第17話 人魚の国に到着
ふー、冷静に、冷静に。落ち着くのだ、自分。Be Cool。
【愛でるモノ】という称号を得てしまったことにより、激しく動揺してしまった。動揺→解消→動揺→解消→動揺→解消と【悟りしモノ】の効果が何度も発動するくらいに。
小さく弱き者を守るのは人として当然なのだ。まぁ、我は今ゴーレムなんだけど。
そして、それと同じく小さく愛らしい者を愛でるのも、また人として当然なのだ。我はゴーレムだけどね。
新しく獲得した【非接触】。どんなスキルなのだろう。文字から考えると触ることができなくなるんじゃないかと思うが、試しに使ってみる対象がない。
軽い気持ちでピンキーに使って、{ピンキーが死亡しました}なんて結果になったら、目も当てられない。
とりあえずは保留にしておこう。
ーー4日後
相も変わらずピンキーはよくしゃべる。どうやらピンキーは我が視線を感じた頃から、我の後をつけ回していたらしい。
「ずっと後をつけていたのですよ」と笑顔で言われたときには、ちょっと引いた。
これはいわゆるストーキングというやつだよね。日本だったら犯罪だよ。まぁ、こんなかわいい人魚につけ回されるなら、人によってはご褒美かもしれない。
あと我の周りをぐるぐるとつけ回していたのは、ずっと声をかけようと思いつつも勇気を出せずにいたからだそうだ。どれだけ引っ込み思案なんだ。ピンキーはこう見えて王女だから、箱入り娘として大切に育てられた影響なのかもしれないな。
我はピンキーの話に耳を傾けつつ、一人頷いていた。
ーー2日後
ようやく人魚の国が見えるくらいになってきた。海の中だから見通しはそんなに良くないんだけど、このあたりは怖いくらいに水が澄んでいる。
さすがは人魚の住まう国。
人魚の国が近づくにつれ、ピンキーの口数が減っていく。その表情からは不安と緊張が読み取れる。戦いに負けた後の国は悲惨だからね。それを思えば当然だろう。
ちょっと大きな珊瑚礁の前に来た。どうやらここには人魚の国の王宮につながる隠し通路があるらしい。なるほどね。この通路を使って女王はピンキーを逃したのか。
「さぁ、行きましょう! 人形様!」
ちなみにピンキーが我を呼ぶ時の名称は人形様だ。我のジェスチャーでは名前を伝えることが出来なかった。文字も書けないし、名前を伝える方法がないのだ。
さぁ、さぁと急かしてくるピンキー。でも、どう見ても通路が小さい。我にはとても通れそうにない。
ひょっとして子供用? この通路が小さいから、ピンキーしか通れなかったとかじゃないよね。さすがにそれでは隠し通路に意味がない。人魚は人間大の大きさなのだろうと思っていたが、我の想像よりも小さいのかもしれない。
隠し通路の入り口に体を近づけ、とても通れるものではないとアピールする。ピンキーもまさか、そんな、とかつぶやきつつ、必死に我を押し込もうとする。とてもじゃないが、入れる気がしない。
さて、どうしたものか。