第21話 潜入
ピンキーの視線が痛い。
えっ、なにしてるんですか、人形様っていう感じの視線が痛い。我にとっても想定外の事態なのだ!
{ログ:【悟りしモノ】の効果により、動揺状態が解消しました}
シーサーペントの亡骸や魚人達の持ち物を確認したがたいしたものは持っていない。シーサーペントを使役しているのであれば何か特別なアイテムを使っているのかと思ったが違うようだ。
なんでシーサーペントを使役できているのだろう。魔法かな。魚人達のなかで一番体格のいい奴がマントを羽織っていた。隊長なのかもしれない。ピンキーにマントを渡し、全身をマントで隠させる。
我が人魚と一緒に歩いていたら、我が人魚を助けに来たと考えるかもしれない。人魚達を人質に取られたらやっかいだしね。我も考えているのだよ。むしろ、【考えるモノ】という称号をいつ得られてもおかしくないくらいに、考えているのだよ。
このままここに止まっていても、しかたがないので我は再び珊瑚の壁にそって歩き始める。ピンキーもマントにその身を隠し我に従って珊瑚の壁の周りを進む。
そのまま歩くもいつまでたっても城門がない。なぜだろう。
さらに歩くも城門がない。なんでだろう。そんなに広いのか人魚の国は。
さらに歩くと遠くの方にちょっとした山が見えてきた。近づいてみると積み重なった魚人だ。その側にはシーサーペントの亡骸もある。
ひょっとして一周した? 我ってば一周しちゃった? 立ち止まり、腕を組み、ううーむと首をひねる。どういうことだろう。この国には門がないんだろうか。そんな時にピンキーが声をかけてくる。
「あ、あの、人形様。周辺を調べるのはこのくらいにして国の中に入りませんか?」
我も入りたいんだが、入り口がないんだよね。どうしたものか。
とりあえず、頷いておく。
「では、行きましょう! 外から見たところ結界は健在なのですが、私と一緒なら入り口からなら通れるはずです。入り口は国の中心部の真上にあります」
なんと、入り口は上なのか。なるほど海中を泳げるのだから、わざわざ地面近くに入り口を作る必要はないね。今までの常識で物事を考えてしまってはダメだな。
我は頷き肯定を表す。いざ、行かん! 人魚の国へ。
トゥ! 入り口に向かうべくジャンプしてから、泳ごうと手足を動かす。こう見えても人間だったときは泳ぎは得意だったんだぜ。山田小のカエルと呼ばれるくらいに早かったものだ。
トスという音と共に我の両足が海底についた・・・・・・。
浮力がない? メタルな我には浮力がないのか!? 伊達にゴーレムじゃないってことか。どうしよう。どうすればいいんだろう。
とりあえず珊瑚の壁をよじ登る。簡単に上まで来れた。海の中だけどそこにはきれいな町並みがあった。どうやって作っているんだろう。さすがはファンタジー。さすがは異世界。
ピンキー曰く、「あそこに見える光クラゲが輪に並んでいるところが結界の入り口です」とのことだ。かなり遠いな。ジャンプしていけるかわからないな。届く気はしないが。結界が侵入者を阻むのなら、結界にへばりついて入り口まで行けるかもしれないし、行ってみるか。
エイヤッ! と、飛び上がる。放物線を描き、我は人魚の国に落ちていく。ピンキーが、「あ、あぶない!」と叫んでいるが、すでに賽は投げられたのだ。我には前進しかない。
ホワンとしたシャボン玉の表面のような見た目の膜が目の前に迫ってくる。これが結界か。当たると痛いかもなぁ。当たりたくないぜと思ったら、我の体を中心に淡い光の球体が発生した。
なんじゃこりゃ。そのまま結界をするりとすり抜け、そのまま下にあった家の屋根に着地した。光は結界をすり抜けたと同時に消え失せた。
これはもしかして【非接触】のスキルなのではなかろうか。当たりたくないと思ったから、我と結界が触れることなくやり過ごせたのかもしれない。
ふっふっふ。さすがは我。伊達にメタルゴーレムをやってません!
ピンキーも珊瑚の壁の上で、目を見開いて驚いている。そうだろう、そうだろう。びっくりしただろう。我も驚いたしね。ピンキーに向かってこっちに来いと手を振る。
とうとう我らは人魚の国に潜り込めた。あとは魚人達を退けるだけだ。




