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SS第8話 裏切りの結果

私は人魚の国の大臣をしている。バッサという。


いや、していたといった方がいいのだろう。なぜならば、今日、人魚の国は魚人達に攻め込まれてなくなってしまうからだ。


私はシーサーペントをも支配するアイテムを持っているというとあるお方ならば、本当に人魚を人間にする薬を持っているのではないかと思った。どうしようもないと諦めていた生への絶望が、見苦しくもあがこうという生への執着に変わった。


人間と魔法で契約を結ぶ。我は人魚の国を魚人が攻め落としやすいように手引きする。うまくいったあかつきには、人間から私が人間になるための薬をもらう。失敗した時には私は薬をもらえない。私はなんとしても、魚人どもに人魚の国を攻め落とさせなければならない。


その後は、何度か魚人のボーマン将軍たちと密会を重ねた。結界は非常に強力だ。人魚であれば結界を素通りできるのだが、それ以外の生物や魔物は結界を通り抜けることができないようになっている。だが、そんな結界も生きた人魚と触れていれば、結界の入り口と呼ばれる場所であれば通り抜けることが出来る。


攻め込む日時と手順を決める。300名もの魚人の兵士と3匹のシーサーペントで国を包囲する。そこで出てきた人魚達をシーサーペントに一蹴させる。その後、結界内に引き上げるであろう人魚達を追撃すべく、200名の魚人の兵士と2匹のシーサーペントは隊列を組み、全員が1本のロープを手に持つ。そのロープの端を私が持っておくことで、そのロープに触れている者は全員が結界の入り口からならば、人魚の国に入り込むことが出来る。


残った100名の魚人と1匹のシーサーペントは逃げ出す者を始末する役目だ。若い女の人魚であれば需要が多いのだが、それ以外は価値が落ちるので殺してしまってもかまわない。逃げ出されて反撃をされる方がうっとうしいので、1匹たりとも逃がさないようにするつもりだ。



魚人どもが攻め込んでくる日がとうとうやってきた。これで私は人間になれる。なんとしても成功させなければならない。


あっけないほど簡単に陥落する人魚の国。もろい。もろすぎる。結界の力に頼りすぎた結果がこれか。反撃らしい反撃もなかった。今まで所属していた国だけに少しだけ複雑な感情が胸の中を渦巻く。だが、そんな感情も、生き残れるという希望の前に消えてしまった。


最後に結界を維持している女王がいる王の間にボーマン将軍達を案内する。女王は魚人と共に入ってきた私を見つけて、少しだけ驚愕し、その後はすぐに怒りに我を忘れたようだった。水の上級魔法を発動させようとしたので、捕まえた人魚どもを前面に押しだし盾にする。女王は魔法を取りやめた。


私は思わず声をかけてしまった。人間になれると思い浮かれてしまっている。

「結界なんてあっけなく破られるものなのですよ。これで人魚の国も終わりですね」


ボーマン将軍は女王を連れて行かせる。どこかに閉じ込めるつもりなのだろう。まだまだ女王には利用価値がある。




さて、それでは私は契約を果たしてもらうために人間に会いに行くことにしましょう。


「それではボーマン将軍、私はかの人間に薬をもらいに行くのでこれで失敬させてもらいますよ」


ボーマン将軍は「ああ、そうだな」とそっけない返事をする。しかし、魚人達が扉の前にいるために私は出て行くことができない。魚人たちは槍を構え私を取り囲む。おかしい。どういう事だ。


「すみませんが、皆さんそこをどいてもらえますか?」声がうわずる。


そんな中ボーマン将軍が話しかけてくる。


「裏切り者というのは、裏切るまでしか利用価値がないのを知っているか?」


何を言っているんだこの間抜けなツラをした魚人は。


「そうですか。ならば私は用済みということですか? しかし、魔法の契約を結んでいるので私を害することはできませんよ」


「そうだな。魔法の契約を結んだ者同士は、その契約を反故にするような行動や考えを巡らすことはできなくなる。ただし、それは魔法の契約を結んだ後からだ。魔法の契約を結ぶ前であれば、反故にするためにいろいろな策を巡らせておくことはできるのだ」


ボーマン将軍の言葉に私は苛立ちを隠せず声を荒げてしまう。


「何を言っているのです!? そこをどいてください!!」


「つまりはお前は用済みと言うことだ。お前が愚か者で本当に助かったよ」


私は胸に熱さを感じた。ボーマン将軍の槍が私の胸に突き刺さっている。なんだと。契約を結んだから私を害することは出来ないはず・・・・・・。


「信じられないと言った顔をしているな。最後に1つだけ教えてやる。貴様は人間と契約を結んだが、我が輩達とは契約を結んでいない。お前がいつ我が輩達と契約を結んでおきたいと言ってくるのかと思い心配しておったのだぞ」


ボーマン将軍が何かを言っているようだが、その声はすでに私の耳には入ってこない。体に力が入らない。こんなところで私は死んでしまうのか。なんのために私は・・・・・・。


「裏切り者の末路などいつも惨めなものだ」


ボーマン将軍の声が王の間にむなしく響いた。


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