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第65話 悪霊との遭遇

我はゴーレムなり。


ようやく夜が明けてきた。朝日が眩しいぜ。村を通り抜けたら、また火の玉が出てくるのかと思ったが、どうやら【姿隠し】を発動していたら出てこないみたいだった。ちょっと寂しいので、【姿隠し】をオフにしたら、火の玉が我の足下を照らすために出てきてくれた。ありがとう、火の玉。そして、夜が明けた今は役目は終わったとばかりに消えていった。


いつのまにか現れ、役目が終わったらさっと消えていく。そんな火の玉に我はちょっと感動する。あれが、本当のプロってヤツなんだ。かっこいいぜ!


我は道に沿って進んでいく。特に魔物とか、盗賊も出ないんだ。この島国に何が起こっているのだろう。


疑問に思って進んでいくと、前方の道に一人の鬼族が現れた。おお、第一村人発見だ。我が見つかる前に【姿隠し】を発動せねば。でも、どうも様子がおかしい。ふらふらと彷徨っているように見える。


んんー、体調不良か?


ちょっと心配になったので、【姿隠し】を発動することなく近づいていく。


おお、これは確かに体調不良というか、死んでいるのではないだろうか? ところどころ腐っているように見えるし、骨が見えているところもある。目の玉も一つ無い。


そうか、なるほどな。わかった。さすがはファンタジーな世界だ。この世界のお盆なのだ。お盆には本当に死者が帰ってくるのだ!


そうとわかれば、この目の前の彷徨う死体の背景事情もわかってくる。なんて寂しい結果なのだろう。


いざ、お盆で現世に帰ってきてみれば、自分が住んでいた家はすでになく、家族だった者達も子孫もいなかったってことなんだろう。それで、あの世に帰るのはまだ早いし、でも、とどまれる家はないしで、彷徨わざるを得なかったということだ。


なんと寂しい彷徨う死体なのだ。せめて我だけでも、あんたの冥福を祈っているからな。安らかに眠れ。


ふんわりとした光が目の前の彷徨う死体を包み込む。すると彷徨う死体は身体の端から消えていくではないか!?


{ログ:ゴーレムはゾンビに400のダメージを与えた}

{ログ:ゾンビは塵となり天に昇っていった}


<感謝ス、ル>


お、おう。なんということだ。消えてしまった。我の祈りは攻撃スキルだった。でも、感謝するって聞こえたから、良いことをしたはずだ。きっと早くあの世に帰りたかったんだ。あの世でゆっくり休んでくれ。



その後、歩けば歩くほど、彷徨う死体と出会う事が多くなってきた。中には肉体を持っていないセバスチャンのような幽霊もいる。セバスチャンよりも、かなり透明感がある幽霊だったけど。


鬼族たちの社会では核家族化が進んでいるのだな。そうでなければ、これほどの死体や幽霊が彷徨う事なんてないだろう。時代の流れというのは、取り残された者達には残酷だ。


我はそんな死体や幽霊達と出会う度に、祈りを捧げ、あの世へとお帰りいただいた。途中からは、雰囲気も大事にした方がいいと思い、我の背中にラインライトを発生させ、後光の演出も忘れない。


{ログ:ゴーレムはゴーストに400のダメージを与えた}

{ログ:ゴーストは塵となり天に昇っていった}


我は南無阿弥陀仏と心の中で唱えながら、両手を合わせて、その姿を見送る。


「ちゅちゅちゅ!! ちゅちゅちゅー!」

(ま、眩しい!! 親分が輝いているー!)


お昼寝から目覚めたジスポが、眩しそうにし、ないわーポーチの中に深く潜り込む。こやつは、また寝る気だろう。本当に3食おやつにお昼寝付きの生活を満喫している。





道を進んでいくと村が見えてきた。おお、村人がいっぱい……いないな。見えた人影は全部、彷徨う死体か幽霊のどちらかだ。


今までの道とは違い、死体や幽霊達が集団でいた。家はそこそこ建っているけど、入れてもらえなかったのだろうか。死体や幽霊の世話は放棄したのかもな。幽霊ならちょっと怖いだけだが、死体だと匂いとかもあるからな。その気持ちはわからなくもない。お盆の風習もどんどん変わるしね。


本当ならお坊さんの仕事だろうが、しかたない。ここはゴーレム地蔵の出番だ。


我は威力のないラインライトを天からの光の如く、死体や幽霊に当てる。そして、祈りを捧げる。消えていく死体や幽霊にあわせて、ラインライトも消していく。もちろん我の背後からは後光を発生させるのも忘れない。


{ログ:ゴーレムはゾンビ達とゴースト達に平均400のダメージを与えた}

{ログ:ゾンビ達は塵となり天に昇っていった}

{ログ:ゴースト達は天に昇っていった}


<アタタ、カイ><ヨウヤク、ネム、レル><ク、ルシクナイ>


すべての死体と幽霊をあの世に送った。成仏しろよと思いつつ、我は村を離れる。


死体や幽霊以外に家の外にいる者がいなかったのだ。家は固く閉ざされているし、お盆には家から出てはいけない風習でもあるのだろうか。



ジスポは日課である我の身体磨きをきゅっきゅっとしている。最近は我が歩きながらでも、自由自在に磨くことができるようになったみたいだ。こやつもいつのまにか成長しているみたいだ。


「ちゅちゅちゅ!」

(あっ、親分、あの木の実を摘んどいていてください!)


厚かましいのは相変わらずだけど。





ゴーレムが去った村では、ようやく、家の扉が開き始めた。そして、村長を中心に輪になるように、村人が家から出て集まってくる。


「し、信じられん」

「刀で切っても、槍で突いてもどうにもならなかったのに」

「領主様の兵でも手を焼いて、とうとう兵を退かれてしまったのにな」

「ああ、領主様に見捨てられたが」

「うむ、仏様はワシらを見捨てられてはいなかったようじゃ」

「ありがたいことじゃ」

「仏様がきっとあの銀の地蔵を使わしてくれたんだべ」

「仏様に感謝せんといかん」

「これでこの村もなんとかなるかもしれませんな」

「あぁ、逃げようにも、どこにも逃げるあてなどなかったしの」


村人達は、ゴーレムが去った方向に両手を合わせながら、頭を静かに下げるのであった。

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