じゃない。
そう扱われても、僕らは間違いなくヒトで心がある。
未来を見れるっていいことじゃない。だいたい遠い未来を見るのは父の方が得意だし。
無能と言われる日々。
弟を恨んだこともあった。
弟の力はとてもわかりやすかったから。
実際のところ力の有無大小は苦しみとは無関係だった。
苦しさは受け取りて次第だから。
欲しいものを欲しいと手を伸ばす。
弟に触れられた血族外の能力者は弟の信奉者になる。
それが恐ろしいことだと気がついた。
伏せなくてはいけないとわかった。
力を持つ者から弟を遠避けた。
危険だった。
神経質なほど未来を確認した。
苦しかった。
目の奥が深く抉られる痛み、揺らぐ未来の兆しは幸運の女神の前髪ほどに掴み難い。
だから、駒に出来る人材を見過ごすことはできなかった。
戦力で囲む必要があった。
逃げられない餌を見つけて歓喜した。
なんてひどい友人だろうな。
受け入れてくれる存在に溺れたお前に適切な呼び声は届かない。
溺れろ。
沈め。
表でお綺麗な軍人を演じれるなら構わない。
これで僕らを裏切れない。
どんなに呼んでも届かない。
届いたであろう心をその手で壊したのだから。
「それで、正しいとおもってんのかよ!」
友人の罵声。
引き止めたがってた。でも彼はお前じゃなく僕の声を選んだ。
馬鹿だなぁ。
正しいに決まってるじゃないか。
「彼を犯罪者として狩り立てるとすれば、選ばれるのは君だよ?」
そして、生き延びるのは彼。
ああ、本当に未来なんて見るもんじゃない。
知ってるんだ。
弟が君に触れたことを。
君は弟の無自覚信奉者。
僕らの心はどこにもたどり着かず彷徨うだけ。
幸せな未来をどんなに呼んだって届かない。
汚れたならどこまで汚れたって構わない。
なまじ期待するから躊躇うんだ。
幸せのかたちはひとつじゃない。
心は繊細で必要でないものなんかない。
綺麗に洗って、綺麗な服に身を包んだ弟くんはぼんやりとなにも見ない。
彼の声しか聞こえない。
彼のことしか認識できない。
病室で「ひどい」と泣いていた女性。
何が起こったのか知っているんだろう。
大丈夫。
君は綺麗に忘れられる。
忘れさせてあげた。
いつしか道具のようにヒトを使う大人と同じになっていた。
「君は幸せ?」
答えなんてない。
僕の声は君に聞こえない。
奪われた記憶は重ねられた枷は君からいろいろなモノを奪った。
「あ、お兄ちゃん!」
嬉しそうな声で手を伸ばす。
幼い声に彼は微笑みを浮かべる。
その心はさ。痛いだろ?
どんなに呼んでも届かない。
本当の心を壊してしまったから。




