カカの天下95「トンデモないいわけ」
「弟よ、金を貸せ!」
「なんだ、藪から棒に」
どーもどーも、トメです。
なんかいきなり姉が突入してきてこんなことを言ってきました。
「こんだけ貸してっ」
姉の要求してきた額は払えない額じゃなかったが……
「なんで必要なんだ? そういやこのところ見てなかったけど何してたんだ」
サカイさんも引きこもってたらしいし、姉との二人のコンビもしばらく見てないなぁ。
「ん、ちょっと強いやつがいてさ」
「……は?」
「倒すために修行の旅をちょこっと」
「……はぁ」
「そいでさ、ちょっと人を殴りすぎ――」
「待ちーや!」
その先は言わせてはいけない気が……や、もう全部言ったも変わらないような気もするが。
「金貸すのはいい。姉はなんだかんだで返すもんは返すからな。ただ、その邪悪な理由で貸すのはなんか嫌だ。だから別の理由を考えろ」
「……あんたも面倒な性格だね」
「ほっとけ。んで、なんか正当な理由考えてみろ」
「嘘ついてるってわかってるのに意味あるの?」
「気分の問題。ささ」
「んー……実はカカちゃんが人質にとられててさ、身代金に……」
「あいつならさっき自分で抜け出して帰ってきたぞ。今はサユカちゃんちだ」
「え、そうなの。んー……じゃあ、弟が人質に」
「僕ここにいるし」
「あたしが人質に」
「犯人がボコられて終了だし」
「実は事故ちゃって」
「そんな馬鹿に払う金はないし」
「病気になったから治療費に」
「姉が病気なるはずないし」
「詐欺に引っかかって」
「騙したヤツが姉にボコられて終了だし」
「赤い羽根募金に」
「うそつけ」
……さすがに姉もジト目で睨んできた。
「あのさ、弟さんよ。嘘つけって言ったのそっちでしょうが」
「おう。だから無理がなく僕がツッコめなくてなおかつ真実味がある理由を作れと言ってるんだ」
「無理じゃ!! ツッコむためだけに生まれてきたあんたがツッコめない理由なんて考えられるわけないわ!」
「ツッコむためだけとは失礼な」
「なによ、あんたの生まれて初めて喋った言葉がなにか教えてあげようか? 『なんでやねん』よ」
なんでやねん。
「はぁ……仕方ないな、じゃあ百歩譲って面白い理由考えてみ」
「面白い理由……」
ここまで聞けば皆様もおわかりでしょう。
はい、僕は遊んでるだけです。
「じゃあ、こういうのはどうよ?」
姉は大きく息を吸って、
「あたしが宇宙人に襲われてそれをぶちのめして、なんで襲ってきたか話を聞いてみたら地球に潜入しようとしてたんだけどお金なくてカツアゲしようとしたらしいの。んで軽くお金を貸してあげたの。んでしばらくしたらもう一人のあたしを発見。どうやら宇宙人は貸したお金についていた指紋から宇宙人技術であたしのコピーを作ったらしいの。悪さしようとするあたしの分身を捕まえるため、あたしは殴りかかった! しかし戦闘力も同じなのか中々強い! スカウターも爆発だ! 仕方なくそこらへんに転がってる石とか看板とか人とかシューとかを武器にしてなんとか倒したんだけど、気がついたら辺りは大惨事。その弁償にお金がいるってわけ」
どうよ、とばかりに僕を見上げてくる姉。
「うん、合格」
なんでも暴力で解決というところが実に姉っぽい。
「んじゃ貸すけど、ちゃんと返せよ」
「ありがとー。わかってるって。宇宙人の名において」
「……あれ、おまえ宇宙人なのか」
「果たして勝ったのはオリジナルか分身か、どっちだったのかね……ふふふ」
「……おい、実はそれ昔本当にあったことでおまえは地球人じゃないとか言わないよな」
「鋭い!」
「はっ!? おい、冗談だろ」
「んじゃあとで来るから用意しといてね。ばいびー」
……地球人じゃない……すごく姉っぽい。
ま、いっか。姉は姉だし。