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第120話 予選会

 我はゴーレムなり。


 鳥人族の国ファルコンコンにようやく辿り着いた。エルフ達の馬車に速度を合わせていたので、結構な日数が掛かってしまった。


 ファルコンコンの首都でもある大都市コンコンの中に入ったところで、エルフ達とは別れる事にした。世話になったと礼を伝えて、我らは武闘大会の受付をしている場所に向かう。


 鳥人族を初めて見たけど、鳥のような頭に人の身体をしている。翼は背中に生えているのではなく、腕が翼になっているようだ。翼の先には手があるので、人と同じように道具を使うこともできるのだろう。


 空を見上げると、飛んでいる鳥人もいるから、あの翼は飾りではないようだ。



 ◆



 武闘大会の受付で我とハクの登録をしようとした。しれっといけば登録できるかもしれないから、ファーストコンタクトは変装せずに行ってみた。


「すいません。魔物は出場できません」


 なっ!? や、やはりか。やはり、我は無理なのか。これは変装してこなければ!?


{ログ:【悟りしモノ】の効果により、衝撃状態が解消しました}


 我が衝撃を受けている間にハクの選手登録は問題なく終わったようだ。受付の者が簡単な説明をしてくれているので、我もハクの横に移動して聞く。


 どうやら、かなりルールがゆるい何でもありの大会のようだ。大会というか、古代ローマの剣闘士の試合を思い浮かべてしまうような内容だった。


1)予選会があって16名だけが本戦に出場できる。シード枠などはない。

2)武器や魔道具に制限はない

3)戦闘不能(死亡含む)になるか、降参したら負け。大会に参加する場合、死んでも文句を言わないこという誓約書にサインをする必要がある。

4)無様な戦いをする場合は審判が負けにする場合がある


 他にもいろいろ言っていたけど、たぶん、大事なのは上の4点くらいのはず。とにかく最後にリングの上に立っていたら勝ちのようだ。武器や魔道具に制限がなくていいのかと思って受付に確認してみると、それも含めての実力勝負ですと言われてしまったのだ。


 ふっふっふ。そうかそうか。これならば、我が出場するまでもなく、ハクが優勝するであろう。


 なんといってもハクにはレガリアがあるからな。レガリアの防御能力はなかなかすごいのだ。全力じゃないなら、我のラインライトすら防ぐからな。


 受付から「予選会は1週間後ですので、また指定の場所に集まってください」と案内されて、受付は終わった。我が変装をして出場するまでもないな!


 我らは宿を探しに、コンコンの中を探索することにした。



 ◆



 やはり祭りの時期だけあって、宿は宿泊客で一杯だった。そのため、開いているのはお値段が高い部屋ばかりだった。我らには金ならある! 我らはかなり良い部屋にとりあえず2週間ほど宿泊することにした。


 宿が決まったので、冒険者ギルドに行ってみた。1週間ほど時間があるので、適度に運動をしておかねばなるまい。


 我らが冒険者ギルドに入ると絡まれてしまった。武闘大会に参加するためにファルコンコンに訪れている者も多いから、血の気が多い冒険者がそれなりにいるらしい。


 我はしかたないので、パシッと叩いて黙らせた。


 10人ほど叩いて黙らせたら、なぜか我らはギルドの奥に連れて行かれて、注意されてしまった。解せぬ。


 しかし、こんな時もブラックカードは有効だったのだ。受付嬢に我は冒険者だよと示すために、ブラックカードを提示する。受付嬢は最初は首を傾げ、確認してきますと行って部屋を出て行った。


 ハクに何か良い依頼があったかを確認したが、めぼしい依頼はなかったようだ。


 しばらく待つと、ドアがノックされて、がたいのいい男と先ほどの受付嬢が青ざめた顔をして入ってきた。我が視線を向けると、受付嬢が「ごめんなさい、ごめんなさい」と泣き出した。


 なんだろう?

 我がとても悪いことをしているような気持ちになってくる。


 どうやら、ブラックカードの意味を知って、受付嬢が動揺しているようなのだ。我は<落ち着け>とノートに書いて示す。しかし、受付嬢はごめんなさいと謝り続ける。我は<気にしていない>とノートに示し、困ったようにがたいのいい男に視線を向ける。


 がたいのいい男が、受付嬢に「もういいから下がって休め」と伝えて、受付嬢が下がって出て行った。


「すまなかったな」と、男が我に言ってくるので、先ほどと同じページの<気にしていない>を見せる。この街に何か用があるのかと聞かれたので、<武闘大会に出るために来た>と伝える。


「しかし、ブラックカードを持っていても、魔物だから断られただろう」と、男が聞いてくるので、我はうむと頷いた。まぁ、ハクが出られたからいいのだけどね。


「もしも、どうしても出たいというのであれば、冒険者ギルドとして、推薦してやろうか? 大会本部にかけあってもいいぞ」


 えっ!? マジで!? そんなことできるの!!!


 我が驚いて、男を見つめていると、男が苦笑いをしながら説明してくれた。


「いや、ゴーレム殿にむちゃされるよりは、望みを叶えた方がいいと思っただけさ」


 わふー! 冒険者ギルドに来て良かったのだ! ラッキー、ラッキー!!



{ログ:【悟りしモノ】の効果により、憤慨状態が沈静化しました}

 

<無理かと思って諦めていたけど>

<参加させてくれるなら、是非参加したいのだ!>

<よろしく頼む!!>


 男がなぜか驚いていたけど、<明後日来るからよろしくね>と伝えて、冒険者ギルドを後にした。



 ◆



 コンコンの外に出て、我はハクと戦闘訓練をする。


 ふむふむ、ハクの動きは洗練されてきているのだ。我の攻撃もちゃんとよけられるようになってきているし、レベルが上がっているみたいだね。


 これなら、大会で死んでしまうようなこともないだろう。



 ◆



 約束の日に冒険者ギルドに訪れる。


 今回は誰にも絡まれなかった。ギルド内には貼り紙がたくさん貼られている。なんだろう。


<銀色のゴーレムに喧嘩を仕掛けた者は、ギルド会員としての資格を永久剥奪する>


 なんだ、これ。我らが絡まれないように、あの男が気を利かせてくれたのかな。我らに気づいた受付嬢が顔を引きつらせつつ、奥の部屋へと案内してくれた。


 男は2日見ない間にかなりやつれていた。顔色が悪い。我の出場がうまく行かなかったのだろうか。


「すまない、ゴーレム殿。なんとか出場できるように掛け合ってみたのだが、無理だった。許して欲しい」


 そう言って男が頭を下げてくる。ああ、やっぱりね。そりゃそんな簡単にルールを曲げないよ。我は男に気にしていないと伝え、冒険者ギルドを後にした。



 ◆


 

 予選がある日まで、ハクと戦闘訓練をしながら待つ。


 いつのまにかハクの武器のグレードがアップしていることに気がついた。どうやら、砂漠の王国を出る時に、魔法の武器を渡されていたらしい。


 何それ、うらやましい!


 我はいいなぁと思いながら、ハクの武器をじろじろと見つめた。



 ◆



 予選会は、出場登録した選手しか見られないらしい。仕方がないので、ジスポとイパアードと共にハクを見送った。がんばるのだぞ、ハク!


 その後、我は物陰に移動し、周りに誰もいないのを確認して【姿隠し】を発動する。


 へっへっへ。ばれなければいいのだよ。ばれなければ。


 我は【姿隠し】を発動したまま、予選会が開催されている場所まで進んで行った。我の姿が見える者はいないようだ。もしかすると見えている者もいるのかもしれないが、誰も話しかけてこないから大丈夫だろう。


 結構、出場登録している選手が多いのだな。


 予選はバトルロイヤル形式で、最後にリングの上に立っていた者だけが本戦に出場できるみたいだ。


 おっ、ハクがリングに上がってきたのだ。がんばるのだ! 開始のゴングが鳴り響くと、リングの上は乱戦になった。ハクが小さいので、さっさとリング外にはじき出そうとした選手をハクは見事に返り討ちにしている。


 さすがなのだ。


 その後、ハクは魔法も使わずに、あっさりと勝利した。なんとも華麗な勝利なのだ。我との特訓は無駄ではないみたいだな。うんうん。


 危なくなったら庇おうと思っていたけど、その必要は全然ないのだ。ハクの試合以外は見なくてもいいだろうと思い、我は予選会場を後にする。



 ◆



 ついに武闘大会の日がやってきたのだ!


 会場に入っていくハクに『がんばるのだぞ!』と声をかけ、残った我らは観客席へと進む。なぜかギルドのがたいのいい男が我と一緒に観戦するらしい。


 どうせなら、受付嬢と一緒に観戦したかった。


 屋台で食べ物と飲み物を購入し、観客席へと向かう。我は食べられないから、全部ジスポとイパアード用なのだ。


 普通の観客席で見るとばかり思っていたら、VIPルームのようなところに案内された。へぇ、良い席があるものなのだ。


 おっ! 本戦出場の16名の選手がリングに上がってきた。ハクもいるのだ!


 がんばれ! 願いを叶える奇跡の魔道具<カナエール>をゲットするために!

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