第16話 人魚の国へ
小さな人魚はその後は実にうれしそうに我の周りを泳ぎ始めた。実にかわいらしい。
やはり幼い時には庇護欲をかき立てるために、生物はかわいくあるのだろう。これは宇宙の一つの真理だと思う。
なんてったって我は【悟りしモノ】だからね。宇宙の真理にも思いが及ぼうというものだ。
・・・・・・我はロリコンじゃないよ。
大事なことだから2回言うけど、我はロリコンじゃないよ。
ちなみにこの小さな人魚は結構おしゃべりだ。名前はピンキーというらしい。お菓子みたいな名前だ。なんでも髪の毛がピンクなのでピンキーと名付けられたとのことだ。
なんという安直なネーミング。日本だったら黒髪の女の子に黒子ってつけるようなものだ。異世界の習慣はわからないね。
ピンキーの話を聞いてみると、人魚の国に魚人たちが攻め込んできたということらしい。シーサーペントを3匹も引き連れた300人の魚人を相手に、人魚の国はあえなく陥落。魚人達に支配されてしまったと言うことだ。
ピンキーは、シーサーペントはものすごく強くてどうしようもない相手なのだと、身振り手振りを交えて熱く説明してくれる。
「シーサーペントはその堅い鱗でほとんどの攻撃をはじき返し、水のブレスは強力であらゆるモノを壊してしまうのです! シーサーペントを倒そうと思ったら、国の兵士が百人単位で命がけで挑んで倒せるかどうかというモンスターなのです!」
でも、ワンツー・ドンで倒せるような相手なんだけどな。もしかしなくても我はすごい強いのではないだろうか。
そんな中、人魚の国の女王がピンキーだけを逃がしたらしい。なんでも助けを呼んできてと言って、海藻で姿を隠すモジャモージャの魔法をピンキーにかけて落ち延びさせたそうだ。
こんな小さい子を1人だけ落ち延びさせるとは、ある意味すごいな。女王。でもなんで女王がピンキーを逃がすんだろうね。
ピンキーの言葉を我は理解できるけど、我からピンキーにはジェスチャーでしか意思を伝えられない。声が出せないのは本当に不便だ。
我のジェスチャーのバリエーションは正直乏しい。今のところ、首を縦に振ることで肯定を表し、首を横に振ることで否定を表し、首を傾けることで疑問を表すくらいしかできない。あとは海底に絵を描いて意思疎通をはかるくらいだ。人間だった時は顔の表情や視線でも意思を表すことができたけど、今はゴーレムだからその方法は使えない。なくなって初めてわかるありがたさだね。
うれしそうに話を続けるピンキー。最初はつっかえたり、よく噛んでいたけどなれたのか非常によくしゃべる。
「モジャモージャの魔法はとてもむずかしくて人魚の国でも使える人がものすごく少ないのです。今モジャモージャの魔法を使えるのは女王であるお母様だけなのです」
とても誇らしげにモジャモージャの魔法について話してくれるピンキー。我もほんわかするよ。今の話でわかったけど、女王はピンキーのお母さんだったんだね。だからピンキーを逃がしたんだ。
女王がピンキーって名付けたのか。残念だな。実に残念だ。
そんな話を聞きながら我と小さな人魚ピンキーは人魚の国を目指すのだった。
{称号【愛でるモノ】を得ました}
{称号【愛でるモノ】を得たことにより、スキル【非接触】を得ました}
な、なんだと!? どういうことだ!?
{ログ:【悟りしモノ】の効果により、動揺状態が解消しました}
【愛でるモノ】だと!? これはまるでロリータ・コンプレックス、略してロリコンのようではないか!?
{ログ:【悟りしモノ】の効果により、動揺状態が解消しました}
我はロリコンじゃないよ!
大事なことだから2回言うけど、我はロリコンじゃないよ!
{ログ:【悟りしモノ】の効果により、動揺状態が解消しました}
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名前 ゴーレム
種族 メタルゴーレム
Lv 10
ステータス
最大HP:578
最大MP:551
攻撃力:255(+0)
防御力:255(+0)
素早さ:213
頭 脳:209
運 :255
スキル
【ステータス固定】
【復元】
【覚醒】
【悪あがき】
【通訳】
【非接触】
称号
【変わらぬモノ】
【悟りしモノ】
【諦めぬモノ】
【声のトモダチ】
【愛でるモノ】
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