第1話 動かない、動けない
体が動かない。まったく動かない。目も開かない。
なんだこれ!? めっちゃ焦るんだけど!?
周りに人がいるのか、何かが動いているような気配がするが、目が開かないからわからない。何がどうなっているんだ。まるで金縛りにでもあっているようだ。
ん!? 呼吸もできていないぞ!? まずい、これは死ぬんじゃないのか!?
フッフッ、ハー! フッフッ、ハー!
くそ、呼吸ができている気がしない! やばい、これはマジでやばい!!
・・・・・・10分後
うん、体も動かないし、呼吸もできてないけど、意識ははっきりしている。
なんだ、この状態は。目も見えないし、体の自由がきかないこの状態はめっちゃ怖い。
ちょっと整理してみよう。私は朝、通勤のため駅のホームにいた。電車が入ってくるところで、顔色の悪いおばさんが右手前にいることに気づいた。おばさんはそのまま電車に向かっていく。『えっ?」って思うのと同時に、ついおばさんに手を伸ばして引き留めようとしたら、すごい衝撃が襲ってきたんだ。そして、気づいたら今この状態・・・・・・。
死んでいると考えたら、つじつまが合う。
体も動かず、呼吸もしていない。この状態でまったく動じていない自分自身にちょっと引く。株をやっていたおかげか、あまり物事に動じなくなったのだよね。
まぁ、それはどうでもいいか。さて、死んだとしたら、この後どうすればいいんだろう。思考はできるが動けない。天使か死神でも来て、あの世に案内をしてくれるのだろうか。
まさか、このままって訳じゃないよね?