12章 親友
こんにちは! 又お会いできて嬉しいです(((o(*゜▽゜*)o))) 今日は本当に自分が書きたいストーリーを、ちょっと挟んでみました。 1980年代の高校生って、今みたいにインターネットや、携帯なんてなかったから、色んな面で不便だった。性知識なんて、友達や雑誌から得て、その中にはガセもあった。 だからなのか、今回書いたストーリーみたいな『事件』も、たまーにあったんです。 今、私が住んでいる所(海外)では、ちっとも珍しいことじゃない。 って、それも大変だと思うんですけどねー(^_^;)
「オレはお前のそんなとこが好きなんだ」
冬子はあれから幾度も、岡崎のその言葉を思い返しては分析してみた。 “そんなとこ”というのは紛れもなく“早く大人になりたいと背伸びをしている”ところなんだろう。
彼から見たらまだ子供かもしれない。 でも自分はアルバイトもしているし、遊ぶお金はほとんど、そこから捻出している。 何か困ったことがあっても大抵は友だちに相談するから、親には心配を掛けないと思う。 自分の身の回りのことだって、例えば自分の服の洗濯やアイロンがけだってできる。 [もっともこれは、冬子が着るものについて、かなりの執着があるからで、家族の洗濯物を一緒に洗濯機に放り込んでしまう母のやり方に不満があるからなのだ。]
それだけではない。
自分の体が最近になって驚く程、変わってきたのだ。 これは冬子にとって、驚き、戸惑う変化だった。 どちらかといえば直線型で、少年のようだった体が、近ごろめっきり女性らしくなってきている。
白い項から肩、そして背中にかけて、しなやかな曲線を帯びるようになり、胸や腰の辺りには柔らかな丸みが加わった。 それまでは晩稲で、“お子様体型”などと周囲から、からかわれていた分を取り返すかのように急激に成長している。
自分は確実に大人への階段を登っている。 なのに、“背伸びをしている”とは、何たる侮辱! そんなところが『好き』だと言われても、冬子の気持ちは複雑だった。
九月になり二学期が始まった。 あまり偏差値の高くない高校でも三年生ともなると、それなりに受験とか進路選択というものが近づき、教室の雰囲気も変わってくる。 一学期の間、比較的のんびりしていた生徒たちの間にも微妙に緊張感が流れている。 昼休みに校庭でサッカーや野球に興じていた生徒たちの間にそれは顕著に現れた。 彼らが単語帳や歴史の史実などの暗記に熱心になり、教室にこもるようになったからだ。 それに比べると試験なし、内申書だけで入学できる専門学校を選んだ冬子は気楽なものである。 時々、学校の授業をサボって友達と映画を見に行くくらいで出席日数は足りているし、単位を落とすほど悪い成績を取ったことはない。 そこそこの成績、といったところであろう。
ただ最近、気になるのは親友の美里が学校を休みがちなことだった。 その日、冬子は学校の授業が終わると、その足で美里の家へ向かった。
ドアのブザーを押すと、家の中から美里の声がして、ドアが開いた。
「ふうちゃん……!」 美里がちょっと驚いたような顔をした。 少しの間があってから、「入って。
散らかってるけど……」 冬子が玄関に入ると、家の中はしん、としていた。
美里の後から奥にある美里の部屋へ入ると、米本がシングル・ベッドの縁に腰をかけていた。
「あ、ども……」冬子は形だけの会釈をした。 米本もボソッと「どーも」とだけ言った。
冬子は「なんだ、学校サボって彼氏と会ってたのか……」と、言いそうになるのを飲み込んだ。
そんなことを言うと「美里が俺と会ってて何が悪いんだ!」と絡んできかねない。 米本とはそうゆう男なのだ。 器が小さいとゆうか、少しでも気に入らないことがあるとすぐに言葉や態度に出る。
「今日どうしたの、学校来なかったじゃん?」
冬子が美里を見ると、しょんぽりとした顔があった。 しかもまだパジャマ姿である。
米本はベッドに座ったまま、頭を抱え込んで、一息、大きなため息をついた。
『どうしたんだろう……? この二人、ケンカでもしたのかな?』
なんだかマズイ所に来ちゃったかも……。
二人の間に漂う重ーい空気を察すると、冬子は、そそくさと持ってきたノートを何冊か座卓の上に置いた。 早く、この場から立ち去りたかった。
「これ、今日の授業でやったとこ。 一応ノート取っておいたから」
「あ、ありがと……」
「うん。 じゃあ、明日ね……」 冬子が立ち上がった。
「え? ふうちゃん、もう帰るの? 今来たばっかじゃない」
「そ、そうだよ。 ちょっと待ってくれよ!」 米本がそう言った時、冬子は怪訝な表情を隠すことができなかった。 美里の親友とは言え、冬子に米本が関わろうとすることなど、今まで一度だってなかったからだ。
冬子は座卓を挟んで美里と米本の向かい側に座った。 三人の間には重い空気が流れている。
「……私、デキちゃったんだ」 美里が切り出した。
「……?」 何がデキたのか一瞬、冬子には理解できないでいた。 二人はとっくにデキているではないか。
「今、三週間に入るところなんだって……」 米本の言葉で、冬子はやっとそれが何のことなのかピンときた。
「……。」 二人がそうゆう関係なのは知っていた。 でも、まさか子供ができるなんて……!
だって美里は、まだ高校生なんだよ? そんなことってアリ? 理屈では分かるんだけど、実際こうして身近な人間が妊娠するなんて、冬子には信じがたいことだった。
「なんとか今週中か、遅くても来週中に堕ろせば、費用も12,3万だけど、それ以降だとすごくかかるらしいんだ」 米本は車か何かを修理に出すような口調だった。 隣に座っている美里は、すごく悲しそうな顔をしている。
それはそうだろう。 こんなこと、とても親には言えない。 もし知られたら、ただではすまない。
きっと二人は、会うことを禁止されるだろう。
「堕ろすって……簡単に言うけどさ、美里のお腹の中にいるのは赤ちゃんなんだよ」 冬子が言うと
美里は俯いて、そっと涙をぬぐった。
「余計なこと言うなよ。 美里が泣くだろう」
そうなったのは一体誰のせいなんだ。 と冬子は言いたかった。 でも、今、一番苦しいのは美里の筈で、
ここで親友の自分と米本が言い争っては、余計に彼女を苦しめる事になる。
「……産めない……よね。 赤ちゃんには悪いけどさ……」 涙をぼろぼろ零ながら、絞り出すように美里が言った。 冬子は何も言えず、美里を抱きしめた。
冬子にできるのは、そんな美里を慰め、病院へ支払う費用を僅かでもカンパすることくらいだ。 結局、米本が中絶費用の大部分を賄い、足りない分を美里が、そしてそれでも足りない分を冬子はフェスティーブのライブへ行くためのお金を叩いてカンパした。
読んで下さってありがとうでーす! 今回は、話がちょっと脱線したような感があるんですが、実際には次のブリッジみたいな役目をしてもらってます。 ジャズの話も、岡崎さんも出てこないので自分的には盛り上がってないんですが、冬子は高校生なんで、やっぱ学校とか友達とか進路、みたいなのがないと不自然じゃないですか? と言って、あまり無難に書き過ぎても、つまらないですけどね。 さて、次回はちゃんとR15です。 ってか、結構きわどいかも?!
なので電車の中で読んでいる人は覗かれないようにご注意してくださーい。♥。・゜♡゜・。♥。・゜♡゜・。♥。