頑張ってね、
「ねえ、シュウちゃん。私の事、嫌になったりしない?」
「どうして?」
「だって私、元気だよ。走り回っても全然平気だし、風邪も滅多に引かない。入院したのだって、あのとき骨折したのが最初で最後。私は、シュウちゃんにないものを当たり前みたいに持ってるよ」
「どうしてそれで芽依子が嫌になるのかな」
「羨ましかったり妬ましかったりしないの?人の持ってるものって、ただでさえ素敵に見えるでしょ」
「そうだね。でも芽依子に対して、そんな風に思う事はないよ」
「どうして?」
「だって僕は、芽依子が元気だと嬉しいから」
「…………そうなの?」
「うん、芽依子が元気に走り回っていると微笑ましいし、逆に風邪を引いて寝込んでいたりする姿を想像すると、とても悲しい」
「そうなんだ」
「だから芽依子の事を嫌になったりはしないよ」
「良かった。シュウちゃん、私もシュウちゃんが元気だと嬉しいよ」
「そう?」
「うん、ずっとシュウちゃんににこにこしてて欲しいもん」
「そっか、じゃあもう少し頑張らないと」
「そうだよ。もっともっと、頑張らないと嫌だよ」
痛いよね、苦しいよね、そう思いながらも私はシュウちゃんに懇願する。いっそ抗わず、緩やかな終わりに身を任せた方が楽なのだろうか、と考えるときもある。頑張って欲しいと願うのは、ただ私が悲しいからだ。寂しいからだ。苦しいからだ。
シュウちゃんのいない未来を想像したくないからだ。
しばらく寝込んで、会う事さえ禁止されて、久しぶりに言葉を交わしたシュウちゃんは、真っ青な顔で点滴に繋がれたままベッドに横たわっていた。その手をしっかりと握り込んで願う。
「私はずっとここにいるから」
シュウちゃんの未来には私がずっと寄り添っている。だから、私の未来でも、少しでも長くそばにいて欲しい。
それは嬉しいなあ、とシュウちゃんは緩やかに笑った。
読んで頂きありがとうございます。
何だかパッと浮かんで書いてしまいました。前半会話文のみなのは仕様です。
今月中に、今度は穏やかな話を投稿したいです。