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第20話 やっちまった

結論から言おう。6名ほど逃げられた。最初に逃げた魚人を含めると30人中7人に逃げられた。あとの魚人は全員ビンタ一発で仕留めた。大丈夫。殺してはいない。瀕死なだけだ。


さてロープもないしどうしよう。瀕死だから逃げ出せるとは思わないけど。うん、このままほっとこう。本当は事情を聞きたいのだけど、とても聞ける状態じゃない。


ままならぬものだな。現実とは常に非常だ。


シーサーペントを珊瑚の壁から引きずり出す。シーサーペントもまだ気を失っている。とんとんとシーサーペントの頭をたたく。ぴくっと震えるシーサーペント。でも起きる様子はない。


仕方ない。ちょっと待とう。時間が経てば経つほど魚人達がまた来る可能性が高まっていく。でも、それはウェルカム。壁の内側での戦闘より、このあたりの方が戦いやすいからね。


魚人達からしたら、我の出現は理解できないだろう。そしていきなり戦闘になったわけだが、魚人達は自分たちが手を出したから我から反撃を受けたと思うのではないだろうか。そう思ってくれるとうれしいな。ピンキーの姿は見られていないはずだから、人魚と我を結びつけては考えまい。


しばらく待つもシーサーペントも起きる様子がない。珊瑚の壁から出たり入ったりする小魚たちを見ているので、待つのも苦ではない。ただしピンキーがうろうろとやきもきしているようだ。「早く行きましょう」と言ってくるが、状況把握のため話を聞くのだとジェスチャーで伝える。「うぅー、仕方ないですね」と言って我にぴったりと寄り添い、シーサーペントか魚人が目を覚ますのを待っている。まぁ、怖いんだろう。



はー、癒やされるわ。目の前の小魚に餌をあげたい。おっ、ヤドカリだ。このあたりにもヤドカリがいるんだな。かわいいわ。ツンツンとつつくと殻に潜ってしまった。ごめんよ。悪気はないんだよ。



「あッ!」とピンキーが我の耳元で叫ぶ。「い、今シーサーペントの目がちょーっと開いたような気がします!」とシーサーペントの方を指さして叫んでくる。シーサーペントの方を見てもさっきと状態は変わっていない。見間違いじゃないのかね。シーサーペントに近づき、とんとんとシーサーペントの頭をたたく。ぴくっと震えるシーサーペント。でも起きる様子はない。


我は両手の掌を上に向け肩の付近まで持ち上げ、お手上げのジェスチャーをピンキーにしてみせる。ふっふっふ。我のジェスチャーのバリエーションは常に増えているのだよ。ピンキーは、「でもでも」と渋っているが我は再び小魚観賞に戻る。


小魚を観賞している中、ちょっと視線をシーサーペントの方に向けると、シーサーペントはぴくっと震えてうっすらと開いていたまぶたが閉じられる。


!? 見たよ。見たからね! うっすらと目が開いてたよ!


{ログ:【悟りしモノ】の効果により、興奮状態が沈静化しました}


ひょっとしてこのシーサーペントは気絶しているフリをしているのではなかろうか。ふっふっふ。我の目はゴーレムアイ。誰も我の目を欺くことは出来ないぜ。


{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}


シーサーペントに近づき、とんとんとシーサーペントの頭をたたく。ぴくっと震えるシーサーペント。でも起きる様子はない。ふっふっふ。お前がすでに目覚めているのはわかっている。我を見くびるなよ。


我は拳を振り上げ、シーサーペントの頭に拳を繰り出そうと振りかぶる。


シーサーペントはすでに目覚めているのだから、我の拳を避けるために起き上がるだろう。その後でシーサーペントから事情を聞くのだ。相手の言っていることは【通訳】で理解できるからね。


まだか? まだ起き上がらないのか? 本当に殴るよ? シーサーペントよ、それでいいのか!?


えいや! と、シーサーペントの頭に拳を繰り出す。


ドゴン!!

{ログ:クリティカルヒット! ゴーレムはシーサーペントに300のダメージを与えた}

{ログ:シーサーペントは息絶えた}


・・・・・なんてこった。やっちまった。まさか起き上がらないとは。どうして死に急ぐのだ。たった一つの生命。もっと大事にするべきだろう。なんてこった。


{ログ:【悟りしモノ】の効果により、抑鬱状態が活性化しました}


目をつむってたら、周りの状況はわからない。感知系のスキルや心眼みたいなスキルを持っていればわかるのかもしれないが、シーサーペントは持っていなかったのだろう。とんとんとされるだけとタカをくくってたら、いきなりいいのをもらってしまって息絶えてしまったということか。


自然界とは実に恐ろしい。弱肉強食の世界だ。我はそっとシーサーペントの亡骸に向かって手を合わせ冥福を祈るのだった。


さて、どうしよう。魚人達は目を覚まさないし、事情聴取ができないぞ。



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