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第126話 再会

 我はゴーレムなり。


 我らを取り囲んだ狼を1匹ずつ見てみると、見覚えのある狼が2匹いた。あら、狼に取り囲まれたと思っていたけど、犬だったのかと我は一人で納得する。狼じゃなくて犬で良いのだよね。


 我の称号には【犬のトモダチ】ってあるわけだし。狼と犬の違いなんて我にはよくわからないから、犬ということにしておこう。


 我はリヤカーから手を離し、狼のような犬の群れの前へと進み出る。


『ひさしいな、イチロウ、ジロウ!』


 我は大きな声で声をかけるが、反応がない。あれ、違ったのだろうか? 2匹の犬は、身を低くし、すんすんと臭いをかぐように鼻を動かす。


「ガ、ガガウ?」

(ま、まさか、この臭いは)


「ガウガウ。ガガウ、ガッガウ!」

(ああ、忘れるはずもねぇ。あのちんちくりんな銀色の身体は、ダンナに違いねぇ!)


「ガガウ! ガウ!」

(やろうども、この方達に手出しは無用だ!)



「「「「「ガウ!!」」」」」

(((((わっかりやした!!)))))


 おっ、やっぱり、イチロウとジロウなのだ! あぁ、我の声が聞こえてなかっただけなのだな。


 我はイチロウとジロウに向かって右手を挙げる。ジロウが、はっとしたように近づいてきて、我の右手にハイタッチする。おお、仕込んだ芸を忘れてなかったのだ!


 イチロウは、ジロウに先を越されてくやしそうにぐるるとうなっている。しかたないと我は左手を挙げる。


 今度はイチロウがさっと近づいてきて、我の左手にタッチしてくる。舌を出して、はっはっはとイチロウもうれしそうなのだ!


 我とイチロウ、ジロウは手を合わせて満足げに頷きあった。


「ガウ! ガガウ!」

(銀のダンナ! お久しぶりでさぁ!)


「ガウガウ、ガウン?」

(ダンナはなぜ、ここにいるんですかい?)


 我はうむとうなずき、ハクの方を振り返る。


『ハクよ、イチロウとジロウの言葉がわかるか?』


「はい、私も狼の獣人なのでわかります」


『そうか、ならば、この者達に伝えてくれ。我らは、月の狼の部族のもとへ行きたいのだ、と』


 ハクが我の言葉にうなずき、イチロウとジロウに話しかける。イチロウとジロウはハクの言葉に熱心に耳を傾けている。


「ガウ。ガガウ!」

(ダンナ。我らにはよくわかりやせんが、ご主人なら知ってるかもしれねぇ!)


「ガウガウガウ?」

(ご主人のところまで一緒に来ますか?)


 おお、ご主人というとウルフのところか。なるほど。あやつならば知っていそうな気がするな。我はイチロウとジロウに向かって案内を頼むと頷いたのだった。



 ◆



 ウルフのところに向かって案内をしてもらいながら、イチロウとジロウの話に耳を傾けていると、イチロウとジロウは群れでボス的なポジションにいるらしい。


 一応、イチロウがトップで、その次がジロウみたいな感じのようだ。こやつら、なかなかやりおるな。


「ガガウガウガウ!」

(ダンナ、草原は獅子どもが我が物顔で歩いてるんですぜ!)


「ガウ。ガウガーウガウガ」

(前まで我らの縄張りだったのに。弱肉強食とはいえ、たまりませんぜ)


 イチロウとジロウがやってられないという風に首を振りつつ、近況を説明してくれる。


「ガウガーウ。ガガガウ」

(特に赤いたてがみの男に率いられた獅子どもが強いんでさぁ)


「ガウ、ガッガガウ」

(ご主人たちと戦いを挑んだら、命からがら逃げるので精一杯ですよ)


「ガウガウガ」

(あの赤いたてがみはやばかったな)


「ガウ。ガガッガウガ」

(ああ。でも、銀色のダンナほどじゃねぇや!)


「ガガウ!」

(違いねぇ!)


 ガガウと笑いあうイチロウとジロウ。ほう、赤いたてがみというと赤き獅子の事か。我がそんなことを考えていると後ろからハクが声をかけてきた。


「あなたたち、赤き獅子を知ってるの?」


 イチロウがちらりとハクを見た後、我の方を見てくる。なんだかわからないが、我はとりあえずこくりと頷く。


「ガウ。ガガガウ。ガウガウガーウン」

(ダンナの頼みじゃしかたがねぇ。知ってるというか、今、ご主人たちが戦っているのが赤き獅子なんだぜ)


「そうなんだ。私も赤き獅子と戦うためにここに来たの」


 我はハクの言葉に、えっ!? と驚く。そういえば、なんでハクがこの大陸に来たかったのか知らないのだ。生まれ故郷に帰ってみたいだけかと思ってたよ。



 イチロウがじろりとハクを見る。


「ガウ。ガガウ」

(嬢ちゃんがか。ダンナがいるからなんとかなるだろうぜ)


 イチロウはハクから視線を外し、黙って歩き続けた。



 ◆



 しばらく道なき道を進むと、簡単なテントのようなものがいくつも張られている場所に来た。どうやら、ここにウルフたちがいるらしい。テントの周りには獣人たちがいるが、ウルフの姿は見えない。


「ガウ、ガウ!」

(ご主人、銀色のダンナですぜ!)


 ジロウが1つの大きなテントに近寄って声をかける。「なんだって」と言いながら、テントから1人の獣人が顔を出した。


 おお、あれは見覚えがあるのだ。ウルフだよ。ウルフ。


 我は久しぶりだなと右手をウルフに向かって挙げる。ウルフが我に近づいてきた。


「お久しぶりです、銀色の方。おや、今はお連れの方がいらっしゃるのですね。初めまして、俺の名はルーフと言います」


 ウルフがハク達に自己紹介をする。あれ、今、俺の名はルーフって言った?


 んん? ウルフはルーフっていう名前なの? ウルフじゃなかったっけ? ルーフか、ルーフね。まぁ、1文字違いだから、ほとんどあっていたのだ。我の記憶力もまんざらではないのである。


 我がひとりでうむうむと頷いていると、ハクも自分の名前をルーフに告げている。


『ハクよ、ルーフに月の狼の部族について聞いてみたら良いのだ』


 ハクが我の言葉にこくりと頷き、ルーフに質問をする。


「ルーフさん。私は月の狼の部族にいたのですが、月の狼の部族について何か知っていたら教えてくれませんか?」


 ルーフがすこし険しい表情をし、「ここでは、なんなので」と言って、大きなテントへと我らを案内した。



 ◆



 テントの中で、我らはルーフと向かい合って座る。


「銀色の方、ハクさん。今、この獣の大陸は赤き獅子によって支配されているのをご存じですか?」


 我とハクはルーフの問いかけに頷く。


「赤き獅子はその圧倒的な力により、獣の大陸に住むほとんどの獣人の群れを支配下に置きました。抵抗する者もいたのですが、今では、片手で数えられる程度の群れしかありません」


 ふむふむと我は頷く。


「月の狼の部族は、赤き獅子の前に膝を折ったはずです。私は、赤き獅子に生け贄として差し出されましたから」


 !!? な、なんと!? ハクは生け贄になったことがあるのか!?



{ログ:【悟りしモノ】の効果により、衝撃状態が解消しました}


 何がどうなって、あの海の上の奴隷船にいたのであろう。人の過去を根掘り葉掘り聞き返すのは無粋なのだ。そっとしておこう。


「よく無事にいられましたね。他の群れでも同じように赤き獅子に生け贄として差し出された者はいますが、一人たりとも帰ってきていません」


「殺されているのでしょうか?」


 ハクの問いかけにルーフは首を横に振る。


「わかりません。ただ帰ってきた者はいないことだけは確かです」


 なんか赤き獅子はロクでもないやつのような気がするぞ。我とハクが黙っているとルーフが続けて、口を開く。


「月の狼の部族でしたね。彼らは今、もともとの縄張りだったところには一人もいません」


「それは何故でしょうか?」


「赤き獅子が天にも届かんとする巨大な塔を建てるために、支配下の者達を強制的に働かせているのです」


 天にも届かんとする塔とな。バカと煙は高いところが好きというのは、案外当たっているのかもしれぬ。我が一人で赤き獅子の性格を分析していると、ハクとルーフの会話が進んでいく。我からは特に言うこともないので、ハクの横に座ってふむふむと頷くに留めておいた。


 近々、赤き獅子が塔の建設を視察に来るというので、その機会にルーフ達は襲撃をかけるらしい。


 獣人というのは強さ至上主義らしいので、赤き獅子を倒せたら一発逆転が可能なのだそうだ。マジかって驚いたけど、獣人達がそれでいいのなら我からは特に何かをいう必要はない。


 ハクもルーフたちと一緒に襲撃に参加するという。月の狼の部族の者と会うにしても、その方がいいのであろう。ハクの望むようにすればいいのである。


 我はハクを見守るだけだ。


 こうして、我らは赤き獅子を襲撃する時をルーフ達と一緒に待つことになったのだった。



 ◆



 ジスポとイパアードはないわーポーチから顔を出し、ゴーレムを取り囲むイチロウ、ジロウの群れをじっと見ていた。


「ちゅちゅちゅ」

(あの犬たちの僕を見る目が怖いのです)


「あの目はやばいね。口からよだれをたらしているし」



 そんなジスポとイパアードに視線を向け、イチロウとジロウは舌なめずりをしながら会話をする。


「ガウガウ」

(旨そうな匂いがするぜ)


「ガガウ」

(おう。ダンナのおやつなのかもしれないぜ)


「ガガガウ」

(分けてくれるかな)


「ガッガガウ」

(ダンナが食べ出したら、頼んでみようじゃないか)


「ガウ」

(そうだな)



 イチロウとジロウの言葉は聞こえていないが、背中に悪寒が走りブルリと身体を震わすジスポとイパアード。


「ちゅちゅ」

(やばいのです。このポーチから出たら、捕食されそうですよ)


「ああ、このポーチの中で大人しくしておこう。ゴーレムと一緒なら大丈夫のはずだよ」


 ジスポとイパアードは頷きあって、ないわーポーチの中へと潜っていった。

<おまけ>


 ジスポとイパアードはないわーポーチから顔を出し、ゴーレムを取り囲むイチロウ、ジロウの群れをじっと見ていた。


「ちゅちゅちゅ」

(あの犬たちの僕を見る目が怖いのです)


「あの目はやばいね。口からよだれをたらしているし」



 そんなジスポとイパアードに視線を向け、イチロウとジロウは舌なめずりをしながら会話をする。


「ガウガウ」

(旨そうな匂いがするぜ)


「ガガウ」

(おう。ダンナのおやつなのかもしれないぜ)


「ガガガウ」

(分けてくれるかな)


「ガッガガウ」

(ダンナが食べ出したら、頼んでみようじゃないか)


「ガウ」

(そうだな)



 イチロウとジロウの言葉は聞こえていないが、背中に悪寒が走りブルリと身体を震わすジスポとイパアード。


「ちゅちゅ」

(やばいのです。このポーチから出たら、捕食されそうですよ)


「ああ、このポーチの中で大人しくしておこう。ゴーレムと一緒なら大丈夫のはずだよ」


 ジスポとイパアードは頷きあって、ないわーポーチの中へと潜っていった。

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