第39話 魔法
なぜかはわからないが祈りを捧げるとLvが13に上がった。
もしかして祈りは攻撃スキルだったのだろうか?
いや、ないない。それはない。
【死者のトモダチ】で得たスキルで、トモダチである死者にダメージを与えるってどうなのさ。天に昇るのを助けるのがトモダチへの救いにでもなるのかね。
確認する方法もないので、気にせずに我は山に登ることにした。
山の上で我は白の魔女クエストからもらったスクロールを広げる。確かになんて書かれているのかは読むことができない。そういえばマジックアイテムは装備できないと言われたけど、マジックアイテムのスクロールは我に使えるのだろうか。
ものは試しだ、やってみよう。覚えられたら、ラッキーってものさ。
{運命の選択:魔法のスクロールを使いますか? 他の魔法のスクロールは使えなくなります}
!? いざ、魔法のスクロールを使ってみると、運命の選択が発生した。どうする? どうするべきなんだ、これ!? これから先、魔法のスクロールが手に入るかはわからない。でも、もっと強い魔法のスクロールが手に入るかもしれない。
だけど、この魔法のスクロールはなかなかのレアなんだ。白の魔女が珍しいというくらいレアなんだ。
うむ、やってしまおう! 使います!
{結果:魔法のスクロールを行使します。今後ゴーレムは他の魔法を覚えることはできなくなります}
なんと!? 魔法のスクロールを使えないではなく、他の魔法を覚えることはできなくなるだと!? ちょっと運命の選択の説明にだまされたような気もする。だけど、我ってば称号以外にスキルを覚えたことが無いから、元々自力で魔法を覚える道がなく、スクロールでも魔法を覚えられなくなったから、我が魔法を覚える道がなくなっちゃったということかもしれない。
{ログ:ゴーレムはラインライトの魔法を覚えた}
まぁ、よい。今は魔法が使えるようになったことを素直に喜ぼうではないか。我がもらったのはラインライトのスクロール。ライトは通常丸い光の玉を出すだけの魔法なのだけど、ラインライトは線のように細長い光を出せる魔法なのだ。
ふっふっふ、変わった形状になる魔法はレアなんだぜ。
それでは早速、使ってみよう。ラインライトと念じるだけで、魔法は使える。そのうちに、意識を向けるだけで自然と使えるようになるだろう。
ラインライト!
我の目から、チュインと光の線がでる。
光線だ! レーザーだ! かっこいい!!
我ってばメタルゴーレムだから、光線を出せたらロボットみたいでかっこいいんでは、と思っていたんだよね。ふっふっふ。狙い通りだ!
目の前の太い木にあたると光は消えるのかと思ったが貫通した。
あれ? ラインライトは単なる明るくするための光って話だったけど、攻撃力もあるのか。なかなかいいじゃない。うれしい誤算だ。
ちなみに、ラインライトは体中のどこからでも出せる。なれれば、自分とは離れた所からでも打ち出すことができるらしい。ふっふっふ。笑いが止まらぬな。これで我は範囲攻撃の手段を得てしまったのではないだろうか。
ーー3日後
寝る間も惜しんで魔法の練習をする我。寝る必要はないんだけどね。我はこの3日間威力について研究を重ねた。
どうやらラインライトに込める魔力で威力が変わるらしい。
何も意識せずにラインライトを使うと、太い木の幹を貫くくらいの光線を出せる。
太さや長さは、あれだ。会社や学校で使われている細長い蛍光灯を思い浮かべてほしい。あれと似たようなものだ。
めちゃくちゃ込める魔力を減らせば、木の幹に当たるだけで、貫通などもしなかった。これで、むやみやたらと殺してしまうこともあるまい。
それで思いっきり魔力を込めてラインライトを使ったところ、山にトンネルが出来てしまった。トンネルの大きさは我の身体より少し大きい150cmほどだ。どこまで続いているのか、奥が見えない。これほど大きな山だ。さすがに貫通はしていないはず・・・・・・。
ちなみに、ラインライトはその場にとどめておくことができる。というよりも、その場にとどまるのが普通みたいだ。最初に光が突き進んだのは、我がレーザーを意識していた為らしい。イメージは大事だね。
ーー1週間後
ラインライトを我から離れたところにも発生させることができるようになった。
例えば我の背中のあたりに、時計の文字盤のように円形に並べて12本のラインライトを発生させることも可能だ。そうして、我が手を合わせれば、まるで後光がさした仏像のようではないか。
これで【祈り】の際の演出はばっちりだ。ラインライトでの後光から祈りというコンボが出来た。スキルの連動だ。まったく自分の才能が恐ろしいぜ。道ばたに立っていたら、神々しくてお金をもらえるかもしれないな!
ーー2週間後
我はとうとうラインライトを自由自在に操れるようになった。
ラインライトを空中にて生成、そのままとどめる、前に進めと意識することで、チュインとラインライトが前へと進んでいく。ふっふっふ。自分が恐ろしい。
さらにこれを多数展開をすることも可能。
我の目の前に壁があるかのように密集させてラインライトを発生させる。ラインライトの間隔はイメージで好きに変更できる。間隔が3cmくらいの密集状態、間隔が3mほどの点在状態のどちらも可能。そして、その数は全部を緻密にコントロールするなら20本程度まで可能。適当でいいなら100本程度まで可能。ただ単に打ち出すだけなら1000本まで一度に可能だ。
さらに我はMPが減ることがないので、いつまでも打ち出すことができる。これってある意味無敵なのでは。いや、魔法が効かない相手もいるだろうから、油断は禁物だ。
実際、我には光魔法は効かなかった。自分自身に向けて放ってみたけど反射していたよ。さすが、メタルボディ。
ちなみに、威力をめちゃくちゃ弱めて練習をしていたので、山に変わりは無い。自然破壊は我の望むところでは無いからね!
さて、これでラインライトのコントロールは完璧だ! 景色も満喫したし、そろそろ山を下りようかな。
我がそんな事を考えていると山に登ってくる人間の一団がいる。どいつもこいつも手に武器を持っている。冒険者ってやつかもしれないな。でも、後ろの方には鎧とマントを着ている人間達もいるから、騎士団なのかもしれない。あんな重装備で山を登ってくるなんて信じられないね。
この山には特に魔物らしい魔物はいなかったと思うんだけどな。さすがにただ登山に来たわけじゃ無いだろうし。何の用だろう。ひょっとして訓練なのかもね。
まぁ、いいや。関わらないでおこう。人間達にとって、我は魔物に分類されるみたいだから。我のきらめくボディに惹かれて、ちょっかいを出されても面倒だ。
そうして、魔法を習得した我は人間達に見つからないようにそっと山を下りていくのだった。
<ヴィディー王国 第12騎士団からの報告書>
「タイトル:アセリッシュ山の山頂付近での謎の光について」
アセリッシュ山の山頂で確認された光は、魔物の魔法である可能性が高い。
竜の月の初めよりアセリッシュ山の山頂付近で謎の光が見られるようになった。それははじめは小さな光だった。その光は昼夜を問わず光り輝いていたとのことを確認。
日が経つにつれ光の数が増えていったため、近隣の村や町から不安の声があがった。そのため、都市ブララドから第12騎士団を中心にした騎士と冒険者の一団で謎の光の調査を実行した。
山頂についたところ、アセリッシュ山の神木と呼ばれている木にこぶし大の穴が開いていた。それだけでなく、神木には指くらいの太さの穴が多数開いていることを確認した。
穴の周囲が少し焦げているため、何らかの魔法が使われた可能性が高い。詳細は不明。このような跡が残る魔法を調査団の中には今まで目にしたことがある者はいなかった。神木にためらうこと無く攻撃しているので、人間では無い可能性が高い。
さらにその付近には1.5メルくらいの大きな横穴が開いていた。その穴は風の魔法使いが調べたところ、山の反対側まで続いているとのこと。穴の縁は熱で溶けたような跡があったため、神木に使われた魔法の上位魔法の可能性がある。さらに周囲を調査するも光が発生することがなかったため、光の発生源を解明することは出来なかった。
このような魔法を使う魔物がいる場合、都市ブララトの騎士団と冒険者だけでは対処不可能である可能性が高い。騎士団の増員と詳しい調査のために王宮魔導師による調査を希望する。
ーー
名前 ゴーレム
種族 メタルゴーレム
Lv 13
ステータス
最大HP:578
最大MP:551
攻撃力:255(+0)
防御力:255(+0)
素早さ:213
頭 脳:209
運 :255
スキル
【ステータス固定】
【復元】
【覚醒】
【悪あがき】
【非接触】
【バカになる】
【水泳】
【遠吠え】
【通訳】
【祈り】
【ラインライト】
称号
【変わらぬモノ】
【悟りしモノ】
【諦めぬモノ】
【愛でるモノ】
【煽りしモノ】
【人魚のトモダチ】
【犬のトモダチ】
【声のトモダチ】
【死者のトモダチ】
ーー