第23話 言葉では伝わらぬ
我はゴーレムなり。
この世界、なんという世界なのかは知らないけれど、この世界に転生していろいろな事があった。こうやって今までのことを振り返るのは、まるで終了フラグのようだがそんなことは断じてない。断じて、否である。
アニメとかにも回想回ってあるよね。あれはほんともったいない。そんなことをして枠を潰さないといけないなんて、もったいない。描きたいという熱いパッションはないのかよ! 本当に種の運命はひどかった。
{ログ:【悟りしモノ】の効果により、興奮状態が沈静化しました}
はっ、話がそれた。
あまりにも理不尽な称号とスキルにちょっとおかしくなった。どうしようもなかった。
テスト前で勉強をしなければならないのに、部屋の模様替えをし始めたり、掃除をし始めたり、優先順位がちがうだろってことをしたくなってしまうのだよ。人間は。それはどうしようもないことなのだ。
先ほどの世界の声を確認するために、久しぶりに見てみるか。我は見たくない現実にも目を背けることなく直視できる男である。ゴーレムだから性別ない。
いざ!
ステータス!
ーー
名前 ゴーレム
種族 メタルゴーレム
Lv 10
ステータス
最大HP:578
最大MP:551
攻撃力:255(+1)
防御力:255(+0)
素早さ:213
頭 脳:209
運 :255
スキル
【ステータス固定】
【復元】
【覚醒】
【悪あがき】
【通訳】
【非接触】
【バカになる】
称号
【変わらぬモノ】
【悟りしモノ】
【諦めぬモノ】
【声のトモダチ】
【愛でるモノ】
【煽りしモノ】
ーー
ふー、やっぱりあったよ。世界の声に間違いはないよ。さすがは世界の声! パチパチパチと心の中で拍手を送る。
{ログ:世界の声との親睦度が1上がりました}
なんと、また世界の声と仲良くなってしまった。まぁ、それは横に置いといてステータスの確認だ。やっぱり追加されている。称号【煽りしモノ】はまだいい。まだいいけど、スキル【バカになる】ってなんだ。そんなスキルはノーサンキューだよ。
この世界には鑑定というスキルはあるみたいだから、もしも我が鑑定されたら、この称号とスキルがさらされることになる。
やばい。恥ずかしい。
鑑定を防ぐスキルや認識を阻害するスキル、はたまた隠蔽するようなスキルがきっときっとあるはずだ。ピンキーを助け終わったら、隠蔽スキルを求めて旅立つしかない!
我はそんなことを考えながら王宮を目指して進んでいく。シーサーペントを引きずりながら。そんな我の横にはピンキーがマントにその身を隠しながら付き従っている。
シーサーペントを振り回していたことに対して何か言いたそうだった。しかし、さも何の問題もないと堂々とした態度の我を前に、「あっ、聞いちゃダメだ」とつぶやいて、また我の後ろに戻っていく。
そのうちにロクデナイモノとかの称号がつきそうで不安になる。【諦めぬモノ】くらいまではなかなかいい称号ばかりだったんだけどな。
{ログ:【悟りしモノ】の効果により、抑鬱状態が活性化しました}
そんな中、王宮の前までやってくる。そこには200名以上の魚人の兵士が隊列を組んで待ち構えていた。ピンキーには、魚人が見えたと同時に隠れるように指示をしておいた。抜かりなし。
ふっふっふ。我はこの時を待っていた。この鞭(シーサーペントの亡骸)を振るう時がやってきたようだ。
さっきのステータスで攻撃力に+1とあったのは、この鞭を装備したからだろうか。つまり、武具を装備することで我はもっと強くなれるのだ! これは我のための武具を手に入れねばならんな。
それにしても、これだけ巨大な鞭を装備してもたった1しか加算されないとは。世界は常に我に試練を与えたいようだ。だが、我は【諦めぬモノ】なり! この程度のことで我の歩みが止まることはない!
魚人の兵士たちの中でひときわ大きい貧相な顔の男が前に出てきた。着ているものや武器は立派なので偉い奴なのかもしれない。
「我輩は魚人軍の将軍であるボーマンと申す‼︎ 何用があってこちらに参られた⁈」
ボーマン、ボーマン、ボーマン、マンボー。マンボーか。あの外見だし、マンボーの魚人なんだろうな。堂々としててちょっとかっこいい。マンボーだけどさ。
何用があってと言われたら、答える必要はないが答えてやろうではないか。
『我はゴーレムなり! 小さき人魚姫の助けに応じ、汝らを討ち滅ぼすものなり! しかし我とて鬼ではない! 今ならば逃げるものは追わぬ! 立ち去るが良い‼︎』
決まった。かっこいい。特に逃げるなら今のうちだぜって余裕綽々な感じがカッコよさにさらに拍車をかけてるぜ。
{ログ:【悟りしモノ】の効果により、興奮状態が沈静化しました}
「くっ、言葉は通じぬか。ならば仕方あるまい、出でよ! シーサーペント! あの人形を壊してやるのだ!」
あっ、通じてない。
そうだ。我は喋れないんだった。いや、喋れないのは計算の上だ。我が人魚の助けに応えるために戦ってるとわかったら、人魚を人質にするかもしれないからね。ここに結界を越える前にも思ってたから、嘘じゃない。そして、忘れていたわけでもない!
雰囲気を出すために喋った感じの演出をしたのだ!
さぁ、戦いの始まりだ!
こうして魚人達にとって悪夢とも言える戦いの幕が切って落とされたのであった。




