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第119話 さらば、エルフの国

 我はゴーレムなり。


 我はヒカルに地上へ連れて帰ってもらった。ヒカルは「あんまり無茶せんといてな」と言って精霊界へと帰って行く。我はそんなに無茶していないと思うんだけど。


 ヒカルは心配性なのだ。


 我はエルフの国に戻り、ハクやジスポ、イパアードと共に、ノッテ達のところに向かった。エルフの国の中で、ある一団が遠出でもするのか多くの馬車を準備している。何があるのだろう?


 コエダにも説明しておいた方が良いと思い、我らはコエダの前へと向かう。皆が揃ったところで、今回の天界との戦いの顛末を説明する。


 我はないわーポーチからノートを取り出し、メッセージを書く。


<我は天界を崩壊する一歩手前まで追い込んだ>


 ハクがこくりとうなずき、コエダとノッテ達エルフは驚愕の表情を浮かべる。


<ヒカルが天界との戦いを止めるように仲介に来た>


 なぜか皆が首をひねった。何かわかりづらいところがあっただろうか? 我が疑問に思っているとコエダが質問してくる。


「あの管理者さん。ヒカルというのは誰なんでしょうか?」


 ああ、ヒカルがわからなかったのか。なるほどね。我はあせあせと追加のメッセージを書く。


<ヒカルとは光の精霊王なのだ!>


 ハクが再びこくりと頷き、コエダとエルフ達はえっ!? と大きくに驚いた。ノッテがおそるおそるといった感じで尋ねてくる。


「ゴーレム殿は光の精霊王様とお知り合いなのでしょうか?」


 我はこくりと頷き、ノートに一言だけ書く。


<マブダチだよ>


 ここまではみんな理解できたようなのだ。最後まで説明しよう。


<ヒカルが天界の女神と我を仲介してくれて、戦争は終わった>


 ハクがこくりと頷き、コエダとエルフ達はほっとしたように安堵の息を吐いた。我がつづきのメッセージを書いて見せる。


<我は早く仲直りできるように天界に行って、壊したところを直してきたのだ>

<これで一件落着なのだ!>


 我が胸をはってみんなの様子をうかがうと、ハクがぱちぱちと拍手をし、それに気づいたジスポがハッとして少し遅れて拍手し始める。コエダとエルフ達はちょっと乾いた笑いをしている。うむ、平和が一番だよ。


 我はエルフの国で変わったことがなかったかを、ハクとジスポに聞く。ハクが大丈夫と答えてくれた。たしかに森の中から歌声が聞こえてくるから、モクイチたちもみんな元気そうなのだ。


 我はそうかそうかと頷いた。


 あっ、そういえば、馬車がたくさんとまっていたのは、何なのだろうか? 我は疑問に思って、ノッテに質問をする。


<馬車がたくさんとまってたけど何かあるの?>


「ああ、あれはですね、4年に一度、鳥人族の国ファルコンコンで行われる祭りがあるので、そこで私たちの国の特産品を売るために向かう一団ですよ」


 なんと!? 祭りとな。いろいろな屋台があったりするのだろうか? 我はそわそわしてノートにメッセージを書く。


<どんな祭りなの?>


「武闘大会ですよ。だれが一番強いのかを比べる大会です。魔物以外であればだれでも出場でき、優勝賞品に毎回すごいものが用意されるので、参加者も多いのです」


 そんな面白そうな大会があるのか! 我も参加したい! でも魔物は参加できないらしい。我はメタルゴーレムだから無理な気がする。念の為、ノッテに聞いてみよう。


<我も参加できるだろうか?>


「えっ!? そ、それは言いにくいのですが、無理だと思いますよ。ゴーレム殿は名前からもわかるようにゴーレムですから……」


 うぬぅ。やはりか。


<ちなみに今年の賞品は何なの?>


「優勝賞品ですか? たしか願いを叶える奇跡の魔道具<カナエール>だったと思いますよ。捧げる魔力によって叶えられる願いが変わるので、大した願いは叶えられないですけどね」


 なんと!? そんな魔道具があるのか!?


 コエダが何か思い当たったのか、ハッとしてまずいことになったという表情を浮かべる。


<コエダよ、何か気がかりなことでもあるのか?>


「い、いえ、何でもありません。多分、大丈夫だと思いますから。魔道具の方が先に壊れると思うので、多分、大丈夫でしょう」


 コエダは何をいいたいのだろうか。我は首を傾げる。


 しかし、奇跡の魔道具<カナエール>か。いいことを聞いたな。それがあればないわーポーチの呪いを解けるかもしれん! 我は無理でもハクなら出場できるだろうから、我らも行ってみよう!


 我が出場できれば一番確実なんだけど。


 もしかすると今年はルールが変わっているかもしれないし、変装でもして魔物とばれなければ参加できるかもしれない。


 変装か。

 うむ、いけると思う。


 我は伊達に数々の映画やドラマを見ていたわけではない。変装に関する知識も多いから、我ならできるはずだ。


 こういう大会ではチェック体制が甘いことがお約束なのだ。そして、決勝戦とかでばれてしまうまでがお約束に含まれる。だから、決勝戦でばれないように気をつければ何とかなるはずなのだ。


 うむ、大丈夫だ。やろう!


 我はハクとジスポ、イパアードに鳥人族の武闘大会に出るために、エルフと一緒にファルコンコンに向かおうと提案する。すると、あっさりと了解してくれた。ありがとう!


<我らもファルコンコンに連れて行ってくれ>


「やっと出て行ってくれるんですか!?」

「ちょ、ノッテさん!」


 ノッテがうれしそうに声を上げ、コエダが慌ててノッテをたしなめる。あれ? なんかノッテは我らに出て行ってほしいような言い方だな。我の気のせいだろうか。


 我がじとーっとした目でノッテを見ていると、ノッテが慌てて話しかけてきた。


「ああ!? いえ、すいません。もちろんいいですよ。ゴーレム殿達をファルコンコンまでご案内するよう伝えておきます」


<じゃあ、頼むのだ。我らはいつでも出発できるから>


「わかりました。出発は明日の早朝になりますので、それまではゆっくりしておいてください」


 我はノッテの言葉にこくりと頷き、その場を後にしようとした。すると、リロカばあさんが我に話しかけてくる。何か用だろうか。


「ゴーレム殿、気を付けてくだされ。あなたの周りにはよからぬ気配が漂っておりますぞ。ワシの占いでは、復讐者に気を付けよと出ていました。もしかすると今回の天界との戦争で、ゴーレム殿に恨みを抱いた天使が襲ってくるのやもしれません」


 うーむ、一応天界とは仲直りしたつもりだけど、1万の天使を殺しているから、復讐に来る天使がいてもおかしくはないな。


 我はリロカばあさんにありがとうの意思を込めてお辞儀をし、その場を後にした。天使が襲ってきたら、その時に対処すれば良いだけなのだ。



 ◆



 我はモクイチたちに、明日エルフの国を出て行くことを伝える。


「明日ですか。急ですね。寂しくなりますね」


 モクイチ達が別れを惜しんでくれているが、永遠の別れではないのだ。我は会おうと思えばいつでもあえるさとモクイチに伝える。


 その後、1本1本の木に最後の水やりをし、我らは翌朝の出発を待った。



 ◆



 コエダに最後の別れを告げて、馬車が待っているところまで向かう。


 馬車が出発する前にハクがノッテに何かを渡していたので、何なのだろうと思って覗き込むと、どうやら手紙みたいだ。


「砂漠の、国の、みんな。心配、しない、ように、手紙、送る」


 なるほど、さすがはハクなのだ。我と同じように細やかな気遣いができるようだ。ノッテが、砂漠の王国に必ず届けますからと請け負ってくれた。


 我はハクにリヤカーを出すように伝えると、ハクがリヤカーを出してくれた。


 わふー! ひさしぶりのリヤカーなのだ!! テンションが上がるね!! おお、ジスポが磨いていたのかピカピカだ! ジスポもなかなかやるようになったものだ!


{ログ:【悟りしモノ】の効果により、興奮状態が沈静化しました}


 ノッテやリロカばあさんといったエルフ達に見送られ、我らはエルフの国を旅立った。




 ◆



 1週間ほどエルフの馬車の後について、リヤカーを引いていると我の周りを虫が飛び始めた。まぁ、この辺りは森が近いので虫がいても不思議ではない。


 我には血が流れてないから、放っておけば、その内どこかに行くだろう。



 ◆



 なかなかにしつこい虫なのだ。うっとうしいのである。我はしかたないので、カチンと両手で虫を叩き潰す。


{ログ:ゴーレムは復讐に燃える天使に200のダメージを与えた}

{ログ:復讐に燃える天使は息絶えた}


 ……。


 我がそっと手を開くと光の粒子が空へと舞い上がっていく。これは見覚えがあるのだ。前に天使を殺した時と同じなのだ。


 うむ。どうやら、虫ではなく復讐に来た天使だったようだな。せめて声をかけてくれれば、我も虫じゃないと気がついたのに。リロカばあさんの占いはさすがなのだ。予言者は伊達じゃないね。


 復讐はむなしさしか生まないなと思い、我はリヤカーを引き続ける。

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