アカシヲ
どれくらい経っただろう…。
雨はさっきよりも強く地面を叩きつける。
風は僕の髪を激しく乱した。
目の前に広がる海も、凄く荒れていた。
白い波が砂浜に強く打ちつける。
ここが、僕と海の一緒にいた最後の場所。
今、そこに立っている。
よく二人で座った場所に腰を下ろした。
そこは雨風を防ぐものは何もない。
雨も風も止むどころか、激しくなっていくばかりだ。
僕はその場にゆっくり横になった。
「海…。」
激しい雨と風のせいで目を開ける事が出来ない。
チャリッ…、
大きな雨風のせいでほとんど聞こえなかったが、小さな金属音がした。
指先に微かな冷たいものを感じる。
僕はそれを握り、ゆっくり体を起こした。
うっすら目を開け、それを見た。
「これ…、海の…。」
それは、僕と海の名前の入っているプレート。
これは唯一無二の、海の生きた証。
僕は、それを握り締めて、走り出した。
あの建物へと向かって。
建物につく頃には、意識は朦朧としていて、足も覚束なかった。
長時間雨にさらされていたせいだろう。
ギシギシという音も遠く聞こえる。
やっとのことで、あの部屋に入る。
血の後の残る壁の近くに血の付いたナイフが落ちていた。
血の主は海。
僕はそのナイフを震える手で拾いあげた。
「海、すぐに逝くからね…。」
僕は、血の後の残る壁に寄りかかり、胸にナイフを一突きした。
「か、ぃ…、愛シテ…、ル…。」
途切れる意識の中、僕は海に愛を誓った。
チャリッ…、
力なく垂れ下がった僕の手から、あのプレートが落ちた。
これは、僕らの生きたあかし。
ね、そうでしょ?
海…。
~End~
主人公が病んでてすいませんでした!
読んでくれてありがとうございました!