SS第5話 囚われし女王
私は人魚の国の女王、オーレンといいます。私の夕焼けのようなオレンジ色の髪の毛が名前の由来です。
私は今、王宮の離れに囚われています。
私たち人魚の国は、突如、シーサーペントを引き連れた魚人達に攻め込まれてしまいました。突然の事に対処できず、あっけなく私たちは敗北しました。結界は私たち人魚の認めた友人達しか通ることができないのに、どういうことか、魚人達はあっさりと結界を通り抜けてきたのです。
私たちは結界の力を過信しすぎていたのかもしれません。
戦いに敗れた私たちに待っているのは、魚人たちの支配を受け奴隷のように働かされる未来だけです。それは過去の戦いが物語っています。過去の戦いでは、私たち人魚が勝ったときは、魚人を隷属させ、酷使しました。魚人が勝ったときには、私たち人魚を隷属させ、酷使しました。互いに相手より自分が優れていると思い込み、相手を見下すのです。
下等な半魚の分際でと互いに思い合っているのです。はっきり言って、人魚も魚人も大差はないのですけどね。
そんな不毛な争いに嫌気がして、500年前に人魚と魚人は互いに不干渉という契約を結び遠く離れた所にそれぞれの国を作ったのです。それからは互いの姿を見ることは滅多になかったのに、なぜ、こんな事になってしまったのでしょう。
できるだけ多くの国民を逃がしたかったのですが、魚人達は1人たりとも逃がさないように、我が国を包囲していました。逃げようとした者はシーサーペントの餌食になってしまいました。王宮には1つだけ王族の脱出用の隠し通路があります。その通路には魔法がかかっていて、1人だけしか通れません。そして、その通路は安全だと思われるところまで長さが変わるのです。
私は一番幼い娘、ピンキーを落ち延びさせることにしました。この子は寂しがり屋で、すぐにおどおどする臆病な子ですが、海に愛されし子です。私以外にこの事実を知っている者はいません。だからこそ、この子を魚人たちに渡すわけにはいきません。この子の力は間違った使い方をすれば、世界的な危機を招いてしまうからです。
私は助けを呼んできてと、娘に逃げる言い訳を与えます。娘は臆病でも王族として逃げ出すわけにはいけないと考えているようだったからです。モジャモージャの魔法をかけ、娘を隠し通路に押し込みます。その後は隠し通路を封印の秘法を発動させ誰一人として通られないようにします。
古代から伝わる封印の秘法を使った扉は誰にも壊すことができません。信じられない耐久力があるからです。そして、日付が変わる時に元に戻ってしまうのです。頑丈さと回復を兼ね備えた封印の扉を壊せる者は存在しません。
娘を逃がせたとほっとしたと同時に、王の間の扉が開かれ魚人達がなだれ込んできました。私たちは負けてしまったのです。
ただ魚人の横に我が国の大臣がいるのを見つけてすべてわかりました。あの大臣が人魚を裏切り、魚人達を引き込んだのでしょう。私は頭に血が上りました。水の上級魔法を発動させようとした時に、魚人達が人魚を盾にしたのです。これでは攻撃ができません。
にやにやといやしい笑みを浮かべた大臣が私に話しかけてきます。私は死ぬことも抵抗することも許されず、王宮の離れに幽閉されました。国民達に反乱を起こさせないように、私を人質にしたのです。
海神様。どうか娘をお守りください。




