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第125話 獣の大陸チャオオイ

 我はゴーレムなり。


 コンコンに戻り、獣の大陸についての情報を集めたところ、チャオオイという名の大陸らしい。チャオオイ? どこかで聞いたことがあるなぁとしばし考えてみた。


 我は、あっと思い出す。


 イチロウとジロウと一緒にいた、なんだっけ、ウルフだったっけ? うむ、ウルフという名前だったと思う。風の狼の部族とか言ってたし。狼はウルフだから間違いないね!


 そのウルフがチャオオイに住む狼の一族とか言ってたのだよ! そうか、ハクはチャオオイ出身か。


『ハクよ、おぬしは風の狼の部族というのを知っているか?』


 ハクは我の問いかけに首を左右に振る。


「ごめんなさい、私はあんまりよその部族については詳しくないからわかりません。私は月の部族の出身だから、風の部族というのもあるのだと思いますけど」


『そうか、まぁ、獣の大陸に行ってみればわかるか。それでは獣の大陸を目指そうではないか!』


「はい!」


 こうして、我らは今度こそ本当にコンコンを後にしたのだった。



 ◆



 獣の大陸チャオオイは一応、陸続きなので歩いて行けると聞いたので、陸路を進むことにした。


 我が引くゴーレムリヤカーの足をもってして3ヶ月ほどかかった。休むことなく走っていたのだけど、なかなかに遠かったのだ。


 この細長い半島の先に見えるのがチャオオイらしい。今は潮が満ちているので海で分かたれているが、潮が引けば歩いてわたれるそうなのだ。


 我らは潮が引くまで、その場で休むことにした。



 ◆



 我らはようやく獣の大陸チャオオイに到着することができた。


 ここまで来たのはいいが、これからどうしよう。


『ハクよ、ここが獣の大陸らしいが、見覚えはあるか?』


 ハクは首を左右に振る。


「ありません。私は子供のころ海自体見たことがなかったから、もっと大陸の内部の方に住んでいたのだと思います」


 ハクもあまり獣の大陸内について詳しく知らないらしい。我と出会った時は小さかったし、しかたないね。


 獣の大陸に来る前にチャオオイ内部の地図でも入手できれば良かったのだけど、チャオオイの地図は出回っていなかったのだ。


 なんでも赤き獅子という赤いたてがみのものすごい強い獣人が、獣の大陸を統一するために戦争を始めて以降、情報があまりでてこないらしいのだ。奴隷商人がたまに獣の大陸に向かう程度らしい。噂では獣の大陸は赤き獅子がほぼ統一しているという。ただ赤き獅子の支配をよしとしない者達が独自の群れを組んで抗戦しているということだ。


 まったく、いつの世も戦いなのだ。


 我らはとりあえず、道に沿って歩いてみることにした。ちなみに我は【姿隠し】を発動して、他の者に見つからないように注意している。我が引いているリヤカーにも姿隠しは有効なので、心のきれいじゃない者にばれる心配はないのだ!


 我も無用な戦いは避けたいからね。



 ◆



 道に沿ってしばらくすると道が2つに分かれていた。


 うーむ、どっちに行こうかな。右の道には足跡がたくさんあるのだ。左の道にはあまり足跡がない。こういう時は足跡がたくさんある右側に行く方がいいだろう。我は右の道に進もうと足を一歩踏み出す。


 この時、我の今まで積み重ねてきた経験が、脳裏にきらりと輝いた。


 我は今までこっちだと思った方に進み、この世界に裏をかかれる事が多かった。腹話術の時も、裏をついたつもりが裏の裏で表になってしまっていたのだ。


 つまり! 我の考えの裏をかけば、我が望むところにたどり着けるはずなのだ!


 ふっふっふ。ぬかりなし! 我の考えにぬかりなし! 世界よ、もう我はおぬしに裏をかかれる事はないぞ!


 我は右に進もうとした足をひっこめて、左の足跡が少ない方へと向かうことにした。



 ◆



 な、なんかどんどん木々が生い茂ってきたのである。


 これは、人が多いところで情報を集めた方がよかったのだろうか。


 いや、ここまで来たのだ。突き進もう。



 ◆



 が、崖なのである。この先はこの崖際の道を歩いて行かねばならぬのか……。


 ハクにリヤカーを魔法のカバンの中にしまってもらい、崖際の道を進んでいくことにした。ハクと手をつないで行けないので、【姿隠し】はオフにした。


 我の足に蹴られた石が崖の下へと落ちていった。ふ、深い。我は飛べぬから、気を付けねば。


 ないわーポーチから顔を出していたジスポとイパアードは顔を青ざめさせる。


「ちゅちゅちゅ」

(お、落ちたら大けがしますね)


「そうね、私たちは、ポーチの中でおとなしくしておこう」


「ちゅちゅ」

(そうするのです)


 そういってジスポとイパアードはないわーポーチの中へと潜り込んだ。我はジスポ達の話に耳を傾けながら、ゆっくりと崖際の道を進む。ハクも我の後をついて崖際の道を歩き出す。


『気を付けるのだぞ、ハク』


「はい。このくらいのところなら大丈夫です」


 ハクが笑顔で返事をしてくれた。すごいのだ。よく怖くないのだなと感心していると、足を踏み外しそうになった。


 我は慌てて、壁をガッと掴み、落ちるのを防いだ。


 ふいー。危なかったのだ。


 我が一息ついていると、崖がビキビキと音を立て始める。


「ご、ゴーレム! 崖が崩れそうです! 急ぎましょう!」


 ハクが慌てて声をかけてくる。我は、えっ!? と驚きながらも、壁を見る。たしかに徐々に亀裂が大きくなっている気がするのだ。


 ぎゃふー!!


 我は慌てて、崖際の道を走り出した。ハクも我に続いて走っている。


 我らの後ろからは、崖が崩れ始める音がし始めた。



 ◆



 なんとか、危機を乗り切った。


 我らは無事に崖際の道を通り抜けることが出来た。


 道は森の中へと続いているが、あまり人が通っているような形跡がない。これは、裏をかかない方がよかったかもしれぬと、我は内心焦りを覚える。


 我の考えの裏をついたはずなのに、こんな結果になろうとは。異世界、おそるべし。


{ログ:【悟りしモノ】の効果により、動揺状態が解消しました}


 まぁ、これからは深く考えずに、直感に従って行動していこう。ハクにリヤカーを出してもらい、ハクたちをリヤカーに乗せ、我らはそのまま森の中へと進んでいく。



 ◆



 森の中をしばらく進むと、ハクが辺りを警戒し始めた。


 ん? 何かあるのだろうか。我も周囲を見回す。我らの姿は、今【姿隠し】をして……いないのだ!


 崖際を進むときにハクと手をつないでおけなかったので、【姿隠し】を解いていたよ。崖もいきなり崩れるから、渡りきった後も驚いて忘れちゃってたのだ。


 我は危ない危ないと思いながら、【姿隠し】を発動する。


 しかし、ハクの警戒は解けない。


「ゴーレム、今、私たちは囲まれているようです」


 な、なんだと!? 我には全然わからないぞ。我は少し早足でその場から動きだす。


『今、【姿隠し】を発動しているが、まだ追ってきているか?』


「はい。どうやら、人ではないみたいです。一定の距離をとったまま追ってきています」


 なんと、【姿隠し】を発動しているのに、追跡できるというのか。何者なのだ!? 我はリヤカーを引きつつ、辺りを見回す。


 むっ、我がゴーレムアイが視界の隅に黒い物体を捉えたのだ! 我が、ゴーレムアイに捉えられぬ者はない! 


{ログ:ゴーレムアイというスキルはありません}


 くっ!? まだか!? まだ無理なのか!!


 我がゴーレムアイを今だ使えぬ事に焦りを覚えていると、森の中から獣の遠吠えが聞こえてきた!


「ガウォオオオオオオオオオオオオオオン!!」

(やろうども、やっちまうぞ!!)


「ガウガウ! ガガガウォオオン」

(おうよ! 相手は少ねぇ! 行くぞ、てめぇら!!)


「「「「「ガウ!!」」」」」

(((((わっかりやした!!)))))


 おや、この声は。聞き覚えがあるのだ。我がむむむと目をこらして辺りを見ていると、ハク達は獣が襲ってくるのかと思って身構えている。


 そんな我らを取り囲むように、狼の群れが現れたのだった。

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